第五十話
本編はラストです!
妖精達が楽しそうに飛び回る庭で、オーレリアはレスターとともに穏やかな日々を送っていた。
帝王位を賜ってからというもの、共に忙しない毎日を過ごしていた二人であったが、今日は久し振りにゆっくりとする時間をもてた。
レスターの肩にオーレリアは甘えるように頭を持たれかけさせると、小さく笑い声を漏らした。
「どうした?」
レスターがそう尋ねると、オーレリアは繋いだ手をぎゅっと握りながら言った。
「幸せだなぁ、と、思って。」
「ふふ。私も幸せだよ。」
二人は笑いあうと軽くキスをした。
温かな春の日差しは心地よく、オーレリアはうとうとと眠たくなる。
最近は急に眠たくなることがあり、オーレリアはどうしたのだろうかと体調の変化に違和感を覚えていた。
その時、オーレリアのお腹に妖精が手を伸ばし優しく撫でた。
『大きくなってねぇ。』
その言葉に、オーレリアもレスターも目を丸くした。
次の瞬間、レスターは立ち上がると側に控えていたエドモンドに命じて医者を呼んだ。
レスターは壊れ物を扱うようにオーレリアを抱き上げて寝室のベッドの上へと運んだ。
そして、息を切らしながらやってきた医師に外に追い出されると緊張しながら部屋の外で待っていた。
診察が終わると、オーレリアは嬉しげにレスターの手を取った。
「赤ちゃんがいるそうです。」
嬉しそうなオーレリアに、レスターも歓喜すると優しくオーレリアを抱き締めた。
その背に手を回し、レスターの温かさを感じながらオーレリアの瞳からは涙が流れ落ちた。
これまで、様々な事があった。
楽しいことばかりではなく、むしろ苦しく辛い日々の方が多かった。
だが、今は違う。
自分の横にはレスターがいて、お腹には新たな命が宿った。
自分を支えてくれる人達もたくさんいる。
そう思うと涙が浮かぶ。
あぁ、幸せである。
新しい命の誕生にオフィリア帝国は喜びに包まれた。そしてそれから長らく、オフィリア帝国とレイズ王国は友好国として関わりを深めたと言う。
この中でも、オフィリア帝国の初の女帝王として君臨したオーレリアは聖獣や妖精、そして人に好かれる人望の厚い女帝王だったと語り継がれた。
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