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エロス研究会  作者: 木枯 桜
相原縁、襲撃編
5/10

ep.05 其の女、悪意


「それで僕は何をすればいいんですか?」



先輩には勝てないと理解した時点で僕の判断は非常に早かった。



さっさと先輩には満足してもらって納得させよう。



先輩の様子を見るに恐らく思い付きではなく、計画的な犯行なのだろう。



僕の性格やバックグラウンドを知った上で封じ手を出してくるのだから、思い付きで対処しようとしても逆手に取られる未来しか想像できない。



ならば可及的速やかに先輩の願望を叶えてしまい解放してもらったほうが効率的だ。



「そうね……取りあえずは新藤君自身が理解している嗜好から教えてもらいましょうか」



「嫌です。僕にだってプライドがあります。明言しておきますが、先輩に教えた時点で僕の次の行動は苦しまない自殺方法を検索することです」



「そう。つまり被虐趣味はないということね」



あってたまるか。



「なら質問しましょうか」



「黙秘権は?」



「そのくらいはあげるわよ。良かったわね、優しい先輩で」



「ソーデスネ」



後輩思いの優しい先輩は後輩の恥部を曝け出そうとはしないがな。



「それなら早速質問ね。胸が好き?それともお尻が好き?」



「…………っ」



この女羞恥心がないのか!?



構えていた場所に来たボールなのに想像以上の攻撃力に思わず声が漏れた。



精神を統一しろ。



何かしらのリアクションを取ってしまえばそこから答えを導き出されてしまう。



やっぱりこの人は頭がいい。頭が悪いところが欠点だが。



“What”や”Why”ならば流すことは簡単なのに、的確に”Which”で聞いてくる辺り質問の定石を知っている。



「あらあら、ポーカーフェイスがお得意なのね」



当たり前だ。



意図を読み解くことができればその対策は容易い。



何の策も持たず戦場に出ることは死にに行くことと等しいのだ。



「かわいいわね」



「………………」



嬉しくないね。



男にとって【かわいい】とは褒める言葉であって褒められる言葉ではない。



その辺りはまだまだ甘い。



「なら……」



「……?」



相原先輩は右手をスカートの辺りでモゾモゾと動かし、何かを取り出した。



それは透明なアクリルケースに入った黒い何か、ヘアピンだった。



ヘアピンの針孔のような部分を軽く口で咥え、左手で耳上の髪を何度か手櫛で梳いていく。



納得したのかそのまま左耳を空気に晒したまま咥えていたヘアピンを右手に持ち、押さえていた髪を留める。



再びアクリルケースをスカートに戻すとこちらを一瞥して微笑む。



「あら?どうやら新藤君は女の子の髪を結う姿がお好みらしいわね」



「……生憎そんな趣味は持ち合わせていません」



「あらあら。もう口も聞いてくれないかと思ったわ」



「別に口を利かないわけではないです。ただ答えたくないことに反応しないだけです」



「そう。ならさっきの続きよ」



「その前に制限時間を設けましょう。そうでないとアンフェアです」



「クスクス。ルールに厳格な新藤君が制限時間を言わないから期待しているのかと思ったわ」



「冗談ですね。ただ失念していただけです」



「そうね……。巡回している教諭に見つかっても面倒だし一五分でどうかしら」



「長い気もしますが」



「片付けと正門を抜けるまでの時間を逆算すれば妥当でしょう?」



「まぁ……」



確かに言われてみればそうだ。



むしろ若干の猶予があるくらいでこの先輩にも良心があったのだな。



止めてくれればなお良いのだが。



「さて再開しましょうか」



「…………どーぞ。………………先輩?」



鐘が鳴り、すぐに攻め立ててくるかと思えば先輩はゆっくりとした動きで背後を取ってきた。



「気にしないで?抵抗されたくないだけだから」



「今更抵抗する気もありませんが」



「…………?」



何故か先輩の両手が両肩に添えられる。



「…………っ!」



意図が読み取れず困惑していると先輩は僕の右耳を噛んだのだ。



悪意のないそれはどちらかと言えば甘噛みと表現するのが正しいのだろう。



上唇と下唇で軽く抑え込むと強く噛み込まれた。



これは犬だ。子犬が構ってほしくてじゃれついて来ているのだ。



そう思い込み、心を落ち着かせる。



「……っ!それ……はっ!」



甘噛みを止めたと思えば耳上部にあるくぼみを舌でなぞり始めた。



立ち上がろう。



運が悪ければ舌を軽く噛むことになるだろうがこれは正当防衛だ。



そう思っても立ち上がることができない。



それまで添えられていた両手が両肩をしっかりと抑え込んでいた、



「く……っ」



耳の防護皮たる部分を舐めたと思えば舌を思いっきり耳の穴を舐め始める。



脳内にピチャピチャと水音が反響し、腰が抜けそうになる。



耳は聴音器官であって性器ではないのだ。



そんな正論を吐いても水音が常識や秩序を溶かす。



一体どれくらいの時間が経ったのか、見当もつかない。



漸く舐めることに飽きたのかと思えば今度は息を吹きかけてきた。



唾液で濡れた耳は想像以上に敏感になっていて、息の突き抜ける音と冷たさに身体が震える。



これはじゃれつきなんてものじゃない。



悪意を孕んだ愛撫だ。



「お気に召したようね。もう少し続けましょうか?」



そんな悪魔の嘲笑に散り散りになった理性を掻き集めて吐き捨てた。



「こ、ろしてやる……この女」


本日は調子が良ければ23時にep06を上げます

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