第四十一話
アルバスは目の前に現れたレスターとリリアーナを睨み付けた。
リリアーナは臆することなく美しく礼をすると名乗った。
「私はレイズ王国王女リリアーナと申します。こちらは公爵家令息レスターですわ。今日はあなた様に会いに来たのです。」
王女が突然自分に名乗り礼をとったということにアルバスは驚き、それと同時にリリアーナ王女が噂とは全く違った様子にも驚いていた。
そこにいる王女からは尊大な態度も、人を侮蔑するような様子も見られない。
リリアーナは牢の鍵をあげると、汚れるのも厭わずにレスターと共にアルバスの拘束をといた。
アルバスは腕をさすりながら、二人の様子を伺っているとレスターが口を開き、現在の状況の話の聞くこととなった。
だがそれを聞いたアルバスは眉間に深いシワを寄せた。
オーレリア王女は馬車で向かっているためにここへつくにはあと数日は必要であろう。
だが、それにこちらの準備が間に合うかどうかである。
アルバスは二人に頭を下げた。
「助けていただきありがとうございました。だがこれよりは我が国の事。関係無用でございます。」
レスターはその言葉を思案するとゆっくりと口を開いた。
「私は、オーレリア皇女の力になりたいのです。その為に、私も協力させていただきたい。」
真っ直ぐなその瞳に、アルバスはどうするか迷った。
これがうまくいかなかった場合、悪ければ国同士のいさかいの火種になりかねない。
レスターは、はっきりとした口調で言った。
「私は、ただのレスターとしてオーレリア皇女の見方をしに来た。」
その決意に満ちた声に、リリアーナも驚いた様子であったが、すぐにそれは笑みに変わった。
「レスター。あなた、オーレリア皇女に恋をしたのね?」
「リリアーナ王女、私はオーレリア皇女の力になりたいだけだ。」
「あら、好きだからでしょう?」
レスターは息を吐くと、リリアーナに言った。
「王女。私は、皇女殿下に自分の気持ちを押し付けたくはないのです。私の気持ちなど、なんの価値もない。」
リリアーナは肩をすくめるとアルバスに言った。
「決意は固いみたいだから、協力させてあげてちょうだい。私も、内々に協力してあげるわ。」
アルバスは驚いたが、それからのレスターとリリアーナの働きには本当に頭が上がらない。
レスターはアルバスと共に騎士団との橋渡し役として、そしてリリアーナは城内部にいる侍女や執事らとオーレリア皇女の味方を集め、そしてアルバスへと繋げてくれた。
アルバス自身は捕らえられているという形にしたままにしているため動けないことが多かったが、この二人は情報を集め、味方を増やし、オーレリア皇女の登城へと間に合うことができたのだ。
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項垂れる帝王の前をオーレリアが通り、そして王座の前へと立った。
「これより、国を建て直します。アルバス、これまでよく頑張ってくださいました。ですが、これからも忙しくなります。頼みますよ。」
「はっ!」
王座に座るオーレリアの横には輝く聖獣がおり高らかに咆哮をあげた。
皆が剣をオーレリアに掲げる。
『オーレリア帝王陛下万歳!』
正式な帝王位の継承式の準備もしなければならない。だが、今は、この喜びを胸に刻もう。
「オーレリア帝王陛下万歳!」
アルバスは声を高らかにあげた。




