持つべきものは友
友達に頼ります。
翌日、学校の帰りに南ちゃんと佳菜ちゃんを誘って秘密基地に行った。
本の中身を確かめてみたかったが、一人で読みに行くのが怖かったのだ。
「まあまあ、本なんだから噛みつきはしないわよ。」
「よいしょっ。本当に重たいね。それに何だか花のようないい匂いがする。」
南ちゃんは頼もしいし、本に触るのも怖がる私を見かねて佳菜ちゃんが三段ボックスから予言書を取り出してくれた。
「どこどこ?」
二人が本の表紙を開ける。
「えっ?何にも書いてないよ。」
「だね。真っ白け、ていうより薄黄色の紙だけじゃない。」
二人の言葉に、私も洞窟の入り口から中に入る。後ろから本を覗き込んでみると、やっぱり昨日と同じ文章が書いてあった。下の方には征四郎叔父さんが家に泊まることまで書いてある。
征四郎叔父さんはここに書いてある通りに昨日はうちに泊まった。今朝、私と弟の晴信が学校に行く時間に合わせて一緒に家を出たのだ。
「・・・書いてある。」
私がそう言うと二人ともどう言っていいかわからないような顔をして私の方を見た。
「そうか、私にしか見えないんだ。・・・やんなっちゃうな。」
見えないものを見えると言い張るのは、無理がある。私はそれ以上説明しなかった。溜息をつきながらページを一枚めくってみると、右側には『七月四日』という始まりで文章が書いてあったが、左のページは何も書いていない真っ白けの状態だった。
右のページに書かれている文章を読んでみる。
『七月四日 征四郎叔父さんと一緒に家を出る。学校へ行くと孝二はお休みだった。帰りに南ちゃんと佳菜ちゃんと一緒に秘密基地に寄る。予言書の文章を確かめる。未希にしか読めない事がわかった。南ちゃんは家に帰ってからプールに行くことになる。佳菜ちゃんはおばあちゃんと一緒に病院へ行く。未希は宿題をするが間違える。晩御飯は晴信のリクエストでカレーになった。夜に征四郎叔父さんから電話がある。夏休みになったら遊びに行く話になった。』
私が予言書を読んでいると、途中までは南ちゃんと佳菜ちゃんもふんふんと聞いていたが、私が二人の予定を言うと、申し訳なさそうな顔をして二人で顔を見合わせた。
「未希ちゃん、私達これからそろばん塾があるからそんな予定にはならないと思うよ。」
「うん。悪いけどうちのお母さんは塾を休むとお金がもったいないって言って怒るからね。」
気の毒そうに私を見る二人に、私も説明するのを諦めた。
「いいよ。気にしないで。そうだよね。昨日当たったのは、ただの偶然だよ。二人とも塾があるのに付き合わせちゃって悪かったね。」
「ふふ、でもちょっと面白かったよ。この本高そうだしいかにも予言書っぽいもん。」
優しい佳菜ちゃんが私をフォローしてくれる。
「これはここに置いといて、秘密基地の予言書っていうことにしよう。」
リーダー格の南ちゃんもそう提案してくれた。私もこの本を家に持って帰るのは薄気味悪いので南ちゃんの提案に賛成する。
また本を三段ボックスに戻して、三人で基地を後にした。最後に振り返って本を見ると、こっちをじっと見られているような気がした。
不気味ですね。