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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
キングダム編
129/392

先生も多すぎる(ルーク視点)

 フェリシアは私たちの視線に気づくと、少し慌てたように首を横に振った。


「違うの。お母様はともかく、私も王家に近付いて何の意味があるのと思っているわ。四侯は四侯。それぞれがバラバラにいるからこそ、権力が集中しなくていいんだわ」


 私は少しフェリシアを見直した。


「私ももうお母様について城に行くことも多くなってきて。そうすると、クリスがうちに一人になってしまうの。使用人の子どもとでは対等ではないし、クリスにはっきりと物を言える子なんて一人もいないのよ。ましてメイドや護衛は……」


 それはそうだろうと思う。


「しかも、どちらかと言うと寂しい思いをしているし、私が城に来ている時だけでも、一緒に連れてこられないかしらと思って。そろそろクリスには淑女の作法を教えなければと思っていたし、私も先生として参加しては駄目かしら……」


 フェリシアはひたすらクリスを心配している。


「そうすればお母様にも都合がいいし。そうね、お母様に提案してみましょう」


 明るい顔になったフェリシアに、しかしマークが水を差すようなことを言う。


「リスバーンがオールバンスに追従していると見られているのはともかくとして、オールバンス、リスバーンに続き、レミントンまで王家と近しくなろうとしていると思われたら、他の貴族が不安に思うことは確かだろうね」

「それは考えすぎではないですか」


 ギルがマークに考えすぎを指摘している。オールバンスに追従ということは否定しなくていいのだろうか。同格のモールゼイと言えど、使っていて気持ちのいい言葉ではない。しかしギルは、


「俺は、それに父様は、いいと思っているから、オールバンスのやることに賛成するのだし、反対だと思ったら止めている。止めたことは表には出ないから、追従などという言葉が出てくるのだと思うが、風評を恐れて、すべきこと、やりたいことをできないのはおかしいと俺は思います」


 そう言い切った。


「リスバーンの次代は心が強いな」

「マーク、冗談にするには重い話ですよ」


 ギルはこのようにまじめな時もあるのである。


「では、私もフェリシアの後押しをしようか」


 何が「では」なのか。マークは突然そんなことを言いだして私たちを戸惑わせた。


「私も先生として参加しよう。何を教えたらいいかな」


 首を傾げて子どもたちを眺めているが、先ほど、四侯が王家に近付くと貴族がどうとか言ってはいなかったか。


「マーク」

「ほかの貴族が不満に思うだろうねと言っただけで、不満に思わせてはいけないとは言っていないよ。不満に思いたいなら思うがいい」


 とがめるようなギルに、マークは淡々と答えた。


「四侯の権力を削りたいなら削ればいいとさえ私は思っているよ。結界の魔石の補充、百歩譲ってそれは仕方ないだろう。しかし、内政、外政、そういったところまで私たちが中心でやる必要はあるだろうか。むしろそれは、我々から切り離すべきものではないのか」


 これはとても難しい問題だと私は思う。政治にかかわっているからこそ、この国を大切に思い、捨てられないという気持ちが生じる。自分に権力があるということも気分の良いものだろう。歴代の四侯はそうして国に囲われてきたのだろう。


 しかし、お父様のように自由になりたいと思う者もいる。レミントンのように、もう少し政治にかかわりたいと思う者もいる。


 お父さまに代わってオールバンスの当主になるのはまだまだ先の話だけれど、四侯の跡取りはこうしてみんな悩んできたのだろうか。その結果がこんながんじがらめな世界では笑うに笑えないけれど。


「にいしゃま、ギル、おやちゅ」


 物思いをリアの愛らしい声が破る。ふとテーブルを見るとだいぶ軽食や菓子が減っている。楽しくていつも以上に食べてしまい、慌てて私に声をかけたというわけだ。


「私たちは、リアたちがオレンジを採りに行っている間に少し食べたのですよ。気にせず食べていいですからね」

「あい! でも、もうおなかいっぱい」


 お腹をなでるリアのなんとかわいらしいことか。今さわってみたらぽんぽんだろうなと思う。


「ではそろそろお披露目の会場に戻りますか」


 私の声と共に、皆が立ち上がった。子どもたちも満足したようで、改めてオレンジを抱えなおしている。ちなみにリアは私に持たせたので自分は手ぶらである。ちゃっかりしている。


 しかし、いつも以上に動いたのにお昼寝の時間を過ぎたリアは、歩いているうちに眠くてふらふらになり、ハンスが抱え上げたらことりと寝てしまった。


「あーあー、リア様、いつもより頑張ったほうだよな」


 ハンスがリアをナタリーに手渡しながらそう言った。ハンスは護衛だから一応手を空けておかなければならないらしい。


「うむ。いつもならもっとはやくねむっている」

「私はもうおひるねなんてしないわ」

「クリスはごさいだからリアとくらべてもしかたがないぞ」

「なによ」


 殿下とクリスは、リアがいなくてもなかなかうまくいっているようだ。フェリシアが安心したようにほっと息を吐いている。


 リアは二歳だが、お披露目なんて主役がいないまま盛り上がって解散だ。もう一人の主役の私がうまく立ち回って、なかなか帰らない客を帰し、お披露目は終わった。


 その時になってようやっとやってきたのがおじいさまだ。


「ルーク! 遅くなってすまない。12歳の誕生日おめでとう!」


「おじいさま! リアは待ちくたびれてお昼寝してしまいましたよ!」

「まあ、リアは起きたら会えるだろう」


 本当はリアに会いたくて仕方がないのかもしれないけれど、血のつながっていない私もこうしてかわいがってくれる。私のことをぎゅっと強く抱きしめると、肩をつかんで顔を覗き込んだ。


「夏からこっち大きくなったなあ。しかしなんだ、この細い手は。少し剣をさぼっているのではないか」


 なぜばれたのだろう。ギルに言われてからまじめに練習するようになったけれど、さぼっていたことがあるのは確かなので、思わずぎくりとした顔をすると、おじいさまは、


「せっかく新しい剣をプレゼントに持って来たのになあ」


 ともったいぶる。北部はよい剣の産地なのである。


「ちょっとさぼってたけど、今はちゃんとやってます! 剣は! どこ?」

「ははは! ほうら」

「やった!」


 供の者がこっそり隠していた剣を渡された。すぐに振ってみたいけれど、重さだけ楽しんで、私はおじいさまの手を引っ張った。


「さ、寝ているリアを見に行きましょう。寝ていてもかわいいから」

「そうなのか」

「そもそもどうして遅くなったのですか?」

「リア用にとラグ竜を連れて来たのだが、これが言うことを聞かなくてな」


 それは危ない。


「リアはその、ちょっと動きが鈍いから、乱暴なラグ竜は危ないかもです」

「まあ、会わせてみれば相性もわかるだろう」


 危なければだめだと思いながら、私は早く早くとおじいさまを二階にせかすのだった。早くリアに会わせたかったから。




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― 新着の感想 ―
にぶくないでしゅ
[良い点] 何度も読み返してます! [気になる点] 何度、読み返しても、このフェリシアとクリス姉妹は図々しい子供達だなと思ってしまいます。ストーリーだと分かっているのですが
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