世紀末覇王伝 修羅幸姫
著作権的にはオーケーなはず?
ちなみに後悔はない。
昔々、ある王国にとても美しいお姫様がいました。お姫様の名前は白雪姫と言いました。亡くなった母親譲りの太陽のように明るい金の髪に、どこまでも深い蒼穹を閉じ込めたような蒼い瞳を持つとても愛らしいお姫様でした。
父である王に愛され、侍女や騎士に愛され、国民にも愛されていました。素直で優しい心を持つ白雪姫に誰もが魅了されて行ったのです。誰もが白雪姫を愛し、何をしても許していました。
しかし、継母にだけは愛されることはありませんでした。継母は愛らしい白雪姫に嫉妬していたのです。夫である王にも放っておかれていた継母はそんな白雪姫が憎くて憎くてたまりませんでした。また、自分と仲良くしようとしてくる無邪気な白雪姫が眩しくて素直に見ることが出来なくなっていました。
「お継母様、今日はお花で冠を作りました。どう……でしょうか?」
そう言って不安そうに見てくる白雪姫の可愛らしさに心が揺れそうになる自分がいやでした。
そんな継母の心を救っていたのは魔法の鏡でした。魔法の鏡は問いかければ答えを返してくれる魔法の道具でした。継母は魔法の鏡に世界で一番誰か美しいか問いかけます。
「それは王妃様でございます」
魔法の鏡はいつもそう答えてくれるので継母はそれが唯一の慰めでした。
そんなある日のことです。白雪姫が八歳になった誕生日パーティーの夜、継母はいつものように魔法の鏡に問いかけました。
「鏡よ、鏡よ。世界で一番美しいのは誰ですか?」
「それは白雪姫でございます」
継母は世界が割れたような衝撃を受けました。唯一残っていた救いすらも白雪姫は奪い去って行くのかと怒りに震えます。何度問いかけても答えが変わらないことに継母は絶望しました。
そして心に決めたのです。
白雪姫を亡き者にすることを。
継母はいつも獲物を持ってくる猟師を呼びつけるとこう命じました。
「白雪姫を殺しておいで。もし出来なければお前の妻と娘を生きたまま料理して食わせてやるからね」
猟師は継母が本気だということをよく分かっていました。継母は一度言ったことは決して曲げない人だということをこれまでよく見てきたのです。
「分かりました。王妃様」
しかし、猟師は獣を狩って生計を立ててているだけの人間です。人を殺したことなんて数えるくらいしかありません。それも全て盗賊達だけです。愛らしい白雪姫を殺すことなどとてもできませんでした。
仕方なく猟師は白雪姫を綺麗な花があると嘘をついて連れ出します。そして城から遠く離れた森の中に置き去りにすることにしました。この森には優しい妖精が住んでいると言われています。猟師はその妖精に白雪姫助けてもらえるように賭けたのです。
置き去りにされた白雪姫は夜になっても誰も迎えに来ないことに泣いてしまいました。するとその鳴き声を聞きつけたのか狼がやって来ました。
狼はとてもお腹が空いていたので白雪姫が美味しそうなご馳走に見えたのです。鋭い牙を剥き出しにして襲い掛かる狼に白雪姫はどうすることも出来ませんでした。恐ろしさのあまり目を閉じた白雪姫ですが、いつまで経っても痛みは襲ってきません。
恐る恐る目を開けるとそこには巨人が立っていました。二メートルを超す巌のような体格に鋼を思わせる厚い筋肉。夜の闇でもハッキリと分かる焼けた肌に月の光に照らされたテカテカのボディの巨人が狼の首を片手で握りしめていました。
「怪我は無いですか? お嬢さん」
低く渋いセクシーボイスの持ち主である巨人はそう言うと狼を森の中に放り投げました。
「大丈夫です。助けてくださってありがとうございます」
丁寧なお辞儀をする白雪姫の愛らしさに巨人はすっかり魅了されてしまいました。何を隠そうこの巨人こそが森の妖精だったのです。
「レディがこんな夜中に森の中にいては危ない。今夜は私達の家に来るといいでしょう」
そう言って巨人は自分の家へ白雪姫を連れて行きました。そこには他に六人の巨人が一緒に暮らしていました。巨人達は白雪姫のことを知っていました。白雪姫が何故こんな森にいるのかまでは分かりませんが、命を狙われた結果だろうということは分かりました。そしてこのまま城に返せば今度こそ殺されてしまうかもしれないと思ったのです。
こうして白雪姫がは七人の巨人と一緒に暮らし始めました。巨人たちは白雪姫が殺されてしまわないように白雪姫を鍛えることにしたのです。
一方、お城では大勢の人がいなくなってしまった白雪姫のことを必死に探しましたが見つけられず悲しみに暮れていました。王様はとても嘆き悲しみました。
そんな王様の心を救ったのは継母でした。やがて王様は継母に溺れるようになっていきました。優しく立派だった王様は少しづつ継母のことだけしか考えない暴君へと変わっていったのです。
ただ、継母は暴君へと変わっていく王様には悲しい思いがありました。継母はただ、愛して欲しかっただけで暴君へと変わることは望んでいなかったのです。王様に何度もお願いして圧制を止めてくれるように頼みましたが王様は聞き入れませんでした。
それから八年後、国は荒れ国民は苦しんでいました。その頃には継母も王様についていけなくなり心を病んでいました。
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
「それは王妃様です」
いつものように継母は魔法の鏡で自分を慰めます。その時、ふと継母の脳裏に浮かんだものがありました。暴君と化した王様を止めることが出来るとすればそれは強くたくましい王者にs化できないだろうと。ならばこの鏡で探すことは出来ないのだろうかと。
「鏡よ、鏡。世界で一番強くてたくましく、優しい王者は誰?」
「それは白雪姫です」
「……ファッ!!」
継母は驚きのあまり変な声が出てしまいました。まさかあの砂糖菓子のようなお姫様だった白雪姫の名前が出るなんて思ってもいなかったのです。何度聞いても答えは変わりません。継母こうなったら自分で調べるしかないと思い立ち上がりました。
何故死んだはずの白雪姫が生きているのかはもうどうでもよかったのです。それよりもこの状況を変えてくれる方が大事だったのです。
それに継母は後悔していました。いくら嫉妬と憎しみにかられたとはいえ、あんな幼い子供の命を狙うなどあってはならないことでした。自分のしたことの罪の重さに押しつぶされそうになっていた継母にとって生きていてくれたということは何よりの救いでした。
白雪姫が住んでいる森の中までやってくるとそこには大きな砦がありました。
「ふん!」
「むはぁ!」
中からはそんな声が聞こえてきます。継母は凄く不安になりました。どことなく暑苦しい気配がしたので急いで物売りに変装します。
そして砦の大きな門から声をかけました。
「物売りですが何かいらんかえー!」
すると大きな門が開いて行き一人の人物が現れました。美しい金の髪を背中で一つにまとめ、何かも見透かすような深い蒼い瞳を持つ女性でした。ただ普通の女性と違ったのはその美しい髪と瞳だけではありませんでした。
山のような巨躯に鋼すら打ち砕く様な分厚い筋肉の塊。腕など丸太の様で日に焼けて黒光りをしています。全身から立ち上る覇者のオーラは二メートル以上ある身長をさらに大きく見せます。はち切れそうな筋肉の鎧を無理矢理ドレスに押し込めています。手には両端に丸い金属の玉が付いた短い棒を持っています。丸い金属の大きさは継母の頭と同じくらいありそうです。継母の気のせいだったらいいのですが、この金属は以前お城で見た世界で一番重い金属の色とそっくりです。
(この髪……瞳……白雪姫ぇぇぇぇぇ!! 何がどうなればこうなるのよ!!)
継母は一瞬誰だか分かりませんでしたが目の前の人物が白雪姫だとすぐに気が付きました。そして絶句したのです。あの可愛らしかった白雪姫がこんな益荒男のような人物にになっているなど誰が想像したでしょうか。白雪姫の変貌の理由は後ろの砦にあるとは思いますが怖くて聞けそうにありません。
「いかがなされた物売りの方よ。こんな辺鄙な場所で商売など難しかろうに」
「み、、道に迷ってしまい。み、道を教えてもらえればと」
継母は迂闊なことを言えば殺されてしまうかもしれないと恐れおののきました。白雪姫にそんなつもりなど無く心配しただけなのですが、強者のオーラに怖気づいた継母は本来の話が出来ませんでした。
白雪姫の手にある丸い金属のついた棒が握りしめられる度にミシミシと音を立てます。
「そうか。ならばそこの道を真っ直ぐ行くといい。途中獣など出るが故に送って行ってやろうか?」
「い、いえ。獣除けは持っておりますのでご心配なく。そ、そうだお礼にこちらをどうぞ」
継母はそう言って綺麗なネックレスを差し出しました。
本当の目的を話す機会は失いましたが、タダで帰るわけにもいきません。なので本当にこの白雪姫が王国を救う救世主になるか試すために呪いのネックレスを渡したのです。
この呪いのネックレスは今まで多くの人間を絞め殺してきた伝説のアイテムです。伝説では勇者と呼ばれていた龍退治の英雄すらも絞め殺してしまった恐ろしい呪いのネックレスです。
(この呪いのネックレスで死ぬようでは国を救うなど不可能だわ)
白雪姫は道を教えただけでは受け取れないと拒みましたが継母は強引に押し切りました。白雪姫の太すぎる巨木の幹のような首にかけるには物凄く苦労しましたが何とか鎖を付け足すことで着けることが出来ました。
すると呪いのネックレスが白雪姫の首を絞め始めます。しかし、いくら絞めても少しも締まりません。それどころか絞められていることに気が付かずに白雪姫は楽しそうに継母に話しかけるのです。
少しくすぐったいと感じた白雪姫がほんの少し首に力を籠めると呪いのネックレスは千切れ飛んでしまいました。
「むぅ、すまない。ネックレスが千切れてしまったようだ。せっかく頂いたものなのに何と申し訳ないことをしてしまった」
(英雄すら殺してきたネックレスが何も出来ずに散った!! こ、これはいけるわ!!)
「い、いえ。差し上げたものですのでお気になさらずに。それでは私はこれで……」
継母は手応えを感じていました。でもこれだけではまだ不十分です。まだ確かめたいことがあった継母はまた訪れることを決意していました。
それからしばらくして継母はまたもや白雪姫の下を訪ねました。今回はリンゴ売りに化けてやって来ました。
白雪姫専用の世界で一番堅い金属で作らせたリンゴの模型に龍ですら即死する毒を仕込んできました。もっともそのせいでリンゴの重さが十五キロになってしまいましたが白雪姫なら気付かないだろうと継母は思いました。これで死ななければ暴君と化した王様から国を救うことが出来るはずです。
「リンゴはいらんかえー。リンゴはいらんかえー」
するとまた砦の大きな門が開き中から白雪姫が現れました。以前より少しまたたくましくなった気がします。
「りんごか。一つ貰おうか」
「ありがとうー、お嬢さん」
継母は白雪姫専用リンゴを手渡しました。常人なら持った瞬間重さでリンゴではないと分かりますが、白雪姫にとってはこの程度紙となんら変わらない重さです。
バキッとリンゴからするはずが無い音が響きリンゴは白雪姫の綺麗な白い歯に噛み砕かれました。中に入っている毒が滴り落ちてきますが白雪姫は気にしません。
「蜜入りじゃから美味いじゃろう?」
「うむ、歯応えも良く中の蜜も美味い。これはいいリンゴだ」
(さすが白雪姫!! 龍ですら即死させる猛毒を飲み干しても気にもしていないその胃袋! これならどんな毒が来ても死ぬことは無いわ!!)
変わってしまった白雪姫を見た衝撃でおかしくなってしまった継母はそんな白雪姫の鋼鉄の胃袋を称賛します。
そもそもこれで死んでしまったらどうするつもりだったとか継母は考えていませんでした。それくらい白雪姫が死ぬことなど無いと信じていたのです。
「申し訳がありません。実は私は嘘をついていました。実は……」
暴君と化した王様を止めることが出来ると確信した継母は白雪姫にここにやって来た目的を話しました。王様を止めて欲しいこと、国を救って欲しいことを。
ただ、どうしても自分が継母だということは言えませんでした。
継母の話を聞いた白雪姫はその切実なる訴えに心が打たれました。そして父である王の変貌に胸を痛めました。
「分かった。我で良ければ力になろう。王の圧制を止めてやるから泣き止んでくれないか?」
優しい白雪姫の言葉に継母は救われるような思いでした。こうして白雪姫は七人の巨人と共に王国へと戻ったのです。
王国へ戻った白雪姫を出迎えたのはたくさんの兵士でした。この頃にはもう王様は誰も信じられなくなっており、白雪姫が自分を殺しに来た巨漢の英雄だと思っていたのです。悲しいことにあんなに愛した娘だとは分かりませんでした。
襲い掛かる兵士達を白雪姫と七人の巨人は蹴散らしていきます。王都を守る巨大な門は七人の巨人の拳で砕かれ、大砲の玉は白雪姫の咆哮で弾き返されてしまいます。どんな剣も白雪姫の筋肉の鎧を突き破ることは出来ず逆にへし折れる有様です。
こうして王様の下へたどり着いた白雪姫は王様に言いました。
「もう、お止めください父上。これ以上は国が滅びます。後は我が引き受けますのでご退位を」
「誰が父上だぁぁぁぁぁ!! 我が愛する娘は死んだ!! 貴様のような益荒男を娘に持った覚えは無いわぁぁぁぁ!!」
錯乱した王様は剣を振り回して白雪姫に襲い掛かります。もう王様に言葉は届きませんでした。どれだけ言葉を尽くしても止まらない王様を白雪姫は泣きながら手刀で貫きます。
「我が娘よ……今行く……ぞ」
王様の最後の言葉に白雪姫は涙が止まりません。そんな白雪姫を継母は優しく抱きしめました。自分の行いがここまでの悲劇を生んでしまった。継母はその罪の重さを自覚していました。
「ごめんなさい、白雪姫。私の愚かな心があなたをここまで苦しめてしまいました。私の首を差し出します。この首をもって民衆に見せなさい。そうすれば少しでも彼らの鬱憤は晴れるでしょう」
継母はそう言って首を差し出しました。愚かな自分の罪を清算するにはこれしかないと思ったのです。
しかし、白雪姫は首を振りました。そして優しく微笑むといいました。
「分かっていました、義母上。あなたが義母上だということは。このようにたくましく成長した我が以前のひ弱で貧弱な存在だった頃とは似ても似つかないというのに義母上はすぐに我だと気が付いてくださった。昔から義母上だけが本当の私を見てくれていたのです」
白雪姫は全ての者から愛されていましたが、逆に言えばそれ以外の感情はもらえなかったのです。何をしても褒められ愛される。怒ってもらいたくてやった悪戯すら褒められていた白雪姫は決して嬉しくありませんでした。
誰からも愛されるということは誰が相手でも同じだということです。
そんな中、憎しみを向けてくる継母だけが白雪姫にとっては他の人とは違う人になりました。継母の存在が白雪姫にとって世界は全て同じでないと教えてくれたのです。
「だから我を育てた義母上でもあるのです。確かに義母上のしたことは罪かもしれませんが、それならば償えばいい。だからこの世界に存在するのが私と私を愛するだけの人間だけにしないでください」
白雪姫の告白に継母は涙が止まりませんでした。そうして白雪姫と継母は抱き合ったまま互いに涙を流し続けたのです。
こうして王国は素晴らしい女王と共に繁栄を迎えることとなります。
王国の繁栄を妬んだ多くの国が攻めてきますが全て七人の巨人と覇王のオーラを持つ白雪姫によって撃退されていき、逆に領土を奪われていきました。
そのあまりの強さに白雪姫はやがて他国から修羅幸姫と呼ばれるようになっていきました。攻められているにも関わらずに修羅のような強さで幸せそうに笑うその姿を恐れた敵国の兵士からそう名付けられたのです。
ですが白雪姫は気にしていませんでした。
多くの国民は白雪姫だと未だに気が付いていませんが、頼りになる王様だと信頼してくれます。臣下も白雪姫に忠誠を誓っています。
そして何よりも、白雪姫のことを愛しながら憎んでくれる義母上がいつも見てくれているのです。
今日も継母は魔法の鏡に問いかけます。
「鏡よ、鏡。世界で一番私が愛して憎んでいるのは誰?」
「それは修羅幸姫です」
真面目に書きました。
ええ、大まじめですとも!!
え? むさくるしい?
女性ですよ主人公は。