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「……さて、ここならゆっくり話せそうだね?」



ふっかふかの毛足の長い絨毯。

見るからに高そうな調度品。

壁には美しい女性の絵画。

天井にはスライム。

扉の前には騎士を模したゴーレム。

目の前にはどう見ても人間じゃない二人。

縮こまる私。



「おかしいと思ったのよ。いくら異世界人と言っても 精神攻撃耐性 を覚えるのは基礎レベル 15 以上。それも素質がなければ覚えられないわ。わかる?あなたがどれだけ……ええと、そうね、興味深い存在か」



意外と気遣いできるナイスボディなサキュバスさん。

気だるげに髪をかきあげる度にすごくいい匂いがします。

王女の時の清楚さは皆無です。



「召喚されたばかりの君がレベル 15 もあるようには見えないし、あるわけがない。君の本当の職業は何?他にもスキルがあるんだろう?……教えてくれるよね?」



目が赤い以外はそのままな王子は吸血鬼でした。

蝙蝠の羽もありましたよ。

あのまま殺されるかと思いましたが意外と丁重な扱いで今いる部屋に案内された私。

その道すがら正体を明かされたんですが、驚き過ぎると逆に冷静になるんですね。

クラスメイトは神官に扮していたリザードマンが手際よく運んでいきました。

リザードマンはそこそこ大きいイメージですが小柄な者を厳選したそうです。



「……あの、クラスメイトは無事ですよね?」


「君が真実を話してくれるなら命は助けるつもりだよ」


「わざわざ異世界から召喚したのよ?殺すわけないわ」



それはそれは綺麗な微笑みを浮かべる吸血鬼と見せつけるように美しいおみ足を組み替えるサキュバス。

はい、嘘~。

仮の身分証を裏返してテーブルの上に置く。



「……命をとらない代わりに魔王の隷属にするんですか?このカードの裏に書いてますよね?それとも……もう隷属にしたんですか?」



私は 精神攻撃無効 と 状態異常無効 があるせいか隷属になった感じはしませんがクラスメイトもそうとは限りません。

身分証を受け取った時点で隷属にされていたら……解く方法はあるのでしょうか?



「……へぇ、それが読めるんだ?いや、読めても不思議じゃないか。 精神攻撃耐性 のレベルはいくつ?君、幻影魔法も効かないよね?分裂するスライムを見てこっそり笑ってたし。あと 強制睡眠 が効かなかったから…… 状態異常耐性 か 睡眠耐性 あたりを持ってそうだね?いや、もしかして 耐性 ではなく 無効 だったりする?」



こう真綿でじわじわ~と締め上げられていく感覚、わかります?

犯人にじりじりと崖際に追いやられていく被害者的なあれでもいいです。

綺麗に弧を描いた口からちらりとのぞく牙。

威圧感が半端ないです。



「あなたどうして騒ぎ立てなかったの?最初からスライムやゴーレムが見えていたんでしょう?目深にフードを被らせていたけれど幻影が効いてないならリザードマンにも違和感はあったはず。普通なら気づいた瞬間ギャーギャー五月蝿く騒ぎ立てるのにあなたったらのほほんと見てるだけなんだもの。ただのぼんやりさんなのかスライムに気づいて見てるのか判断に迷ったわ。まぁおかげで無事に獲物を捕獲できたけどね」



ぼんやりさん。

言葉のチョイスが意外にあれですよね。

異世界言語 がないせいで翻訳機能が微妙にずれているんでしょうか?

クラスメイトは獲物ですか。

性的に食べちゃうんですかね?

宮原くんなんかすごい喜びそうです。



「……君、心ここにあらずって感じだけど誰かと会話でもしてるのか?この部屋はそういう対策も取っているから出来ないと思うんだけど……出来てもおかしくないと思ってしまうのは何故だろう?こんな……こんな、何だろう?君、例えるのが難しいね。……まぁいい、それより隷属の事だったね。安心していい。これはただの目印さ。魔王領でもこの辺りは喧嘩っ早い奴等が多くてね。特に人族は縄張りに入ったら最期、問答無用で殺される。そこでこの紋章だ。陛下の威光は魔王領全域に及ぶからね。この紋章を見せれば恐らく殺されはしない。……見せることが出来たら、だけどね」



それはつまり見せる前に殺されるってことですね?

…………。

そ れ よ り も 。

今、聞こえてはいけない単語が聞こえたような?

聞き間違えですよね?

魔王領とか言ってませんよね?

言ってませんよね!?



「……あの。ここって魔王領なんですか?」


「そうだよ」


「そうよ」




…………。

アカン、やっぱり終わってたわ。






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