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エロス研究会  作者: 木枯 桜
相原縁、襲撃編
10/10

ep.10 其の男、激励



ベッドに腰掛けた琴音は兄である僕を不遜な顔で見下している。



そして僕はと言えばカーペットも敷かれていない床に正座させられている。



何故だ。



相原先輩には散々精神力を削られた上、意図の読めない告白をされた。



帰宅してみれば妹が何故か過去の交際歴を両親の目の前で暴露された。



反撃したと思えば何故か妹は数年ぶりに激怒しており自室に連行されてしまった。



なんだこの絵に描いたような不幸は。



「それで、静香」



「なんだよ。僕はお前に正座させられるようなことをした記憶はないぞ」



「はぁ……。あのね、どうして今こうして怒られてるかわかってる?」



「いや、勝手にお前のプリンを食べた記憶もないし他に怒られるようなことをした覚えもない」



「はぁ…………」



琴音の溜め息は重く深い。



だが本当に心当たりはないのだ。



文脈から察するに恐らく相原先輩が関係しているのだろうが、妹が激怒する理由と共通因子が見つからないのだ。



「いいや。とりあえず事態を正確に把握したいから時系列に沿って説明して」



「お前に説明する理由が……」



「うるさい。愚兄は言われた通り説明すればいいの」



「いや、だが……」



「うるさい。言わないならグループトークとSNSに悪意に満ちた脚色をして流す」



どうやら拒否権というものは存在しないらしい。



有無を言わせぬその物言いに僕は敗北した。



それからは時系列に沿って全てを暴露した。



そう、全てをだ。



兄としての尊厳を守るべく数ヵ所抜いて説明しようとしたのだが、看破され結局全てを吐き出した。



そして尊厳すら蹂躙した妹と言えばロダンの【考える人】のようになっている。



「うぬぬぬ…………。どうして…………先輩は…………馬鹿兄も…………」



所々言葉が漏れている様子から察するにどうやら何かを思考しているらしい。



「はぁ…………」



三度溜め息を吐いた琴音はこちらに向き直った。



「取りあえず話の全体像は分かった」



「なら早く部屋に帰れよ」



「私も戻りたいけど、でもこの馬鹿兄をどうにかしないと」



「どうにかってどういう……」



続けようと思ったが、踏み止まった。



なぜなら琴音がサイドアップに纏めた髪をクルクルと弄り始めたからだ。



一房を摘み、それを中指でクルクルと遊ばせるその行動は琴音が大変苛立っている時に行う。



何にそれほどキレているのかは分からないが、非常にキレていることは分かる。



「でさ、静香はどうしたいわけ?」



「どうしたいっていうのは何がだよ」



「はぁ。あのさ、道中は置いておくとしても結果論から言えば静香は女の子に告白されたわけでしょ?なら返事はどうするのかってことしかないでしょ」



「いや、そもそも、あれが告白であったかすら……」



「馬鹿なだけじゃなくて阿呆も併発してるの?」



尊敬すべき兄に向かってなんという物言いだ。


けしからん。



「相原先輩って基本的には大人だけど、恋愛に関しては小学生みたいな夢を描く乙女なのよ?」



何て不遜な物言いだ。



あとお前はそんなに仲良くなかっただろ。



「は?あのね、先輩の性格なんてたまにしか話さない私だって分かるくらい単純よ?」



お、おう……。



「あぁ!もう!面倒だなぁ!」



何を一人で勝手にキレているんだ。



「静香のせいに決まってるでしょ!」



「いや、どちらかと言えば僕は被害者……」



「は?あのさ、正直先輩の行動もどうかと思うよ?今時男子小学生でもしないような行動してさぁ!」



「そうだろ?」



「うっさい!けどね!馬鹿にも分かりやすく言ってあげるとね!」



「待て、その馬鹿とは相原先輩のことだよな?」



「馬鹿!そんな小さなことどうでもいいわ!」



いや全然良くないのだが。



「うっさい!つまりね!女の子が飛び降りるような気持ちで告白したのよ!それをね!くっだらない!プライドだの保身だので放置するなんて男じゃないって言ってるの!」



え……?



先輩が……僕に告白して……あれ……。



「別にね!私はお兄ちゃんが相原先輩と付き合っても断っても気にしないの!」



建前も感情操作もない琴音の感情に圧倒されてしまう。



「ただ私は!女の子の一世一代の告白を自分の為に袖にするようなお兄ちゃんが見たくないの!」



「そんな恰好悪い人が私のお兄ちゃんだっていう事実が許せないの!」



「僕は……」



「あぁ!もう!」



そう言うと琴音は窓を開け、お気に入りのダッフルコートとダウンジャケットを有ろうことか窓から放り投げた。



「あぁぁぁ!」



「うっさい!そんなにコートが大切なら早く取って来い!」



そう言って琴音は僕の手首を痛いほど握りしめ、階段を下っていく。



玄関の鍵を開けコートのように僕を放り投げ、ついでに靴も投げ捨ててきた。



「帰ってくんな!馬鹿兄!」



そう叫んで勢いよくドアを閉める。



次いでカチャリというチェーンを落とす音も聞こえてきた。



確かに今の僕なんかよりも琴音のほうがよっぽど男らしくて潔い。



そう思うと笑いがこみ上げてくる。



そうだな。



確かにここまで妹にお膳立てされて家に入ってしまっては兄失格だ。



とりあえず夜の肌寒さから身を守るためにコートを探してみれば、ダッフルコートは無事だった。



しかしダウンジャケットは庭に生えている金木犀の木に引っ掛かってしまっている。



恐らくあれを取ろうとすれば30分弱は時間を消耗するだろう。



僕は込み上げてくる笑いを隠しもせず、スマホで相原先輩のトークを開いた。



十一話は23時以降になると思います

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