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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
キングダム編

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知らないこともない天井

つらい時期は終わりましたので、お休みしている読者さん、ぜひ戻ってきてくださいませ!

 しかしハンスの顔を見たのに安心したのか、私はまもなく眠くなってしまった。


 起きていなければいけないと思うものの、目が閉じそうになり、そのたびに結界が危うくなる。


「よい、リア。ひとりかけてもなんとかなる。もうやすむがよい」

「でもにこ、あしぇがいっぱい」

「あついだけだ」


 私はもうずいぶん長いこと結界の訓練をしているが、ニコはまだ始めたばかりだ。ニコこそつらいと思う。額に汗がにじんでいる。そうは思うのだが、気が遠くなっていく。


 まるで蛍光灯が切れるときのように自分の結界が揺らぎ、消えたその瞬間のことだった。


「おお、これは」

「おとうしゃま?」


 胸に響くのは、遠く離れたところにいるだろうお父様の、ゆるぎない結界だ。魔力をやっと使いこなし始めたばかりの私たちとは違う、もう10年以上も結界のために注ぎ続けてきた魔力。それは力強く結界に響き、まるで私や兄さまをそっと抱きしめるかのようだった。


「もう、いい?」


 よくやった、リア。お父様の声が聞こえたような気がした。


「りあ、がんばった」


 いい子だ。もう、やすみなさい。


「あい」


 その後の記憶はない。私が倒れ、次にニコが倒れ、周囲の人は何が起こったかわからずパニックになったらしい。しかし、すぐにランおじさまの結界が働き、スタンおじさま、ハルおじさまと、王家と四侯の結界が次々と重なるように響きあうことになった。それは明け方まで続き、結果として虚族の被害は軽微だったと、後から兄さまに聞かせてもらったのだった。




「ちりゃないてんじょうだ」


 嘘です。まあ、知らない部屋ではあるけれど、お城のどこかの客室だろう。眠っている間にいつの間にか家に帰っているということはなかったようだ。


「リア様!」

「なたりー」


 ずっとベッドのわきに控えていたのか、いつもはピシッとしている髪が幾分かほつれたナタリーがそこにいた。私はベッドから手を出して、ナタリーのほうに伸ばした。なんだか手が重い。


「なたりー、ぶじ。よかった」

「よかったではありません! リア様は、また無茶をなさって……」


 ナタリーは私の差し出した手を両手で包むと、手で包んだままベッドの上にそっと下ろした。


「なたりー、あのあと、どうちた?」

「リア様と分かれた後、大きなぬいぐるみをかかえながら南の温室に走ったのです。こう見えて私は足は速いんですよ」


 ナタリーが自慢そうにそう言った。


「もっとも、南の温室につく前にイースターの兵に捕らえられてしまいましたが、リア様のほうに向かうはずの兵をいくらか引き付けられただけで十分です。ぬいぐるみ好きの間抜けなメイドと思われたのは癪ですが、ええ、本当に癪でしたが」


 癪だと二回言った。大事なことだから? 私はおかしくなってふっと笑ってしまった。


 普段冷静で切れ者のナタリーにとっては、よほど腹に据えかねたのだろう。


「その後は客間にまとめて閉じ込められましたし、食事は質素なものでしたが、私たちが危害を加えられるということはありませんでしたよ」

「よかった」


 第三王子は、王族を確保して結界箱を止めることが役割だと言っていた。危害は最小限だろうと思ったが、その通りだった。


「閉じ込められたメイドの私たちは私たちで、泣き落としやお色気作戦や、いろいろなことをして兵を油断させようとしましたが叶いませんでした。絶対助けは来るはずだから、その時に足を引っ張らないよう、せめて見張りの兵くらいは落とせるようにと作戦を練り」


 ここでついに我慢ができずに笑ってしまった。真面目なナタリーたちがどうお色気作戦に出たのだろうか。


 そんな私を見て、ナタリーはほっとしたように口元を緩めた。


「ルーク様も、ご当主も、皆さんご無事ですよ。さあ、お水を飲みましょう」


 ナタリーに水を飲ませてもらうと、私はまた眠りについた。なぜだかとても眠かったのだ。



 次に起きた時にそばにいたのは、兄さまだった。兄さまはナタリーと入れ替わるようにベッドの横の椅子に座り、そして私のベッドに突っ伏して眠っていた。


「にいしゃまだ」


 起こさないように小さな声で確認し、兄さまのサラサラの金の髪をゆっくりと撫でた。


 兄さまはイースターが攻めてきた時、学院にいたと思う。私とニコも、こっそりと戦っていたが、兄さまはどうしていたのか。結界を響かせあった時は、確かに城に来ていたと思う。


 きっと私のことを心配していたに違いない。


「ん……。リア!」


 ガバリと起き上がった兄さまの頭には、ぴょこんとかわいらしい寝癖がついていた。


「にいしゃま」

「リア!」


 あっという間にお布団がはがされ、持ち上げられると、私は兄さまの膝でギュッと抱き締められた。


「心配したのです。心配したのですよ」

「あい。たいへんでちた」


 狙われたのはニコかもしれないけれど、ついでに私も捕まったのだから正直に大変だったと言っても許されると思う。


「あんな状況でしたが、リアの結界を感じた時に、どれだけほっとしたことでしょう。もっとも、ギルと共に私も結界を張ろうとしていたところだったので、時間の問題ではありました。が、二度とこんな無茶をしてはいけません」


 兄さまに叱られた。


「10歳を過ぎるまでは本来は魔力を操る訓練すら危険だからすべきではないというのに。自らの体を張る必要などなかったのです。まだリアは二歳だというのに……」

「あい」


 叱られても、同じことがあったらきっとやるだろう。やらないとは誓えないけれど、心配をかけたのは事実なので素直に頷いておく。そして相変わらずニコについてのコメントがないのが笑える。


「にこは」

「殿下もご無事です。リアより先に起きて元気に走り回っていますよ」

「よかった」

「お父様のことは聞かないのですか」


 兄さまがちょっと面白がるような顔をした。


「おとうしゃま、けっかい、げんきでちた」

「ははっ。やっぱり感じましたか。お父様は悔しいでしょうけれど、実はまだ王都には戻ってきていないのですよ」

「まだ?」


 私は驚いた。お父様ならなんとしてでも戻ってくると思っていたが。


「ウェスター近くまで行っていたお父様に連絡を取るのに早竜を使っても二日はかかります。城は一時まったく機能を停止していましたし、実は学院も襲われたので、私たちもしばらく身動きが取れなかったのです」

「にいしゃまも?」

「ええ。狙われたのは私とギルです。もっとも、リアと同じです」


 兄さまはにやりとした。


「私もギルも、つかまったりはしませんでした。私たちが目的だとすぐに気が付き、しばらく隠れてから学院を抜け出したのです。もし捕まったとしても命は取られないとは思っていましたが、学院にいたら、他の生徒たちを人質に取られて身動きが取れなくなってしまいますからね」


 さすがである。私は次の話をわくわくしながら待った。



今週、9月25日、筆者の別作品「転生少女はまず一歩からはじめたい」が発売されますが、なんと!

「転生幼女」とコラボします!

「転生少女」を買うと「転生幼女」のssが入っているというコラボです。

といっても、「転生少女」の世界にほんのちょっとお邪魔する「転生幼女」のかわいくて短いssが入っている、というものです。

「転生少女」のほうも、ニコとリアのように、アレンとサラという少年少女が二人で乗り切る試練が出てきます。面白いですので、ぜひどうぞ!

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― 新着の感想 ―
父様かっこいい… そしてナタリーたちメイドの奮闘が面白すぎるし見たすぎる…コミカライズで一コマだけでも描かれないかな…
ディーンパパを筆頭におじさまが皆で頑張りました リアとニコの結界が周りへの生存確認・位置確認になって とってもお役立ち ニコリアお疲れ様
[良い点] やっと兄様に会えて良かったね、リア。 ナタリーも無事で良かったね〜、いけすかない第三王子が、それでも狙いの結界以外の破壊活動や略奪、暴力など、暴走しなくて本当に良かった! ご都合主義でも悲…
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