突然の手紙
今日は短いです。
二週間以上、秋の田園風景の中を旅をしてきて思うのは、南家領は豊かな穀倉地帯だということだ。それに加えて野菜の栽培や牧畜も盛んなようで、食糧事情がとても良い。
これから鉄道の工事も始まるようだが、この主要街道を始め交通路の整備にもう少し力を入れたらさらに発展していくことだろう。
キリ君やカズマの話し合いからもそんな感想が漏れ聞こえていた。
そんな南家の領都に馬車は入って行こうとしている。
これまでにない数の家々が建ち並ぶ中、町の喧騒が聞こえて来た。人や馬車の行き交う様子、商店が立ち並ぶ街並みを見ていると御所のある都の風景とよく似ている。ただレンガ造りのビルが少ないということが都とは違うところだろうか。
「未希さま、ここなら地ビールがあると思いますよ。」
サラが私を励ましてくれる。今まで通って来た町や村には清酒はあったのだがビールはあまりなかったのだ。大きな町でも都で見かけたビールが置いてあるだけで、日本で売っていたような地元特産のビールをつくっていないようだった。ここにあるといいのだが・・・。
でもなかったら他のお土産を探せばいいのかもしれない。これだけ商店が立ち並んでいるんだもの、南家の特産品が何かあるわよね。
私たちが宿につくと、先ぶれでこの宿に早めに到着していた近衛兵の一人が、キリ君に手紙を持って来た。
「殿下、都の桂樹姫巫女様からです。」
「伝書鳩か?」
「はい、そのようです。」
カツラさんは無事に都に着いたんだね。良かった。それにしてもだいぶ急いで帰ったんだね。それに都について早々に伝書鳩を飛ばさないとここまで届かないよね。いったい何の手紙だろう。
「未希、一緒に来てくれ。」
手紙を開いて読んでいたキリ君が、難しい顔をして私を自分の部屋へ連れて行った。
誰にも入らせないようにしたので、部屋の中が私とキリ君の二人だけになる。
「何なの?いったい。何か起きた?」
「姉さまが倒れた。この手紙は封蝋は姉さまのものだが、征四郎からだった。」
「え?!大変じゃない。事故?病気?」
「医者が言うには、過労だそうだ。命には別状ないだろうが、旅の最後に熱が出たようで、やっと都に帰れたと書いてある。」
何もかもの疲れが出たんだね。カツラさん頑張り屋だからなぁ。
「それに予言書が新たなる予言を告げたらしい。緊急事態だと書いてある。二人だけで飛翔を使って戻って来いとも。」
それを聞いて事態の急激な変化を感じた。なんだか嫌な胸騒ぎがしてくる。
私は何かが音をたてて壊れていくようなおかしな予感がしていた。
何かが変わってきているようです。