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魔王領。

悪の親玉の本拠地。

魔族や魔物がわんさかいる場所。


…………。

まさか。

ここ、魔王城だったり、しませんよね?

ラノベだったら王城の地下に儀式を行う場所がありますけど、そこまでテンプレじゃありませんよね?

召喚した異世界人の中に天敵であろう勇者や聖女が居てもおかしくないのにそんな軽率な真似するわけないですよね?


磨きあげられた調度品。

輝くシャンデリア。

上質な革のソファ。

テーブルを彩る見事な細工。


…………。

大丈夫。

魔王城はきっと蜘蛛の巣とか割れた窓とかおどろおどろしい雰囲気満載の城に違いありません。

そうですとも。

自分の懐に爆弾抱え込むような魔王がいるわけないです。

どうかそこまでアホな魔王じゃありませんように。



「……また考えてる。他の子達を助ける算段をつけているのかな?それともここから逃げ出そうとしている?……君なら逃げ切れるかもしれないけど他の子達の扱いは卑劣なものになるからね?」


「あまり脅すのはどうかと思うわよ?このぼんやりさん今のところ敵対心がまるでないもの。下手に警戒されては此方が不利だわ」


「最低限の警告は必要だろう?上級魔族としても甘く見られるわけにはいかない」


「その割には実力行使しないのね?」


「する必要がないからね。……今のところは」



美形の真顔が怖いって本当なんですね。

しかも目の輝きが増すほど美形度が上がっているような?

流石異世界何でもありです。

それにしても不思議ですね。

外に出たら世紀末感マシマシでヒャッハー!オラオラやんぞコラって感じなんでしょうがこの二人は意外に紳士的というか穏便なんですよね。

進んで喧嘩を売るようには見えません。

クラスメイトが 強制睡眠 とやらで捕らえられていますけど今のところ危害を加える気は無さそうですし。

これが上級魔族たる所以なんでしょうか?

それとも魔王の方針?

DVはダメ絶対!なので少しは安心ですかね?

っていうかこの二人のどちらかが魔王なんてオチじゃないですよね?

……違いますよね?

もしそうだったら心の準備が。



「……あの、質問いいですか?」


「どうぞ」


「失礼ですがあなた方のどちらかが魔王さまじゃないですよね?というか魔王さまって性別あるんですか?あと大事なことなんですが種族はアンデッド系だったりします?しませんよね?大丈夫ですよね?」


「……随分と切り込んでくるわね。あなたもう少しよく考えてから口を開きなさい。でないと場合によっては殺されかねない質問よ?まぁ、あなた規格外みたいだからのほほんと生き残りそうよね。それと、陛下の事はむやみやたらと話すことではないし話せないわ。……けれど誤解させるのもあれだから一つだけ。私と彼は陛下ではないわ」



セーフ!

そうですよね。

魔王はもっと野性味溢れるイケイケどんどんな感じでしょうし。

いえ、もしかしたらデコピン一発で死ぬくらい弱いって事もありますね。

やっぱり自殺願望があるんでしょうか?

天敵を召喚するくらいですから死に急いでいる可能性がありますよね?

ハッ、もしかして 癒しの手 は魔王を癒すためのスキル?

私のこの手は揉んだら疲れがとれるゴッドハンドに進化してたりします?

もみもみ。

……残念、違うようですね。



「陛下にお会いしたいの?」


「ええと、まぁそうですかね?会いたいか会いたくないかで言えば会ってみたいです。あっ、でも今すぐってわけではなくて、そのうち会えたらいいな、ぐらいで。いえ、別に会ってどうこうというのは無いんです。ただどんな方なのかな、と思いまして」



パッと思い付くのは もっさーふっさーの獣系魔王、もしくは 筋肉ムッキー腹筋バッキーお姫様抱っこだって余裕系魔王、はたまた ボク、悪い魔王じゃないよ?ぷるぷる系魔王、おんどりゃーわれいてこましたんぞー系オラオラ魔王、それとも フッ、我の美しさに言葉もないか?系ナルシー魔王、でもやっぱり フハハハハッ!弱い!弱すぎるぞ人間ども!!系魔王が一番私のイメージに近いですね。



「……そうね、陛下にお会いするのは難しいかもしれないけれど、あなたの事は先程からご覧になってるわ。あのスライムを通してね」



爪の先まで美しいサキュバスさんが天井を指差すとスライムがうにょにょんとアピールしてくれました。

可愛い。

とてもエログロ選手には見えません。

この世界のスライムは温厚なのかもしれませんね。

そ れ よ り も。

再び聞き捨てならない言葉が。

陛下がご覧になっている?

陛下って魔王の事ですよね?

あれ?

もしかして二人が丁寧だったのは魔王が見ていたからですか?

じーっとスライムを見ていると頭の中に聞こえる声。



《……フク、ヘン、フク、ヘン》


「あの~、もしかして私の服装を変だとディスっているのが魔王さまだったりします?」



思わず二人に向き直り聞いてみるとあら大変。

特に吸血鬼さんの顔が険しくなっています。

さ、流石に ディスる は不敬すぎましたかね?



「……君、モンスターテイマーか?それともサマナー?黙っていたのはゴーレム達を使役しようとしていたのか?」


「ちょっと待って、答えを急ぎすぎよ?言語理解系のスキルかもしれないじゃない。ねぇ、ぼんやりさん?質問に答えたのだからあなたの事も教えてくれないかしら?」



何でしょう?

魔王さまを貶したと思われているのではなさそう?

テイマーとかサマナーってことはスライムの声が聞こえたのが原因?



《……フク、ヘン、シヌ?》


「え!?私死ぬん!?、じゃなくて、殺されるんですか!?」


「……は?」


「殺さないわよ?話が聞きたいだけ」


「でもスライムが フク、ヘン、シヌ? って!あれ魔王さまの言葉なんですよね!?」


「……陛下はそんな片言ではない。恐らくスライムの言葉だろう」


「そ、そうですか」



スライムめ~ジャージの良さが分からないとはダメダメですね!

ちょっと可愛いと思いましたがやっぱりナシ!



「……知らなくて当然だけど、話せない魔物の声が聞こえるのは普通じゃないのよ?それこそテイマーと呼ばれる魔物使い や サマナーと呼ばれる召喚師、または特別なスキルがないと無理なの。ぼんやりさんは、ええと、サヤ・クオンだったわね?あなたの秘密は何?教えてちょうだい?」



……流石に魔王さまが見ている前で職業は 魔王の妻 ですとは言えませんよね?

誰が妻じゃゴラァってなったら命の危機です。

でもここで答えないのは不味いですよね。

どうしましょう?

話すべき?それとも誤魔化すべき?

うーん、迷いますね。

大体スライムの声が聞こえただけで警戒されるとか理不尽じゃないですか?

何か理由があるんでしょうか?

テイマーやサマナーってソロプレイヤーにはありがたい職業なんですけどねぇ。

魔族側からしたら悪者ってことなんでしょうか?

あ、もしかして意に沿わぬ使役とか召喚でトラブルになったんですかね?

それでもここまで敵意を持たれるのはおかしいような?

うーん、……あ、もしかして。

同族殺し?

テイマーやサマナーって魔物同士で戦わせる、殺し合わせるってことですよね?

納得して仲間になっているならともかく意に沿わぬ、例えば異世界あるあるの隷属の首輪とかのマジックアイテムがまかり通る世界だったら?

親兄弟で敵対ってこともあり得ますよね?

うーん、悩ましい。

判断材料が足りませんね。

隷属アイテムがあるとは限りませんし双方の思惑が絡んでいるみたいですから、ちっぽけな私一人がどうこう出来るレベルじゃありません。

それより今は職業を答えるか否か、誤魔化すならどうするかを考えるのが急務です。

テイマーやサマナー以外でスライムの声が聞こえてもおかしくない職業。

……そうだ!



「仙人です」


「なるほど、で、本当の職業は?」


「あなたね、顔に出てるのよ。思い付いた!って思ったでしょう?」



バレましたか。

仕方ありません。

ここは腹を括りましょう。



「ええと、実はスキルに 意志疎通 があります」


「……は?君、意思疎通 があるのかい?本当に?読み間違いじゃなくて?ちゃんと確めた?本当の本当に 意思疎通 かい?」


「ええと、その、意志疎通 って、何か曰く付きなんですか?」


「曰く付き?まさか!あなたね、意思疎通 って数ある言語理解系スキルの中でも五本の指に入ると言われる特別なスキルなのよ?生死を問わず、意思があるものならどんな相手とも意思の疎通ができるの。驚いたわ。……サヤ・クオン、あなたやっぱりただのぼんやりさんじゃなかったのね」


「……ちょっと待て。サヤ、君 意思疎通 があるんだよね?」


「はい」


「では当然、加護や称号も読めるよね?どうして隠した?隠さなければならない加護ってなんだい?」




…………。

アカン、墓穴掘ってもうた。





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