第四十八話
オーレリアは帝王として兄であるグレッグを廃嫡し、監視下の離宮へと移すこととした。
グレッグは憑き物が落ちたかのように大人しくなり、離宮で静かに暮らしているという。
オーレリアはその後正式に帝王位を賜る儀式を行うと、民の前へと出て挨拶をした。
民は歓喜に震え、何度も声をあげた。
「オーレリア帝王陛下万歳!!」
「オフィリア帝国万歳!!」
その声にオーレリアはこれから国を建て直すために頑張らねばと気合いを新たにした。
そして、それから一年の月日が流れ、今日、オーレリアは特別な日を迎える。
オフィリア帝国の伝統的な衣装を見に纏い、数々の美しい装飾品で飾られたオーレリアは見るもの皆がまるで女神だと褒め称えた。
「オーレリア帝王陛下。本当にお美しいです。」
オーレリアを着飾るものの中には、メイドのミリーの姿もあった。
ミリーはオーレリアが帝王に立った時、他のメイドと共に罰を受けようと自らオーレリアの前に頭を垂れた。
だが、オーレリアは困ったように笑うと言った。
「私は貴方達のおかげで目に見えるものばかりが真実だとは限らないということに気づけました。ありがとう。ですから、こらからもよろしく頼むわね。」
メイド達はその優しい言葉に涙し、そしてオーレリアに改めて忠誠を誓った。
着飾ったオーレリアの頬はほんのりと色づき、嬉しげに口許は笑みを称えている。
「本当にようございました。」
オーレリアは小さく笑いを漏らした。
「ミリー。ありがとう。」
「勿体ないお言葉でございます。それでは、オーレリア帝王陛下、お時間でございます。」
「ええ。」
オーレリアは高鳴る心臓を抑え、開かれた扉を優雅に歩いてくぐる。
目の前には、オフィリア帝国の伝統的な婚姻の衣装を見に纏った凛々しいレスターの姿が見えた。
レスターは耳を赤く染め、オーレリアの美しい姿に見いった後に何度も頷き、そして口許に手をおくと感嘆の息をはいた。
そして、やっとのことで言葉を述べた。
「貴方は本当に女神だ。」
恥ずかしさなど感じない心からの言葉に、オーレリアは顔を朱色に染め上げると、レスターを見上げて言った。
「レスター様も素敵です。」
可愛らしいその様子に、レスターは天を仰いだ。
そんな甘い雰囲気の二人をメイドらは温かく見守り、そして二人は手と手をとり歩きだした。
城の外には民らが二人を祝福しようと詰めかけ、二人が姿を見せた瞬間に歓喜した。
皆に祝福されてオーレリアは笑みを浮かべた。
空には数多の妖精達が飛び交い、きらきらと光を空から降らせた。
聖獣ランドルフは声高らかに砲口を上げ、祝福の光を放つ。
皆がその光景に喜び、オフィリア帝国の繁栄を願った。
「レスター様!民が、妖精達が、ラルフも私達を祝ってくれていますわ。」
オーレリアのその腰に手を回し、体を支えるとレスターは笑みを深めた。
「オーレリア。これから共に、永遠に、貴方と共にあると改めて誓おう。愛している。」
真っ直ぐなその瞳に、オーレリアは頷いた。
「私も、レスター様と共にあると誓います。愛していますわ。」
二人はそっと唇を重ね合わせた。
皆がそのなかむつまじい様子に歓声をあげた。
『きゃー!おめでとう!』
『お幸せに!』
『ひゃほー!!』
『皇女は当て馬令息に恋をして、』
『当て馬令息も皇女に恋をした!』
『二人はそして永遠に、』
『幸せに暮らすのでーす!!』
光の舞うオーレリアとレスターの結婚式のそのあまりに美しい光景は、それからオフィリア帝国に語り継がれていったという。




