第三話「突然のサイキック」
翌朝。
通勤途中の電車の中。雅人はゆらゆらと電車に揺られながら、今朝の出来事を思い返して溜息を吐いた。
朝になって目が覚めれば、昨日までの悪夢からも覚めているはずだった。
────が、
眠りから覚めた雅人の目には、昨夜のままベッドに横たわり眠る地蔵の姿。
────悪夢だ。
やがて、のそのそと起き上った地蔵は、おもむろに着物姿に割烹着という、どこか懐かしい昭和のおふくろのような姿になり、当たり前の様に台所に立って朝食を作り出したのだ。
────色んな意味で、悪夢だ。
そして、食卓の上に並んだのは、あん団子。
────もう、どうでもいい。
すっかり忘れていた胃の具合が再発してしまい、朝食のあん団子を拒否すると、朝だというのに疲弊しきった顔で家を出てきたという訳である。
(もう、現実と認めざるを得ない──か)
再び、深く溜息をつく。
現実と受け止めたならば、雅人の頭の切り替えは素早く、昨日の一連の出来事を頭の中で整理整頓し始める。
(七つの善行──)
七つというのはどうでもいいようだが……善行とは、つまり人助けとかそういうのを差すのだろうか。雅人が普段、意識して考える事のない分野である。
(だが、それをクリアすれば奴は俺の前から消え去る──!)
考えは目標を見間違えて、地蔵を追い出す策略へと変わっていってしまう。ゲームの攻略本でも読んでいる気分になっていると、電車は通過点の駅に停まり降車する人と乗車する人たちが一斉に動き出した。雅人は空いた席を見つけると、すかさず座ってぐったりと深くもたれ込む。
(善行とか言われてもなぁ……オレ、偽善者とか嫌いだし)
バッサリと切り落とした。
昔から、特別に悪い行いをした覚えはないが(地蔵は論外)、かといってこれといって特別に良い行いをした覚えもない。他人の事にも自分の事にも、あまり深く考えずに何となく惰性で生きてきた。それがいけなかったとでも言うのか。贅沢や我がままな人生歩んできたつもりはない。
滅多に物事について悩み考える事のない雅人は、すぐに眠気が襲ってきた。普段なら座席に座ると同時に居眠りするので、これでもよく思考が持った方である。
そこへ──乗車して来た一人の老人男性が雅人の目の前に立つ。杖をついていて足腰が悪いことが一見して分かる。
老人は遠慮もくそもない目で、雅人の頭から足元までをじーっと眺めてきた。
(なに? まさかここで席を譲るというミッションなワケ?)
そうならば、実にタイミング良く現れたターゲットである。
席を譲るのが嫌という訳ではないが、いざ行動しようとすると、なかなか勇気がいるものだ。雅人の場合は、面倒臭いという気持ちより先に、通勤列車の中では狸寝入りではなく本気寝入りしている事が多いのが一番の理由だ。なので、普段このように席を譲ってくれと言わんばかりに自分を見つめている人がいたことに、今更ながら気づく。
「……あ、ここどうぞ」
席を譲ろうとして腰を浮かせようとした。──が、
「結構っ!」
と、老人の張りの良い一声。
「わしを年寄扱いせんでくれんかのっ」
誰がどう見ても、ご高齢のお年寄りなのだが、
「……すみません」
と、謝るしかない。宙に浮いた腰をぎこちなくシートに下ろした。
「わしゃ若い頃から力仕事をしてきたじゃ。人一倍、足腰には自信があるんでのっ」
若い頃はともかく、杖を突いた今言える台詞だろうか。
「はぁ……」
雅人は気の無い返事をする。
「まだ、あんたの方が顔色悪いわいっ。まだ若いっちゅーのに、朝飯しっかり食べとるんかっ? わしゃ若い頃は茶碗に二杯はおかわりしとったぞ? その代わり、大したおかずというてはなかったがのぅ。なんせ食べにゃ体に力が入らんっ。人間、食べんようになったらお終いじゃ。わしゃ、どんなに体がしんどくても飯だけは食うぞ? じゃから、治りが早いんじゃ」
親切に席を譲ろうとしただけが、逆に相手の気を悪くさせた上に、朝から見知らぬ老人に説教を垂れられる羽目になろうとは。周囲の人たちも知らん顔をしながらも、耳を傾けながら同情をしている雰囲気だ。
そうこうしている間に、電車が到着駅に着く。雅人は内心、ホッとして老人から解放される思いで席を立つ。目の前の老人も同じく電車を降りた。
先程の言葉とは裏腹に、老人の足取りは何ともよぼよぼとおぼつかないもので、雅人はそれを横目に見ながら、老人を追い抜く形で先を進んだ。
(年寄りを、むやみに年寄り扱いしてはいけない)
ボソッと、教訓として心の中でつぶやいた時だ。
──カランッ
背後から小さな物音がした。その物音に雅人は反応して振り返る。それが何の音か察しがついたからだ。
見れば思った通りだ、先程の老人が持っていた杖を落とした音だった。
「じいさん、大丈夫?」
雅人はホームの地面に転がり落ちた杖を拾って渡す。
「……なに、ちょいと左半身の体が痺れて手に力が入らなくなっただけじゃ」
「それ、何かヤバいんじゃないの?」
体の片側半身だけが痺れるなどと聞くと、真っ先に脳梗塞などといった重大な病気が頭に思い浮かぶ。近年、テレビやマスコミなどにも取り上げられているので、健康体そのものの雅人でもその症状は知っている。
近くにいた駅員が気づいて側に近寄って来た。
「お客様、どうされました?」
「いやぁ、何でもありません。ご心配いりません」
雅人への物言いとはガラリと違って、丁寧で腰の低い受け答えをする。
「じいさん、念のため病院行った方がいいよ」
「結構っ!」
やはり雅人に向かってはこの態度だ。親切な忠告を断固拒否した。この戦時中生まれだろう頑固な老人は、若造の男に対しては厳しいようである。少々ムカッときた雅人は、語調を強めて言った。
「行った方がいいって!」
「いらんっ」
「行きなって!」
二人のやり取りに困惑気味の忙しそうな駅員は、他の代わりの駅員を呼ぼうとする。それを雅人が手で制止した。
「あ、オレが駅前のタクシー乗り場まで連れて行きますんで」
「結構っ!」
雅人の申し出をキッパリと断る。
「あーもう、大人しくしろよっ!」
意地を張り続ける老人に対して、雅人もこうなりゃ意地だった。半ば強引に抱きかかえるようにして、老人をホームから引きずり連れ出す。
そんな二人を困惑気に苦笑しながら、駅員は見送った。
◇
会社に辿り着くなり、
「で、今日の遅刻の理由は何だ?」
課長の詰問が待っていた。
いい加減言い飽きた台詞ではあるが、見過ごすわけにもいかず。だが、最近では雅人の豊富な言い訳のレパートリーを聞くのが、密かな楽しみになりつつある自分を何だか少しわびしく思えていたりする課長である。
「駅で具合を悪くしたお年寄りをタクシーに乗せて病院まで送ってきました」
雅人は真面目くさった顔で真面目な内容を答える。だが、事実だ。
「な……お前が、そんな大役を?」
わざとらしく、課長は目を見開き丸くした。
「熱でもあるのか?」
課長は雅人の額と自分の前髪のない前頭部に手をやり体温を比べる。
「正気です」
と、ぶすっとした顔。いつもの雅人だと確認した課長は、
「そりゃあ、大変だったな。ご苦労ご苦労」
そう言って雅人の肩をポンポンッと叩いて労う仕草をしてみせると、ハッハッハッとオフィス全体に広がりそうな豪快な笑いで、その場を離れていった。
「……くそっパゲ」
あえて周囲に聞こえてもいいよう口に出して言ったが、いつもの日常風景に誰も気にも止める様子はない。ただ一人、村田だけが怪訝な顔をして見ていた。
あの後、駅前のタクシー乗り場まで老人を連れて行ったはいいものの、「今日は、眼科へ行く日じゃ」などと言って、行き先を眼科へと運転手に伝えようとしたので、慌てて雅人も一緒に乗り込み、市内の総合病院へとタクシーを向かわせたのだった。老人を病院まで見送った後、げんなりとしながら徒歩で会社へと辿り着いたという経緯である。
(あれって、善行だよなぁ。これでクリアってこと?)
老人を引き合いに出すつもりではないが、自分に課せられたミッション(?)を頭にする。
こんな事をいつまでも行っていたら身が持たない。何よりも──、
「向いてねぇー」
デスクにうなだれ、大きく溜め息を吐く。
「……一体、何があった?」
気がつくと、横で村田が雅人の様子を窺っていた。
遅刻の件を言っているのではない、と分かる。村田の洞察力の鋭さを、雅人はよく知っている。なので、隠すこともなく素直に話した。
「……なんか、地蔵の化身てのが現れてさぁ。あ、あの俺が首を折っちまった地蔵な。そんでもって、善行とやらを命じられたワケ。それで首が元に戻るんだとさ」
隣のデスクで新人君が、昼食のホイップクリーム入りメロンパンに今まさにかぶりつこうと大きく口を開けたところで、その動きをピタリと止める。
──数秒後。
「……なるほどな」
と、村田は一言。
「えぇーっ? そこ信じちゃうんスかぁ?」
さすがに新人君は声を上げてツッコミを入れた。
「宮地は馬鹿に見えても、下手な嘘をつくような奴じゃないからな」
どこか意味不明に納得いくような、いかないような。村田はそう答えた。だが、この新人君もなかなか神経が図太かった。
「バカ正直ってやつっスね?」
こちらも、どこか何か違う解釈。しかも、先輩である本人を目の前にしてバカときた。
ゴツン。と、そんな新人君の頭を村田が小突く。
「あまり宮地を馬鹿呼ばわりしない方がいいぞ。こいつはやる時はやる奴だからな」
たった今、雅人のことを馬鹿と言っておきながら。しかしその通りで、普段はミスを連発している雅人だが、最終的にはそれなりの結果を出しているのだ。それ故に、上司からの期待も少なくないとか全くないとか。
目の前で馬鹿を連呼されても、声に出して怒りはしない雅人だったが、新人君のホイップクリーム入りメロンパンを奪って口に頬張っている──さり気ない報復。
とりあえず、檀家に相談は様子見でいいか。と、村田は考える。
普通ならば、にわかには信じられない話だが、雅人は昔から少し変わったというか、不思議というか、そんな類の体験をしたりするところがあった。今回もそうであるとすれば……、
「ま、いい機会だ。せいぜいそのお地蔵さまとやらに修行させてもらえよ」
雅人の身に起こっている奇妙な出来事について、そう適当に結論を下した。
「冗談じゃねーっての! おまえ、他人事だと思ってなぁ……」
そう、他人事だ。
さっさと自分のデスクへと戻っていく村田の背中に、雅人はブーブーと文句を垂れる。隣で新人君が、「地蔵って、アレ何なんスかね?」と聞いてきた。
◇
──カンッ
飲み干した缶ビールの空き缶がテーブルの上に乱暴に叩きつけて置かれる。会社から帰宅後、雅人はずっと不機嫌だった。
「どうしたのかのぅ」
今朝と同じく割烹着の姿で台所に立ち、何やらまた調理をしているらしき地蔵が、さほど気にも止めぬ様子でつぶやいている。
「どうしたかじゃねーよっ! あんたのせいだろっ!」
すでに雅人は少し酔っていた。実はアルコールに弱い。
「今朝、あんたの言うとおりに〝善行〟とやらを行いましたよっ! なのに……笑われるだけかよっ!」
課長のことだ。とりあえず酒が入ると課長に悪態をつく、──適任者だからだ。
「良いではないか」
「何がっ?」
「おぬしが笑われようがどうしようが、それで救われた人がいるのであればのぅ。いくらでも笑われるがよい」
「……あんた、何気に無責任でひでぇこと言うよな。てか、あんた今朝から一体何やってんだ? いや、違う。なんでオレの前から消えねぇんだよっ?」
雅人の問いには完全無視をして、調理をする手を止めることなく地蔵は話を続けた。
「人の善行とは、見返りを求めぬ無条件で無償であるもの。その精神を持ってして、初めて本物の善行が生まれるのじゃ。それを常日頃から無意識に行うというのはなかなか難しものじゃがのぅ。人は誰しも少なからず心のどこかに邪な心や損得の観念があったりするものじゃ。だが、それを決して責めたりはせぬ。それこそが人間らしいところでもあると、わしは思っておるからじゃ」
「はっ、地蔵が説法かよ? あんたの説法なんか聞きたかねーよ」
二本目の缶ビールの蓋を開けながら、吐き捨てるように言ってやる。
「無論、おぬしがただの馬なれば、最初から説法もせぬし念仏も唱えぬがのぅ」
「あ? それどういう意味だよ?」
これまた、雅人の問いには答えぬまま、地蔵はテーブルの上に出来上がった料理を運んだ。
気になる本日の夕飯メニューは──
「また団子かよ!」
「団子汁じゃ、美味しいぞう」
にこやかな笑顔で地蔵は言う。
「オレの体を団子漬けにする気かよっ」
そう言いつつ、団子汁を口にする。
野菜もたっぷり、栄養満点。温かいお汁がやさしく体に染みわたり、ほうっと雅人は息をついた。
「って、ホッとしている場合じゃねー! オレはあんたに聞きてぇ事が山ほどあんだよっ」
「わしは微塵もない」
ピシャリと一言。
何だろう、この地蔵。時折、あどけなくも見える可愛いらしい顔をしていながら、とても憎たらしいことを口にしやがる。
雅人はふつふつと煮えくり返る怒りを必死に抑えながら。
「年齢は?」
基本的な質問をぶつけてみた。
「はて? 詳しい製造年月日はもう忘れてしもうたが……二百年余りになるかのぅ。一度、モデルチェンジをしておるぞ」
ふざけた答えに何だか一気に怒りが抜けて脱力する。
「あんた……男なの? 女なの?」
「知らぬ。考えたこともないのぅ。そんなことを知ってどうするのじゃ?」
──愚問だった。
ほんの少しだけ何かを期待していた自分に気づき、馬鹿だったと恥じる。深く後悔してテーブルの上に頭を垂れる。
「……やっぱ、俺のこと祟ってんだろ……」
「地蔵は人を祟ったりなどせぬ」
「ウソつけっ! じゃあ、昨日のオレの大災難は何だったんだよっ? ひっでぇ目に遭ったんだぞっ!」
あんたに会ったのが一番のひでぇ災難だけどな。と、雅人は内心毒づきながら、恨めしい目で地蔵を見る。
「ふむ……」
そんな雅人の視線を痛くも痒くもなく浴びつつ、何やら腕を組んで考え込む地蔵。
「わしが本体から離脱して《力》が弱まった故に、管轄しているこの辺一帯の《気》が淀んできたのやもしれぬ」
「……何それ? 何の話? 地蔵一体につきそんなでけぇ力があんの?」
今度は胡散臭い視線を投げつける。すると──地蔵は印契らしきものを両の手で結び、何か経のようなものを唱え始めた。
「南無大師遍照金剛……」
「え? なに? なに?」
「南無大師遍照金剛……」
地蔵は一心に気を込めて繰り返しながら唱えると、体から白金の光がゆらりと立ち昇る。そして、辺りに人の形らしきものが浮かび上がったかと思いきや、自由自在に変幻しながら部屋中を飛び回り出した。雅人の周りにもクルクルとそれが回る。
「げぇ、ちょっ、なんだっ? やめろ──っ!」
絶叫し、訳も分からぬまま本能で防御の身構えをとる。
「──昇れよ」
静かに凛とした声で地蔵が唱え終えると、パァと光が広がるように人の形らしきものは消え去っていった。
雅人は目をつむって何も見てないという風に、顔を覆ったままだ。
「この部屋の《気》も淀んで小さな浮幽霊たちがウロチョロしておったので、お大師様の御力を借りて浄化したぞ。どうじゃ、綺麗になったじゃろう?」
お大師様とは弘法大師・空海の事だ。
「ついでに部屋の埃も溜まっているようじゃが……それはおぬしが掃除するのじゃぞ」
地蔵はまるでお部屋のお掃除を済ませた後の主婦のようにフゥと一息つき、清々しい笑顔で達成感を味わっている。
突然、目の前で繰り広げられたサイキックアクションな出来事に、雅人はショックで呆然とするばかりだ。そんな雅人を尻目に、地蔵は説明を付け加えた。
「わしが本体に戻らぬ限り《気》は淀み続け、人々に災難が降りかかり続けるやもしれぬ」
「……何が起きんの?」
もう嫌だ。もうご免だ。といった感じで、恐る恐る聞く。
「そうじゃのぅ……ぎっくり腰や首の寝違えを起こして病院へ駆け込んだり、スマートフォンの電源が突然落ち二度と起動しなくなる。などといった事かのぅ……」
「……非現実な話をしておきながら、やたら現実的な現象ばかり起きるんだな」
「そんな時こそ、おぬしの善行で助けるのじゃ!」
「オレはスーパーマンかっ! んなの助けようがねぇし……」
もはや話の展開について行けず、バタッと床の上に仰向けに倒れ込んだ。
「未然に防げなどと無理難題は言っておらんぞ。災難に遭った人々の助けになれよと言っておる。じゃが──」
地蔵は一旦言葉を置き、
「一日一善じゃ。無理は良くないどころか、結果的に悪い方向へと事態を招いてしまうからの。まずは己の心を磨くことが大事じゃ。余裕のない心では、善行などはとても行えぬ」
地蔵の話を聞いているのかいないのか、雅人は今まさに心に余裕がない状態だ。そんな雅人を放置して、地蔵は食器を流し台へと運ぶ。
「……あんたって、一体何者なの?」
台所で洗い物をしながら地蔵は、
「地蔵じゃ。ただの、地蔵じゃ」
まるで何でもないことのように、そう答えた。
むっくりと起き上った雅人は、生ぬるくなった缶ビールを一気に飲む干す。──ふと、地蔵の首筋に目を留めた。
「……何あんた、首にサロンパス? 年寄り臭いな」
くるりと地蔵が振り返る。
「何を言っておる。誰かさんに折られた首が痛んでおるのじゃろうがっ。地蔵も生身の人間と同じく痛みや悲しみを感じる心を持っておるのじゃ。それは万物全てにおいてじゃ。忘れるでないぞ」
ぐしゃり。と、
「あぁ、そうでしたねっ。俺が悪うございました!」
つい、カチンと頭にきた雅人は手に持っていた缶ビールを握り潰すと、今度は戸棚から安物のワインを取り出して来る。こうなりゃ今夜はヤケ酒だ。
ちょいとばかし嫌味たらしかったかと、地蔵はペロッと舌を出した。
しばらく辛気臭い雰囲気でチビチビと舐めるようにワインを飲んでいた雅人だが、しんみりと地蔵に向かって言った。
「……首が治るように、元の姿に戻れるよう、努力してやるからよ。だから……」
──振り返れば、地蔵はすでに寝ている。
「早く出てけ──っ! オレの寝床を奪うんじゃねぇ────っ!」
昨夜と同様、当然のように雅人のベッドでスヤスヤとご就寝中だ。座布団でもあれば投げつけてやりたい。
(絶っ対に、早いとこ追い出してやるっ)
胸に強く誓いながら、今日も倒れ込むようにフローリングの上に寝転がると、そのまま秒殺で眠りについた。
読んで頂きありがとうございました!
いきなりなんでサイキック展開……