旅に出る人出ない人
今日は短めですが、区切りのところなので投稿します。
だがその晴れ晴れとした気持ちの隅に、さっきの実験の結果が引っ掛かっていたのは確かだ。
私たちならマールライトを結界に変質させられる。兄さまたちにばれないようにするために、結界は小さく作った。そしてその結界に使う魔力は、携帯用の結界箱に使う魔力よりはずっと小さくて済んだのだ。
「ほんとうに、おおきいましぇきじゃないと、だめなのかな」
「リア、どうしたのですか?」
「ううん。うぇしゅたーがたのちみ!」
「私もですよ」
壊れた魔道具は持っていても、魔石は与えられていない。実験しようにもどうしようもないことを考えていても仕方がない。私は切り替えて、兄さまに明るく笑いかけたのだった。
もともと、私がさらわれてウェスターまで連れていかれてしまったのが始まりだった。そこからいろいろあって、兄さまたちがシーベルまで私を引き取りに来てくれた。帰るときはお父様が国境まで迎えに来てくれていたが、あの時は四侯も国境を越えられないという不文律をお父様もきちんと守っていた。
だが、お父様は今回はウェスターどころか国境までも一緒に行かないというのだ。私は思わず不安になってお父様を見上げた。
「おとうしゃま、こないの?」
「ああ、すまないな。私も行きたいのだが、ルークとリアと私が行ってしまったら、オールバンスがすべてキングダムの外に出てしまう。それはさすがにな」
同じ理由で、ギルのところのスタンおじさまも来ない。
マークのところはそもそも行く気がないし、フェリシアもクリスも、別の理由でキングダムを離れられない。
つまり、私と兄さま、ギルにニコを加えた四人で出発ということになる。
「四侯の跡取りが二人。王家の直系が一人。四侯の血筋が一人。本来ならありえないことだが、既にランバート殿下がイースターに出向いてしまっている以上、いまさらだな」
お父様は気が重そうにため息をついた。兄さまとギルがウェスターに出た時は、今とは比べ物にならないほど状況は難しかったはずだ。
「あの時はリアを迎えに行くという大義名分があったからな。どうにかして押し切ったが、今は別に無理に行くこともなかろうと思っているからやる気が出ない」
「おとうしゃま……」
やる気が出ないと言いながらも、子どもの安全のためには頑張るお父様である。私と兄さまが安全なら、ついでにギルもニコも安全だろうという、王族的には大雑把な安全管理だとハンスがこぼしていたが、ニコは私と一緒だから心配ない。
気がかりはクリスだったが、意外とあっけらかんとしていた。
「リアとニコといっしょにいたいとは思うのだけど、わたし、とおくにりゅうしゃで行くの、すきじゃないの」
「しゅきじゃない?」
旅行好きで隙あらば出かけたいと思っている私とは大違いで驚いた。そもそもクリスは活発な子のはずだ。
「いつもおなじところにいるのはつまらないではないか」
ニコも不思議そうだ。
「わたしね、イースターに出かけたとき、べつにたのしくなかったの。おかあさまとおとうさま、姉さまがいっしょだったのはうれしかったけど。いつまでもかわらないけしきや、ガタガタゆれるりゅうしゃものりごこちがわるくて、つらかったの」
確かに、移動そのものが疲れる人もいるし、旅を楽しむより、自宅がくつろぐ人もいる。
「それに、とおくに行ったからって、たのしかった思い出もないのよ。あ、おしろのたんけんとか、リアのおうちにあそびにくるのはだいすきよ」
「じゃあ、りょこうのことは、もういい。いまからあしょぼう!」
楽しかった思い出もないというクリスの言葉は悲しかったけれど、そのうち大きくなって、皆で楽しく旅行に行ったら変わるかもしれないと思うことにした。
その話をした日はそうしてみんなで楽しく遊んだのだけれど、皆が同じではないのだということを考えさせられた日だった。
「まーくも、まーくのおとうしゃまもでかけるのがきらいなのかも」
旅好きでなければいけないということはない。クリスにとって、フェリシアやリスバーンの家の優しい家族に囲まれているほうがいいのなら、そのほうがいい。それに、もしクリスが強く望んだとしても、今はレミントンは、年齢を問わずキングダムの外に出るのは禁止されている。
クリスの言葉は、それを知っての強がりではないと思いたい私であった。
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今週にでも活動報告を書きますね!




