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更なる陰謀

お疲れ様です。

 翌朝目が覚めた時は身体がだるかった。昨日は怒涛の一日だったものね。

パレードに西家の陰謀解明に歓迎会、よく動き回った。運動会に匹敵する疲れだよ。歓迎会が終わった時には瞼が閉じそうだった。目を閉じると大勢の人たちの顔と名前が浮かんだり消えたりする。ハッキリ言って誰が誰だか全然覚えられていない。次に会う時には胸に名札でもつけといて欲しいな。


サラが用意していてくれた軽食を食べて、寝る前に西峰徹から届いていた薬をアサギリに渡す。アサギリの従兄弟の一人が薬学を研究しているらしい。お父さんのトコロさんも学者だから研究畑の子どもが育つんだね。他にも二人の従兄弟が違う研究所につとめているそうだ。これがどんな薬なのか・・何か北家謀略の証拠となるものが出て来て欲しいものだ。


朝ご飯は西風だった。スクランブルエッグにカリカリベーコン。パンにスープに果物だ。最後に出て来たミルクが美味しかった。私があまり美味しいというので、コーヒーを飲んでいた叔父さんも飲んでみたぐらいだ。

「やっぱり自然豊かな国で育った牛の乳は味が違うんだろうな。」

叔父さんも満足していた。

なんか甘みとコクがあるのだ。食べている草や暮らしている環境がいいのかもしれない。


 今日は一日ゆっくりできるらしい。

カツラさんたちは午後の国会開催に向けて準備が山積みらしいので、私と叔父さんは食後の散歩にと御所の近くの町をぶらついてみることにした。

ところが思ったようには散歩が出来なかった。濃紺の髪をした大勢の使徒を連れて歩いていると私たちが天子だということがすぐにわかってしまう。徐々に人が集まり始めたので、危険だということでハヤテに御所に帰ることを促された。・・・有名になると町も歩けなくなるんだね。


帰る道々、遠巻きにしている沿道の人たちに目をやると、赤や緑の髪の人たちを見かけた。

「叔父さん、あそこの人の髪を見てっ。凄い色に染めてるね。」

「本当だ。赤毛はわかるけど、緑はさすがにないぞ。何を主張したいのかねぇ。」

私たちの疑問ににアサギリが答えてくれた。

「征四郎さま、あれが外国人ですよ。赤毛はリグランド国の商人で、緑毛はエメンタル共和国諸州の人です。」

「赤毛は、って国中の人が全員赤毛なの?」

「はいそうです。リグランドでは国民は赤毛で貴族は金髪ですね。エメンタルの方は国民が黄緑色の髪で部族長筋の人たちがあそこの人のように濃い緑です。」

「「へぇ~。」」

ところ変わればいろいろな髪色の人がいるんだねー。


 御所に帰って来て、庭の方を散歩しながら部屋へ帰ることにしたのだが、遠くの回廊に立っている二人の人間がもめているようだったので、何気なく遠目を使ってみた。

「叔父さん、あの人たち西家の人みたいだよ。」

「おっ、やっとあれが使えるな。」

二人で遠目と聞き耳を使ってみると、とんでもないことが話し合われていた。


「だから、そんなはずはないと言ったって、事実なんだからしょうがないだろ。あまりに首相就任への打診が遅いからおかしいと思って、さっきわざわざ姫巫女の執務室に行ったんだ。そうしたらナナが西峰様が何故ここにいるんですか?と聞くんだよ。姫巫女も殿下も午後の国会の準備に出ているとのことだ。これはどういうことなんだ?!」

カンカンに怒っているのは昨日会った西峰修二だ。かたや西峰徹の方は落ち着いたものだ。

「ふむ。南家の南枝辰雄に話を持って行ったんでしょうか。伯父さんが首相になるにはもう一手必要みたいですね。でも南家なら巻き込みやすいでしょう。別に首相にならずとも鉄道は通せますよ。」

「お前は・・俺がどれだけこの日を待っていたと思ってるっ!北家の天下で辛酸をなめ続けて何十年、やっと日の目が巡って来たというのにっ。もう我慢ならん。北家の血を引く邪魔な姫巫女を廃して政権も御所も乗っ取るぞっ。」

「伯父さん・・・その直情的な考え方は止めて下さいよ。そんな乱暴なことをしなくても、人が思いもつかないような不幸な事故は起こってしまうものです。」

静かに言った西峰徹の顔つきに何を見たのか、当主の怒りは収まったようだった。


私たちは、あまりに酷い話に呆然とした。そして、だんだんと怒りが湧いてきた。

「ふーん。人が思いもつかないような不幸な事故ね。叔父さん、それは誰にでも起こるものじゃないかしら。」

「そうだな。例えば爆破の練習をしていて手が滑ったとかな。」

「一気に息の根を止めるのは親切すぎるわ。まずは、利き手からね。」

「未希・・・お前、意外とエグイな。」

「ふふふ。」


部屋に帰り、サラに昨日の地味な服を出してもらった。今度は髪だけでなく口も覆ってリュックサックに入れていたサングラスもかける。

ふふふん。ヒーロー参上!


 私と叔父さんは遠目を使って西峰徹の位置を探し当てると、飛翔を使って飛んでいった。都の路地裏を誰かに会うためか馬車に乗って移動していた所に追いついた。

「未希、ちょっと待て。もしあいつが悪だくみを実行に移すんなら、一網打尽にした方がいい。」

「それもそうね。」


しばらく様子を見ているとその馬車は一軒の寂れた店の前に止まった。私と叔父さんはそっとその建物の屋根に降りる。そこで聞き耳を立てていると、男たちの下卑た笑い声と西峰徹の冷静な声が聞こえて来た。

「そんなことを言ったって、この前も天子が汽車に乗ってこなかったじゃないか。天子を血祭りにあげられるなんてワクワクしてたのによ。」

叔父さんと私は思わず顔を見かわす。汽車に乗ってたら私たちは死んでた?!

「いや、今度は国会が行われている建物に乗り込んでもらうんだ。その点は約束する。必ず姫巫女と殿下を仕留めてくれ。失敗は許されない。わかったな。」

「ヒッヒッ、わかったよ。前金は貰ったんだから、言う通りにしますよ。しかしあんた達もとんでもないことを考えるね。俺たちより悪がいるなんて。世の中捨てたもんじゃないや。」


「どうする叔父さん。ここでやっちゃう?」

「いや、国民にこいつら全員の悪だくみを晒してやった方がいいな。国会の建物の警備員も誰と誰が怪しいのかわからないじゃないか。」

「なるほどー。じゃあ、キリ君達に知らせに行くとしますか。」

その時、「ヤバいっ。間に合わないかも・・。」と微かに声を上げながら裏口の方から走り出て来た男が一人いた。

「誰? あの人。」

「要注意人物だな。追跡しようっ。」


私たちは、空から男の後を追った。その男は苦しそうに横腹を押さえながらも休むことなく駆け続けた。

その男が駆け込んだ建物は立派なレンガ造りの庁舎だった。

「えっ、何であの人はこんな建物に出入りできるの?」

私たちが聞き耳をたてると、男が息遣いも荒く話す声が聞こえた。

「・・・と言うことなんです。早くっ、殿下に連絡をっ!」

「しかし、本当にそんな大それた計画があるのか?西家がそんなバカなことをするわけないじゃないか。当主は黙っていても次期首相だぞ。」

「課長っ。本当に事が起こったら、あなたの責任問題になりますよっ。」

「バカヤロウ。何も起こらなくても責任問題だ。とにかくこの事は他言無用だ。お前は何も知らなかった。いいなっ!」


「はぁ・・・天樹国も役所の事なかれ主義が蔓延してるんだな。」

「人間どんな世界で生きていても同じなのね。でもこの人は公安庁のスパイの人だったみたいね。」

「とにかく僕たちは殿下に報告だ。」

「頑張ってこの人の代わりをしてあげますか。」

私たちは空を飛んで、御所に戻って来た。

二階の廊下の窓からこっそりと忍び込み部屋に帰ってみると、キリ君とカツラさんがびっくりして私たちの姿を見ていた。

これは大変なことになって来ましたね。

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