1.兄さん
ぼくには兄さんがいる。
頭はいいし、剣で兄さんに勝てる人はいないし、自分より他の人のことを考える優しい人だ。
そしてぼくとたくさん遊んでくれた。
ぼくたちの仲はとても良かったと思う。
だって仲が悪かったらずっと遊んでなんてくれないだろうしね。
ぼくはそんな兄さんが好きだ。
憧れてるし尊敬もしている。
ただ一つ、ぼくたちは他の兄弟と少し違うところがある。
それは、血が繋がっていないというところだ。
兄さんと初めて会ったのは五年前でぼくが九歳のときだった。
ぼくが買い物から帰ってくると家に見知らぬ人がテーブルに座っていた。
ぼくはお母さんの客人なのだろうと思い、そのまま通り過ぎようとした。
だが待って、と母さんは言ってぼくをテーブルに座らせた。
ぼくが座ると母さんが話し始めた。
「レオン、これから大事な話をするからよく聞いて」
「うん」
「母さんの隣に座ってる人があなたの
兄になる人よ」
ぼくは驚いた。
でも同じぐらいに嬉しかった。
もともとぼくは兄さんがほしかった。でもあきらめていた。
だって一人っ子で兄ができるなんてないからだ。
でも実際、前に兄さんがいる。
ぼくはなんだか嬉しくなって挨拶をした。
「はじめまして、兄さん」
「はじめまして、レオン君」
これから兄さんができるのだと思うととても嬉しかった