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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
キングダム編
175/392

小さい子同士

「久しぶりの更新なので今回のポイント」


ついに北の領地のおじいさまの屋敷に着いたリアとニコ一行。待ち受けていたのはファーランドの子供たちだった。リアとニコはうまくやれるだろうか? というお話からです。


 他にもお母様の絵はあって、小さい頃のお母様など、兄さまと一緒に楽しく見たりしたが、結局は階段のところの絵に戻ってきてしまうのだった。おじいさまの屋敷にいる間、暇があれば階段に行って絵を眺めたが、そもそも暇などほとんどなかったのが残念である。


 到着した日は夕食をとってすぐに休めたのだが、次の日は、せっかくファーランドからきているのだからということで、ファーランドの兄弟たちと交流することになってしまったからだ。


 そろそろ小さい女の子をよこしてくれないかな。旅が大変だからとか、男の子の癇癪の相手が大変だからとかいうのなら、なぜ二歳の女の子の私が旅をしてここまで来て、ニコの相手をしているのか。責任者に問い詰めたいが、責任者などおらず、その場しのぎの対処の結果がこれなのである。クリスのいた生活が懐かしい。


「せっかくだから、領地の違うものとして話してみたいことがたくさんあったんだ。ネヴィルとハルフォードは国境を接しているとはいえ、気候も植生もほぼ同じ。しかし、結界の有無で生産性がどのように変わると思うか。まず率直にそこから聞きたい」


 堅苦しくなく、子どもたちだけで交流を深めるとよいと放り出された大きな部屋に入ると、まず話し始めたのはロイドだ。確かそう、


「うぇしゅたーの、ちかくのひと」


 だったはずだ。昨日はいたずらな雰囲気だったが、今日はいきなりまじめな話題から入ってきた。兄さまとギルのほうを見上げると、私と同じように意外に思っている雰囲気が伝わってきた。もちろん、兄さまはお父様の息子である。顔にはそのことは少しも出ていない。仲の良い兄妹だからわかることだ。


「お前、なんでそんな得意そうな顔をしてるんだ」

「おまえじゃありましぇん。りあでしゅ」


 私は話しかけてきたロークの間違いを丁寧に正した。


「お前だって俺の名前わかんないだろ!」


 私はちょっと冷たい目でロークを見た。昨日お互いに紹介されたでしょ。


「ろーく。じぇふ。じゃすぱー。ろいど」


 目についた順番に名前を呼ぶと、私はふふんという顔をした。


「しょして、りあはりあでしゅ。しょれからにこ」


 ニコだけ仲間外れにならないように、ちゃんとニコの名前も入れた。


「うむ。ローク、ジェフ、ジャスパー、ロイド。わたしのことはニコとよぶがよい」


 ニコは鷹揚にうなずくと、私と同じように相手の名前を確認するように呼び、ちゃんと自己紹介した。相手の年少二人はぽかんと口を開けている。


「ふはっ、ははは! 小さい殿下と小さいレディは賢くていらっしゃる。この様子なら小さい者同士で大丈夫だろう。ジェフ。任せられるか」


 最初に話し始めたロイドは面白そうに笑いだすと、弟のジェフにそう確認した。


「僕は大丈夫だよ、兄さま」


 ジェフは、僕はと言って、ちらりとロークのほうを見た。


「俺だって大丈夫だ。ちびどもの面倒くらい見られる」


 むしろ私たちがこのロークの面倒を見ることになるのではないかと思うのだが。ロークのお兄さんのジャスパーがちょっと不安そうにロークを見ている。


「かまわぬ。としうえのものはとしうえのものではなすこともあるだろう。わたしとリアは、このものたちにあいてをしてもらうとする」


 なぜ勝手に私のことも含めてしまうのか。ニコがいいと言ってしまったので、私たちは比較的小さい者たち4人で過ごすことになってしまった。まあいい。私はおとなしく見学でもしていよう。


「では、なにをする。まだひるまえだから、べんきょうか」

「何言ってんだお前」


 ロークのこの言葉に兄のジャスパーが悲壮な顔でくるりとこちらを向いたが、離れたところにいて拳骨は届かなかった。ニコはあまり気にしていないらしく、普通に話の続きを待っている。


「せっかく家からはなれてるんだから、勉強なんてしない。あそぶんだ!」

「それはよいな」


 ニコも嬉しそうだ。今まで静かに様子を見ていた、というより口をはさめないでいたジェフがおもむろに腕を組んだ。


「だけどね。みんなであそぶとして、赤んぼうもできるあそびって何があるかな」


 みんなで遊ぼうと考えるとは、なんていい子なんだろう。でも一言言っておこう。


「あかんぼうじゃないでしゅ」

「ボードゲームはちょっとむずかしいかな」

「できましゅ」

「そうだ! かくれんぼとかどうだろう!」


 しかし、おとなしいと思いきやジェフはちっとも話を聞かないのであった。まあ、かくれんぼならいつもニコやクリスとしているので大丈夫だ。


「それならリアもできるな。ただ」

「ただ?」

「はやくみつけないと、リアはどこでもねてしまうから」


 いくら私でも午前中から寝たりはしない。失礼な。


「まあ、そんなちびすぐに見つかるから大丈夫だ」

「そうだといいがな」


 ニコがロークを気の毒そうに見た。


「じゃあ、言い出しっぺの僕が最初に鬼をやるよ。20数えるのでいいかい?」


 ということでかくれんぼをすることになった。20じゃあ短いだろうって? そんなことはない。この部屋に入った時からすでに、かくれんぼやおにごっこをすることを前提に、部屋の家具の配置は頭に入れているのだ。そしてそれはニコも同じだから、特に文句も言わずに隠れ場所に走っていった。


 この部屋だと隠れられそうなところは、ソファの後ろかテーブルの下、そしてカーテン、護衛やメイドの背中などである。本棚の隙間などもある。


 しかし私の選んだところは、座っていたソファの下だ。私はジェフが数え始めるとすかさずソファから立ち上がり、そのまま地面に寝転がり、ソファの猫足のところにもぐりこんだ。ぎりぎりである。


「!」

「……ふう」


 ナタリーの声にならない悲鳴と、ハンスのため息が聞こえるが、大丈夫。さすが伯爵の屋敷、ソファの下も掃除が行き届いている。多少埃っぽいくらいである。みんなどこかに隠れられたみたいで、ぱたぱたと聞こえていた足音も聞こえなくなった。


「じゅーく、にーじゅう。もういいかーい」

「いーよー」


 みんな居場所がわからないように小さい声で答える。


「部屋は広くないから、すぐに見つかるだろう」


 ドアのところで数を数えていた鬼のジェフ君は自信満々だ。


「まずはカーテンだな」


 やはりそこに目が行くらしい。シャッとカーテンを動かす音がする。


「いない。ということは」


 目の前をジェフ君の足が通る。ちょっとして、テーブルクロスをめくった気配がする。


「ローク、みつけた!」

「ちぇ。部屋がせまいんだよ」


 必ず他の人や物のせいにする人はいる。それにしても、部屋の中は暖かい。ポカポカして気持ちいい。


「次に、ここ! ほら」

「やはりあしもとはわかりやすかったか」


 どうやら兄さまたちの足元に隠れていたらしい。木は森に隠す。幼児は大人のところに隠す。うむ。眠い。


 そしてそこから記憶がないのだが、気が付いたらソファの外に引っ張り出されていた。


「だからいったのだ。すぐにみつけないとリアはねてしまうとな」

「ねてましぇん」


 ニコが気の毒そうな顔をして目をこする私の口元をハンカチでふいた。レディにあるまじきこと。よだれか。


「よし! 次はもっと動きのあるあそびをしよう!」


まだやるの? 私はしぶしぶ立ち上がった。


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「異世界でのんびり癒し手はじめます ~毒にも薬にもならないから転生したお話~3巻」


頑張る転生者の少女のお話です。こちらもよろしくお願いします!

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