第四十六話
なごやかな雰囲気になったことで、ラオックは口調を崩し、そして笑顔を浮かべながら二人を祝福した。
妖精と聖獣に祝福されているのだからここで国王がそれを覆せるわけもない。
それに、二人の結婚を許すだけで和平だけでなく聖獣の守護まで賜ることが出来るのであれば王国側としてもメリットが大きい。
「レスターは公爵家であるし、二人の結婚が王国と帝国の和平の証ともなるだろう。それならばリリアーナはこちらへ帰る流れでいいかな?」
ラオックが当たり前のようにそういうと、リリアーナはニコリと笑顔を浮かべると言った。
「私は帰りませんわ。」
「は?」
その場にいた皆がリリアーナの発言に驚いていた。
「私、好きな人が出来ましたの。ですから、帰りませんわ。」
つんとしたその言いように、ラオックは目を丸くし、そしてどうにか口調を穏やかにしたまま言った。
「好きな人?お前は、王族が、好き嫌いで結婚できると思っているのか?」
「はぁ。お父様は昔からずっとそればかり。私の気持ちなど一切聞かず、帝国に行けと言った時も当たり前のように、お前が行け、務めを果たせ。そればかり。短い期間ではありましたが、私はその務めは果たしましたわ。」
ふんとした様子でリリアーナがそう言い、ラオックは机をどんと打ち鳴らした。
「この話は後でとする。客人の前で申し訳ない。では今回の和平は、二人の結婚の証としてもいいだろうか?」
オーレリアは気を取り直すとうなずいた。
「え?、、、ええ。あ、ですが、あの、レスター様はよろしくて?」
顔を赤らめながらそういうと、レスターも耳まで真っ赤にしながらうなずいた。
「もちろんです。ですが、その、プロポーズはまた改めてさせて下さい。」
「え?は、、、はい。」
初々しい二人の様子に周りが甘い雰囲気で包まれだした。
ラオックはこほんと咳をつくと、その後和平条約について話はじめ、細かなことを決めていくのであった。
そして、話し合いが終わり和平条約に調印すると、ラオックとオーレリアは握手をかわした。
それに妖精達は大興奮である。
『おめでとう!』
『結婚だぁ!』
『早く見たい!』
そんな妖精達に二人は顔を赤らめる。そして、ラオックに挨拶を済ませ会場を後にすると、二人は花畑へと向かった。
花達は美しく咲き誇り、オーレリアはレスターにエスコートされながら近くまで歩いていった。
「綺麗ですわね。」
「ええ。私はオーレリアが一生懸命に花を植える姿に心打たれました。」
「ふふ。私もです。」
「え?」
「それにレスター様が手伝って下さって、私どきどきしましたの。」
顔を赤らめながらそう言うオーレリアに、愛しそうにその頬にレスターが手を伸ばした時であった。
「此方にいたのですね!無事で良かった!」
「心配していたのですよ!」
ヨハンとアレクシスが息を切らして現れ、オーレリアは恥ずかしげにレスターから一歩離れた。
そんなオーレリアに、レスターは離さないように腰に手を回すとヨハンとアレクシスにはっきりとした口調で言った。
「ええ。ご無事ですよ。この度、私と婚約しまして早めに式はあげる予定です。お二人にも招待状をお送りしますね。」
その言葉に、ヨハンとアレクシスの目に驚きとそして苛立ちが宿る。
「そうですか。それはおめでとうございます。ですが、そう早々と決めなくても良いのでは?」
「そうですよ。一国の伴侶決めはかなり慎重にいかねばね。」
そのバチバチとした様子に、妖精達は賑わいを見せた。
『きゃぁ!矢印が集中してる!』
『レスター頑張れ!』
『何これ修羅場ー!』
レスターとオーレリアの結婚を楽しみにしているものの、人の恋路を面白がる妖精達であった。




