第四十三話
アルバスは、オーレリアとレスターが微笑ましく中庭を楽しそうに散策する姿を護衛として見守っていた。
ただし、護衛とはいってもリリアーナにお茶を一緒に飲んで欲しいと頼まれて席にはついている。
側にいなくて大丈夫かと聞かれれば、大丈夫である。オーレリアには優秀な暗部がいる。
それに、はっきり言って聖獣を従えるオーレリアを害そうとしたところで、無理な話だ。
むしろ害せるものがいるならば人間ではないとアルバスは思う。
「オーレリア様は、すごい方ね。」
紅茶を飲みながらそう言うリリアーナに、アルバスは同意するように頷いた。
「ええ。本当にすごい方だ。ですが私はリリアーナ王女殿下もすごい方であると思います。」
アルバスは首をかしげるリリアーナと目を合わせると真剣な眼差しを向けて言った。
「オフィリア帝国に人質のような形で一人孤独だったでしょう。それなのにもかかわらず、自分の身をしっかりと自分自身で守り、その上、今回オーレリア様の帝王位を賜れるよう内々に画策してくださった。貴方様がいなければ、こうもすんなりとはいかなかったでしょう。本当に、感謝しております。」
その言葉にリリアーナは顔を赤らめると、照れ隠しであろう、扇で顔を隠してしまった。
アルバスは、もし自分も結婚していればきっともうこのくらいの娘はいたはずだと内心思っており、不器用ながらに必死に頑張るリリアーナの姿にいたく感銘をうけていた。
すると、突然すこし厳しい口調でリリアーナが言った。
「アルバス様は、結婚していらっしゃるの?ええ、貴方ほどの人ですから、しているのでしょうね。」
突然何故自分のことが話に上がったのかと困惑しながらも、アルバスは答えた。
「いえ、私は軍を率いるものですから、妻子はもっておりません。貴方のように素晴らしい子がいればよかったのですが。」
リリアーナのような娘がいればきっと自分の人生はさらにやる気に満ちたのではないかとアルバスは思って思わず口にした。
だが、言ってから、これは不敬ではないかと慌てて言葉を付け足した。
「いや、なんとおこがましいことを。申し訳ありません。」
リリアーナは顔を真っ赤に染めており、アルバスは怒らせてしまったと慌てた。
妖精達はそんな姿を見ながらクスクスと笑い声をあげた。
『ふふふ。今、アルバスとリリアーナがお互い勘違いしてるー。』
『あっちも気になる、こっちも気になるー!』
『忙しいなぁ。』
誰に聞かれるでもなく、妖精たちの声が響き渡った。




