第四十四話
レスターはオーレリアと共に園庭を散歩しながら自分達が作った花畑のことを思い出した。
「私は、、、幸運でした。」
オーレリアはレスターの言葉に首をかしげると、レスターは言葉を続けた。
「貴方に出会うまで、私はまるで何かに操られているかのように、自分自身ではよくわからない感情に振り回されていたのです。ですが、貴方とであってからそれが変わった。」
レスターは真っ直ぐにオーレリアを見つめた。
「私は自分自身を少しずつ取り戻せたような気がします。そしてそれと同時に、貴方に引かれた。」
いつもはうるさいくらいに飛んでいる妖精達の姿はなく、二人きりの空間に、オーレリアの心臓はうるさくなる。
「貴方は常に背筋を伸ばし、弱音はかず、民のために、誰かのために動ける人なのだと感じた。そしてそれと同時に、私は、そんな貴方を支えられる男になりたいと思った。」
レスターの瞳に写る熱にあてられるように、オーレリアの頬は紅潮していった。
「私は貴方が好きだ。」
心臓が脈打ち、どくどくと鳴るのがわかる。
オーレリアは一瞬レスターに手を伸ばし掛けて、その手を宙で止め、下ろした。
気持ちだけで動いていい事柄ではない。
自分は帝王位を賜るのだ。
自身の行動は国にも関わってくる。
レスターはゆっくりとオーレリアの手を取った。
「お願いです。貴方の気持ちを聞かせてください。もし貴方が私を思ってくださるのなら、私は全身全霊をかけて、貴方と、貴方の国を守りましょう。」
良いのだろうか。
オーレリアの心は揺れた。
ここで自分の気持ちを告げてしまえば、後戻りなど出来ないとオーレリアにはわかった。
すると、そんなオーレリアの心を見透かしてランドルフがオーレリアに言った。
『我が王よ。妖精に好かれるレスターは、良い男ぞ。気持ちを偽ることはない。そなたの心は、そなたのものだ。』
ランドルフはオーレリアに体を擦り付けてそういうと、気をきかせたのか姿を消した。
風が吹き抜け、花びらが風に舞った。
オーレリアは、ランドルフに勇気をもらい、そして、ゆっくりと息を吐くとレスターに顔を真っ赤にして言った。
「私も、、、、レスター様のことが好きです。」
次の瞬間、妖精達がすごい勢いで空中に姿を表すと歓声をあげた。
『両思いだぁ!』
『結婚だぁ!』
『祝言だぁ!』
『レスター当て馬令息脱却だぁ!』
『ひゃっほー!』
『誰か、あの子にも報告したげて!』
『観察日記にちゃんとつけなきゃ!』
『皇女が当て馬令息に恋をして~。』
『当て馬令息も皇女に恋をしたぁ!』
『きゃぁぁぁ!お祝いだぁ!』
レスターはその光景を見て目を丸くした後、オーレリアを見て、笑みを深めるとオーレリアを抱き上げてくるくると回した。
「きゃ!レスター様!」
「妖精を初めて見た!オーレリアはすごいな!」
「え?初めて?きゃ!」
オーレリアをレスターがくるくると回すと、まるで花吹雪のように花びらが風に舞う。
きらきらと輝くその光景に、アルバスとリリアーナも目を丸くした。
「妖精だわ。初めて見た。」
「こりゃあ、この国は安泰だな。」
妖精達に祝福されて、幸せになれないはずはない。
アルバスは大きな笑い声をあげた。




