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「話してくれるよね?」
吸血鬼さんの目が本気です。
誤魔化しは許さねーぞ?と語ってます。
お遊びの時間はおしまいですか。
これはもう……白旗ですね。
真面目にいきましょう。
「……話すことは吝かではありません。ですがその前に確認したいことがあります。なぜ私達を召喚したんですか?何をさせようとしてるんです?」
「また質問?」
「これが最後です」
「……ふうん、教えてくれるのは加護だけ?スキルや称号も知りたいんだけどな?」
爛々と輝く赤い目。
これ、やっぱりスキル使ってますよね?
鎌をかけてみましょうか。
「回答次第で、と言いたいところですが。……私の口が重い理由、わかりません?」
じっと見返すと目の色が落ち着いた赤に戻りました。
威圧から色気へシフトしたんでしょうかね?
牙のチラリズムがエロいです。
「……君は本当に規格外だね。降参だ、確かに全く効いていない。勇者の卵や聖女見習い含め他の子達はあっさり魅了されたというのに」
「……魅了、ですか?」
「そう、魅了。雑音を最小限にするため、物事を円滑に進めるために少しね。おかしいと思わなかったかい?突然訳のわからない場所に来たというのに不安や恐怖でギャーギャー喚き暴れる者もなくお行儀よく列をつくって躊躇いもなく職業やスキルを答える。君の知っている彼らはそんな良い子だった?」
「……違いますね」
いくらお人好しだと言われる日本人でも十五人もいれば誰かしら声を上げるはず。
委員長、魔法使いの佐藤さん、勇者の卵の宮原くん。
この三人は間違いなく火種になったでしょう。
「……異世界出の勇者や聖女はレベルが低くても圧倒的な力があると聞いていたからね。君達が召喚された瞬間、この身が塵と化すことも覚悟で望んだというのに。……呆気なさ過ぎて驚いたよ」
そういえば吸血鬼さんは王族代表として先頭にいましたね。
魅了 が先か、聖女の悪しきものを浄化させる力が先か、見えない戦いがあったとは。
勇者にもそういう系のスキルがあるのでしょうか?
……ありそうですね。
レベル 1 なのに魔物をガンガン狩りに行くと言ってましたし。
「そうね、しかも真っ先に 魅了 されたのが勇者の卵、次いで聖女見習いだったのよ?後で職業を知って驚いたわ」
「軽薄なのは歓迎すべきだよ。手を下すまでもなく自滅してくれそうだしね。……そういえば、君は元の世界に帰れるかどうか聞かないんだね?普通真っ先に確認するものじゃないのかい?」
「……だって帰れないんでしょう?異世界召喚の様式美の一つに帰還不可ってありますし。王族が出迎えてる時点で察してます」
「諦めている、と?随分と淡白だね?普通ならそれでもギャーギャー喚いて詰め寄ってくるらしいけど?」
「騒いで結果が良くなるならともかく、そうじゃないなら無駄でしょう?それに、もし帰れるのならそのことを餌に職業を聞き出すんじゃないですか?それをしないということは、帰れる可能性がないんじゃないかな、と思いまして。あ、一応言っておきますけど帰れるものなら帰りたいですし、帰れないからといって、はいそうですかと割り切ってもいません」
「つまり?」
「諦めていないということです」
「……あなたどうしたの?ぼんやり加減が減ってない?」
「いや、好都合だ。なぜ召喚したか、君達に何をさせようとしているか、それに答えたら少なくとも加護は教えてくれるんだね?……それがどんな内容でも」
加護:暗黒神の守り
暗黒神って恐らく魔王サイドの神様だと思うんですよね。
魔王を倒すべく勇者や聖女を望む人達にしたら忌避したい神様でも魔族からしたら守護神みたいな扱いなんじゃないでしょうか?
ここは魔王領ですからサッカーで例えるとホーム、つまりそこまで隠さなければならない加護ではない気もします。
でも 異世界言語 のマイナー版だと思っていた 意志疎通 が五本の指に入るようなレアスキルだったんですよね。
吸血鬼さんの反応から 話す、聞く、書く+意思のあるものと会話ができる スキルっぽいんですが、そうするとこの 意志 って実は誤字じゃないんですかね?
読み書きいまいち系スキルだと思っていたから気にしてませんでしたけど誤字じゃなければどういう事なんでしょう?
意思と意志。
後で確かめる機会があればいいんですが。
というか多分魔族達にも加護がありますよね?
それって 暗黒神の守り だったりしません?
もしそうなら同じ加護ということで親近感を持ってくれたり、クラスメイト解放に繋がってくれたら嬉しいなー、とか考えてしまいますが流石にそれは甘すぎますか。
それよりも。
吸血鬼さんとサキュバスさんが口を挟むことなく待ってくれているのが気になりますね。
わざわざどんな内容でも?と確認を取るくらいですし相当ヤバめな内容なんでしょうか?
世界征服、人類皆殺しとかだったらどうしましょう?
魔王ですからあり得ないことはないですよね。
話を聞いた上でお断りは可能なんでしょうか?
問答無用で戦場に放り込まれるなんてありませんよね?
うーん。
もし 暗黒神の守り が此方側でもヤバい加護ならそれを盾にクラスメイトの安全を確保、そのまま人族が治める国へ逃亡……するのは難しいですか。
外は見敵必殺の世紀末。
もちろん殺されるのは私達。
現状詰んでるんですよね。
まず地図がない、歩いてたどり着ける距離に人族の国があるかもわからない、魔王さまの紋章を掲げて歩いても、殺さなければいいよね?的な感じで半殺しにされる可能性がある、クラスメイトのスキルでワンチャン行けるかも知れませんが、リスクが大きすぎますよね。
……駄目です。
私の頭では良策が思い付きません。
とにかく話を聞いてみましょうか。
「はい、私の加護をお話しします。……どんな加護でも文句は言わないでくださいね?」
「ええ、もちろんよ」
「……では、始めようか。まずこれを見て欲しい」
そういって吸血鬼さんが懐から取り出したのは地図。
大海原に囲まれた猫の顔みたいな形の大陸を中心に、三つの大陸が描かれていました。
……ちょっと待ってください。
地図って、自分の国を中心に描かれることがあるって聞いたような?
ま さ か。
「ここが、魔王領。人族は暗黒大陸や魔王大陸と呼んでいる」
吸血鬼さんが指差したのは猫の顔っぽい大陸。
…………。
アカン、逃げられへんやん。
見たことがない桁のブクマやアクセス数。
ランキングにも入ったようで驚きました。
ありがとうございます。