第十八話
オーレリアは、レスターからのプレゼントであるワンピースを着ると、髪を編み込み横に流して、本人は街娘のようだと鏡を見て思っていた。
こうやって、服を変えてしまえば、自分も街娘とそう変わらない。
オーレリアはもし自分も皇女でなければと一瞬思ったが、頭を振ると気持ちを振り払いレスターが迎えに来てくれるのを待っていた。
今日はやけに部屋が静かに感じて、胸が不思議と高鳴っているのを感じる。
「皇女殿下、ワトソン様がお迎えに来られました。」
侍女からそう声をかけられ、オーレリアは立ち上がるとレスターの元へと向かった。
今日は街のどこに連れて行ってもらえるのだろうかと楽しみしてオーレリアは部屋から出るとレスターの元へと向かった。
階段を降りると、オーレリアはドキリとした。
切れ長の瞳と目が合い、心臓が煩いくらいに鳴り響く。
赤茶色の髪の毛をきっちりと撫で付け、切れ長の瞳に似合う眼鏡をかけたレスターは優雅にお辞儀をした。
「本日はアレクシス殿の都合が悪くなったようで、私と二人ですが、街散策へと行って下さいますか?」
いつもの優しい声。
だが、オーレリアは初めて見るその姿に驚きと、困惑と、緊張のせいで一瞬不思議な間が開く。
レスターは、オーレリアがアレクシスが来ないと知って落胆しているのだと思い、胸が微かに痛みを感じる。
だが、その痛みはすぐに消え去った。
「いえ、、、その。違うのです。あの、レスター様と一緒で、嬉しいです。今日はよろしくお願いします。」
本人は街娘を装っているつもりなのだろうが、その美しさは偽れるものではない。
はにかんだ笑みはとても可愛らしくて、レスターは柄にもなく自分の頬が熱くなったのを感じた。
「では、参りましょうか。」
「は、はい。」
オーレリアはレスターにエスコートされて馬車に乗り込んだ。
その時、レスターの胸ポケットに、通常よりもきらびやかに見える妖精が一人いる事に気がついた。
『今日は、皆で話し合って、僕が妖精を代表して来たよ!楽しんでね!えっと、二人のお邪魔はしませんから。』
テレテレと、少し顔を赤める様子がおかしくて笑いそうになるが、本人は本気な様子なので、オーレリアは堪えた。
「今日は楽しみです。どこへ行くのですか?」
「はい。私も色々と考えてみました。お楽しみに。」
「はい。」
初々しい二人の様子に、妖精はニヤニヤとした。




