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未来予言書を拾った女の子  作者: 秋野 木星
第一章 予言書
3/66

当たりを阻止せよ

秘密基地から・・。

 家に帰ると、カレーの匂いがしていた。

「うそっ!まさか、また当たったの?」

玄関にランドセルを放り出して、リビングの扉を開ける。

「・・・カレーだ。」


うちの間取りはリビング・ダイニング・キッチンがL字型にオープンに繋がっているので、扉を開けただけでお母さんがカレーの鍋を煮込んでいるのが直ぐに目に入った。

「お帰り。カレーは駄目だったの?晴くんが今日はカレーにしてくれって言うんだもの。付き合ってやって。」


『晩御飯は晴信のリクエストでカレーになった。』


私は力なく首を振る。

「ううん。カレーが嫌っていうわけじゃないの。いいよ、それで。」

リビングから玄関に戻ってランドセルを肩に掛ける。二階に上がろうとしたら、リビングに置いてある電話が鳴った。

「あら、はい。ちょっと待ってね。」

お母さんが出たようだ。でも待ってっていうことは・・?晴信か私に電話?

「未希ーーっ。南ちゃんから電話ーーっ。」

南ちゃん?・・・まさか。


「はい、変わりました。」

「未希・・あれ当たっちゃったよ。予言。」

「はぁー、やっぱり?うちも帰ったらカレーが出来てた。」

「今日、塾の先生が体調が悪くてお休みになったの。そしたらお母さんが大賀ランドの割引券があるからプールに行こうって言って、今準備をしてるとこなの。」

「・・・マジ?」

「私はプールだからいいんだけど、佳菜ちゃんは病院だったでしょ。ちょっと心配でさ。」

「そうか。『おばあちゃんと一緒に病院へ行く。』だったもんね。わかった。ちょっと自転車で佳菜ちゃんちに行ってみる。」

「お願い。じゃ、お母さんが呼んでるから切るね。」

「うん。楽しんできてね。」


南ちゃんとの電話を切って、二階の自分の部屋へ行く。服を着替えてから自転車の鍵を持ってまた下に降りた。

「お母ーさん。ちょっと佳菜ちゃんちに行ってくる。」

「わかった。暗くならないうちに帰るのよー。」

「はぁーい。」


自転車で水溜まりを除けながら、佳菜ちゃんの家に向かって走る。

道沿いにタクシーが止まっていたので、ドキッとした。タクシーの後ろ側を回って佳菜ちゃんちの玄関前に行ってみる。

すると佳菜ちゃんとおばあちゃんが玄関から出て来た。

「未希ちゃん。予言が当たっちゃったね。」

「大丈夫?おばあちゃんどっか悪いの?」

「病気じゃないのよ。検診。うちのお母さんの都合が悪くなったから、代わりに塾が休みになった私が付き添いで行くことになっただけ。」

それを聞いて身体から力が抜けた。

「よかったぁーー。南ちゃんも心配してたから・・。」

「ということは、南ちゃんはプールなんだね。」

「うん、そう。」

タクシーから佳菜ちゃんを呼ぶ声が聞こえたので、詳しいことはまた明日ということにして佳菜ちゃんは出かけて行った。


自転車に乗って家に帰りながら、なんだか腹が立って来た。みんなしてあの予言書に振り回されているみたいだ。よくよく考えたらただの八つ当たりだとは思うのだが、安心した反動で身体の底から湧き上がってきた苛立ちが収まりそうもなかった。


家に帰って自分の机の前に座ってから、私は予言書に向かって吠えたてた。


「『未希は宿題をするが間違える。』ですってぇ?断固としてその予言を阻止してやるっ!」


私は算数の宿題を気合を入れて片付けた。何度も検算をしてニンマリと挑戦的な笑顔を浮かべる。

フフフフ、これでよしっ。

明日の用意をして、ランドセルの中を指さし確認していると下から「ご飯よー。」と呼ばれた。

カレーか・・・いやカレーは好きだ。特に夏野菜のカレーは具だくさんでいいと思う。でも予言されるとなんだか楽しみがない。誰かの言いなりになって動いているような違和感があるのだ。


ご飯の後でテレビを観ていると、また電話が鳴った。

「征四郎叔父さんだ。」と私が言うと、「昨日来たばかりだから違うわよ。」とお母さんが言う。

「どっちでもいいから出ろよなー。」と晴信がブツブツ言いながら電話に出てくれた。

今いいとこなんだから・・・違いますように。

「姉ちゃん、電話。叔父さんが夏休みにどっか連れてってくれるって。」

ガーン。もう、叔父さんったらアメリカにしばらくいたからこの人気のドラマを観てないのね。


私はしぶしぶと受話器を取った。

「こんばんは。未希です。」

「ああ、未希か。やっぱりぼんやりしてるな。なんか悩みでもあるのか?」

「ぼんやりって、今テレビ観てたからよ。」

「そうか。それならいいけど。晴信にも言ったけどこの夏は長期休暇が取れそうなんだ。皆でどっかに遊びに行こうぜっ。」

「それはいいけど、他に遊ぶ友達がいないの?」

「痛いとこつくなお前。・・二年間もあっちに行ってたからツレと連絡が取れないんだよ。せっかく仕事の狭間が出来て長く休めるのにさぁ。」

23歳で会社から海外研修に出してもらったエリートの叔父さんだけど、遊び相手が姪と甥しかいないなんて・・。気の毒なことだ。

「いいよ。晴信はサッカーの合宿とかがあるけど私は夏休み初日から空いてるよ。」

「よぉーしっ。それじゃあ、21日の夜に泊まりに行くから。姉さんにそう言っといて。」

「わかった。・・そうだ。」

予言書のことを叔父さんに相談してみたらどうだろうか。

「ん?何だ?」

「いや、今はいいよ。また来た時に話しをする。」

「ふーん。いじめとかじゃないんだろ?」

「違うよっ、全然。」

「昨日も好物のエクレア食べてるのにぼんやりしてたからな。心配するじゃないか。」


へぇー、叔父さんは意外とよく見てるんだ。そう言えばお母さんが、4人兄弟の中で征四郎が一番人の顔色を見る。って言ってたな。お父さんは、そういう末っ子気質が外人との営業にも生きてるんじゃないか?って言ってた。どういう意味かはよくわからなかったけど、お母さんより先に私の悩みに気付いたもんね。


やっぱり叔父さんに聞いてもらおう。

あの予言書をどうしたらいいのか・・・・。


どうしたらいいんでしょうね。

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