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皇女は当て馬令息に恋をする  作者: かのん


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第十九話

 二人を載せた馬車は進み、街の南西部へと向かった。


 馬車が止まり、オーレリアらレスターにエスコートされて馬車を降りると、目を丸くした。


 そこは、孤児院の横にある病院であり、その横には学校のような施設がある。


 この時、馬車に乗っていたレスター付きの従者はとても苦々しい表情を浮かべた。


 ここは、はっきりと言えば城下街散策で来るべき場所ではない。


 普通、城下街散策と言えば、城下街の中心街での美味しい食事処や宝石店などを見て回るのが普通である。


 だがしかし、従者は前日のうちからこの事を危惧していた。


 レスターは、ハッキリと言って女性との外出に不慣れである。


 姉や妹がいればまだ違ったのだろうが、レスターには兄と弟しかいない。母はいるが、母をこよなく愛するレスターの父が外出をレスターに任せるわけがなかった。


 なので従者はオーレリア皇女がひどくガッカリされるだろうと心配していたのである。


「ここは?」


「ここは、国が管理する孤児院です。横は孤児院の子らや街の子ども達の通う学校です。隣の病院には、孤児院の子ども達が手伝いをしに行けるようになっています。孤児院の仕組みからご説明しますね?」


 レスターの言葉に、従者は冷や汗をかくと言った。


「レスター様。女性は、、、散策にこのような所は、、、好まれないのではないでしょうか?」


 普通であれば主に口出しをするのは以ての外ではあるが、レスターとは幼い頃からの付き合いであり従者はレスターの為だと思いそう言った。


「え?そうなのか?オーレリア嬢すまない。ここは嫌だっただろうか?」


 だが、レスターの言葉に孤児院を見上げていたオーレリアは満面の笑みで首を横に振った。


「いいえ!私は見に来てみたかったのです!さすがレスター様ですわ。仕組みや経営の方法などもお教え願えるでしょうか?」


 その言葉に、レスターは満足げな笑みを浮かべると従者に、見てみろ、間違ってはないではないかと言うように笑みを向けた。


 従者は驚き、目を丸くして、二人を見つめる。


「良かった!オーレリア嬢であればそう言うだろうなぁと思っていたのだ。あぁ。なんでも聞いてくれ。わかる範囲で教えよう。」


「はい!ありがとうございます!」


 そう言ってレスターにエスコートされながら、色気のかけらすらない場所へと嬉々として向かう二人を従者は見つめた。


 そして思う。


 なる程。


 オーレリア皇女殿下は、レスターに恥をかかせてはいけないと、ここに心から興味を持ち、様々な事を学ぼうと切り替えられたのだなと。


 きっと、城下街での散策を楽しみにしてきただろうに。


 従者はその健気なオーレリアに、手を口で覆いうめき声を上げると感謝した。


 なんて心優しい皇女殿下であろうか。


 従者は良しと、決めるとオーレリアの為に何か気のきいたものをレスターにプレゼントを勧めてみようと慌てて二人の後を追った。


 二人は楽しそうに孤児院の経営についてなど話をしていた。


「この孤児院では、子ども達の自立を目指しているのです。」


「なる程。では、就職先の斡旋などはどうされているのですか?」


「街の店には、研修制度も設けてあり、13を超えた子ども達は働いてみたい職場に研修に入る事が出来ます。そこで頑張れば雇ってもらえるように交渉するんです。」


「なる程。病院の方はどうなっているのです?」


「病院では、低年齢の子ども達が洗濯や掃除の手伝いを行います。お小遣いがでますから、それを楽しみに頑張っている子もいるんです。」


「なる程。自身で働く事で得る楽しさを感じられるようにしているのですね?」


「ええ。まだまだ課題はありますが、どうにか成り立っているようです。孤児院の経営については後ほど、どうです?子ども達と遊びますか?」


「もちろん!」


「体力がいりますから、無理はしないでください。まだまだ、紹介したい施設はあるのです。」


「さすがはレスター様ですね!ありがとうございます。」


 従者は思った。


 これは城下街散策ではない。


 これはただの視察である。


 それでも楽しげに微笑んでくれるオーレリアを見て従者は思った。


 女神である、と。



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