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未来予言書を拾った女の子  作者: 秋野 木星
第四章 天子集会
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変化

その日の夜のことです。

 夕食にはリグランド国の人たちが加わるので、早めに談話室に集まって欲しいと言われた。サラとマユが二人がかりで着付けをしてくれた天樹国の着物で今夜は夕食だ。

天子歓迎会以来の着物だからちょっと緊張するなぁ。

部屋に入る前にミミとタチアナさんに会ったので、一緒に中に入った。中には私たち以外の人たちがもう全員揃っているようだ。

あっいた。やっと叔父さんを見つけた。叔父さんも今日は着物だね。

「叔父さん、今日はどこ行ってたの? キリ君と一緒に叔父さんとカツラさんを探してたんだよ。」

私がそう言うと、叔父さんが「ちょっとなぁ~。」と言って目をそらした。カツラさんを見ると真っ赤になってうつむいている。

えっえっえ、ずっと二人一緒だったとか? 外交会議にでも出てるのかと思ってたよ。

ちょっと、これどーゆーこと?

しかしエメンタルの人たちもこっちを見ていたので、それ以上の追及はできなかった。


『未希さん、こちらへどうぞ。』

タチアナさんが助け舟を出してくれたので、ソファに座らせてもらう。キリ君が私の目を見て頷いて、ジュースを取りに行ってくれた。

「桐人殿下ってカッコいいね。クールで近寄りがたくて。天樹国でも女の子に人気だもんね。」

ミミが私の耳元でこそっと囁くけど、私にとってキリ君はそう言う認識ではなかった。キリ君との最初の出会いは、私たちを睨んでいた仏頂面だったからなぁ。マー君と話している時はいかにも救いがたい男子って感じでバカやってるし、カツラさんといる時は大人ぶってるつもりだろうけど姉さまに甘えてる末っ子の顔をしている。事が起こって一緒に助け合ってる時には焦りの顔、悔恨の顔、必死の顔、いろんな顔を見て来た。カツラさんにかわって政治の仕事をする時は冷静で押しの強い所も見せるから、そう言う面がクールだと言われているんだろうか。でも近寄りがたいという印象は一度も持ったことがない。


そういえば、最初はこんな怖そうな人と短い時間でも一緒にいたくないって思ってたんだった。それがどういう訳か、都に来てからなんだかんだと長い時間一緒にいるね。

旅に出てからは朝から晩まで一緒だ。ずっと一緒に食事をしてるからキリ君の好きなものも嫌いなものもわかってる。キリ君の方も、ほら、私の好きなパイナップルジュースを持って来てくれてる。

「はい。少な目にしといたよ。」

「ありがと。」

今夜は着物だからトイレのことも考えてくれてるみたい。・・・キリ君は結婚なんて言ってたけどもう結婚して何年も経ってるって雰囲気だよね。いや、甘い感じはないから共に苦楽を乗り越えて来た戦友って感じだろうか。


 私がいろいろ考えながらジュースを飲んでいると、扉が開いて王様とお后様が入って来た。後ろには王子様と王女様もいる。

おおーーーっ、おとぎ話の世界がやって来たよ。シンデレラの舞踏会みたいだ。

きらびやかなドレスを着たプリンセスが目につく。可愛い。こういうひらひらのドレスって、女の子の憧れだよね。私とミミちゃんは、ぼうっとドレスを見ていて言葉もない。


オマーンさんが立ち上がって、リグランド国の四人の人たちに歓迎の言葉を述べている。海賊なのに綺麗な英語を喋ってる。

私も英語は少しは話せるが、会話のスピードについていけません。

でも名前はわかった。チャールズ・アインコート卿・・・デューカって言ってるから公爵なのかな。マンガで出て来た絵の上手なあの人はデューカ、公爵だったよね。このおじさんは王様じゃなかったようだ。

通訳の人もこの方はアインコート公爵で、国王の弟さんだって言ってる。へー、王様じゃないけど、王族の人なんだ。


『こちらは、私の娘のリリアン・アインコートです。』

うん、このぐらいの英語はわかるよ。ふーん、リグランド国の人たちは親子なのか。

『リリアンと呼んでください。よろしくお願いします。』

恥ずかしそうにリリアンが呟く。この人は私よりも年上に見えるけど大人しそうな人だ。輝くような金髪で碧眼といういかにも西洋人らし・・いや西国人だ。


もう一組の母と息子だというリグランドの天子は、チャーチという言葉が聞こえたから教会に転移して来たらしい。お母さんはローレル・ショー、息子さんはエリック・ショーと言っているエリックは15歳だと言っていた。叔父さんが出身地を聞いている。二人がアメリカ人でニューヨークから来たことがわかると、ローレルさんとエリック君と叔父さんの3人で弾丸地元トークが始まった。

みんなポカンとした顔で3人を見ている。


『わかったよ。そのくらいでいいかい? そろそろ食事にしたいんだが。』

オマーンさんの大きな声で、3人も我に返った。叔父さんが失礼しましたと皆さんに謝っている。叔父さんが2年間住んでいたニューヨークの人たちか。私もちょっと親近感が湧いてきた。

『未希っ、僕はエリックって言うんだよろしくね。』

『初めまして、未希です。よろしくお願いします。』

エリックがエスコートに来てくれたので、一緒に食事室に向かった。ひょろりと背が高くて、金髪で顔中にソバカスのあるエリックは、やんちゃな男の子って感じだ。Tシャツを着てスケートボードにのって街を走りまわるのが似合ってる。この王子様服は本人にとってどうなんだろうね。


『その服似合ってるねっ。』

私が笑いながら言うと、私の意図がわかったのかエリックは満面の笑みを浮かべた。

『ハハッ、僕は王子だからね。ここだけの話、窮屈でたまんないよ。』

後半の声を潜めて言った言葉はわからなかったけど、エリックの言いたいことはわかった。

二人でクスクス笑っていると、キリ君とリリアンさんが私たちの方を見て顔をしかめている。

ん? 何かあった?

キリ君に目で問うと、困ったやつというように頭を振られた。

キリ君が優しくリリアンさんに話しかける。するとこちらを見ていたリリアンさんも恥ずかしそうな笑顔をキリ君に向けて一言二言話しているのがわかった。


・・・チクリと胸が痛む。あれ?なんで?


朝もキリ君と植物園のお姉さんが笑いながら話しているのを見て疎外感を感じた。何だろう、なんか変な感じ。キリ君が女の人に話しかけるのが嫌なのかな。

・・・そんな理不尽な。

気にしない気にしない。キリ君の方を見ないことだ。

私は真っすぐ前だけ見て、食事室の決められた椅子に座った。

椅子を引いてくれたエリックに『サンキュー。』と言うと、気取った王子様スマイルで『(ユー アー )ウェルカム。』と返された。エリックって面白そうな人だ。私も英語を勉強してエリックと話せるようになりたいな。元の世界に帰ったら、また叔父さんに英語を習おう。


あ、でも帰ったらエリックともう会えないのか。

・・・そうかサラやマユ、それにカツラさんやキリ君にも二度と会えないんだ。

家族に会いたいから早く帰りたい。そのことばかり考えてたけど、私たちが帰るということは、この世界の人たちと会えなくなるっていうことなんだね。



未希・・今更ですが、いろいろと気づくものがあったようですね。

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