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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生した先の世界で、俺は体を食いちぎられただけ

作者: えすえいち

 俺が目を覚ましたのは、森の中だった。

日本の竹の林なんかじゃない、俺の知っている木ではなく

どれもが太陽光を遮るようにいじわるに伸びている、そんな森だ。


そういえば俺はどうしたんだっけ。


学校が嫌でサボって私服でゲーセンへ行こうとした所までは覚えている。

2月にチャリの鍵が壊れて、新品に換えるのも面倒なので

取り外したままにしているんだが、それで警察に職質されるのも

面倒なので、人気のない土手のほうを走っていたんだ。そこまではいい。


確かその後で大きな音がして...


もしや、俺はあの土手で事故にでもあって死んでしまい、

ちょうど読んでいたラノベのように、ここに飛ばされてしまったのではなかろうか?


憶測をしていると茂みから何か物音がし始めた。


― 化け物だ。


息をひそめた。幸いその化け物はこちらには気づいてないようだが、

同時に物音がして、俺はそちらの姿を見て目を見開いた、人間のようだ。

短い鎧を着て、馬のような生き物にまたがり、兜からは金色か銀色に光る髪をのぞかしている

耳の長く、鼻先も尖っている、よくファンタジー作品で主役を導く種族のそれと同じだった。

「この辺りだ、見つかったらすぐに助け出せ」


その甲高い声の言葉はわからないが、何かを探しているようだった。

俺の安全を確保してくれさえすればいいな、と俺は願ったが、

先の怪物がいつのまにか彼らに躍りかかった。


「敵襲、各自防御をとれ!」

全員が盾を構えると、暗い森の中というのにまばゆい光がはっせられ、

化け物は跳ね返されたようにこちらに巨体を転がしてきた。


― こっち来んな

叫びたがったが、巨大な肩か背中が視界を覆った。

俺は下敷きとなって、化け物の重すぎる体重に、首から下を全て地面に押し込められた。

ばきぼきと音が鳴っている。元々俺は逃げられる反射神経はないし、

部活も当然やっていなかったほうなので、押しのける筋力も無い。

いくら頑張っても無駄、と脳裏に浮かんだが、これは俺がまだ短い人生で

聞いたことのある声で再生された、通っていた塾の堅物なあの教師だ。クソメガネと呼んでいた。


そんな時に怪物が立ち上がった。これはチャンスと思ったが、

怪物が立ち上がった時、俺は遂に動くことができなかった。

体に激痛が走った、バトル漫画でよく起こるあばら骨が折れたというやつか

それでも、藻掻くように転がることだけはできた

足も手も感覚がない。折れているんではなかろうか。

この行動がマズかったのかもしれない



化け物がこちらに気づいたからだ。

化け物は俺を見つけ、鼻先でつつき始めた。ぬめった鼻先と

湿った吐息がひたすら気持ち悪い。

そう感じた刹那、俺の体をそいつの牙が噛み始めた。


痛みがあったかもしれないが俺にはそんなことより

混乱した状況で頭の中に酸素が回っていなかったのかもしれない。

俺の視界は真っ暗になった。




しばらくして目が覚めると俺を呼ぶ声がした。あの種族だ。


「落ち着け、下を見るな、そなたは....?」

顔を覗かせながら、外国の言葉だろう、わからなくも、疑問系であることは確かだった。

目が覚めると柔らかさが体を包み、ぬめりが鼻面を、いや顔全体にぬめりを感じた。

シャワーを浴びないとと思ったが、俺を心配しているのは違うことのようで

俺は手で顔をぬぐおうとした。

利き手が動かない。よくみたら利き手の右手の先が無いのだ。

怪物に噛まれた時に失ったのか、血の気がサッと引いていく気がした。

小学校の頃、草野球でサードをつとめてた時にほめられた右腕。

ゲーセンでボタン連打するのも右手が肝心で、初めて女子と手をつないだのもこの手だ。

俺の人生の、右手でできたことが二度とできないのかと思うと、涙がぼろぼろとこぼれた。


俺は周りを見渡した。頭上を見れば、大きな生き物の骨のようなものが見えた。

先ほどの怪物が解体された.... 否、俺がその怪物の腹に居て、そこから外に出た際に

俺がたまたま生きていただけかもしれない。いま寝そべっているのも、

きっと食道か胃袋のような臓器なんだろうか、化け物の臓器は血だらけで、俺の体もそうだった。


そして俺は、俺の両足がすでに失われていたのを見たのである。


「ショック死するかもしれん、応急措置をしろ」


俺はあの種族に、何か熱湯を浴びせられるような光線を浴びせられ、そこで意識を失った。



  -了-

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