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月物語  作者: 石原レノ
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颯の章〜亀裂~

「はぁ忙しい忙しい」

大学生活真っ盛りな俺は、この頃バイトバイトと大忙しだった。1週間くらい輝夜とまともに話せていないので、少しイライラしている今日このごろである。と、言うのも輝夜は最近体を壊しているようで、大学に来ていないのである。チャットアプリで御見舞メッセージを送っても『大丈夫だよ』の一言で終わってしまう。本人曰く風邪をこじらせた程度らしいのだが、俺としては心配極まりない限りである。

ープルルルルルー

そんな事を考えているとスマートフォンの着信が鳴り響いた。発信源は輝夜である。

「久しぶり。どうかした?」

俺が応答しても輝夜の声は聞こえない。直に不安感が煽りだし、何度か問い直すとか細い声で輝夜は応答した。

「あのね、帝君、、、私ね」

「輝夜!」

俺が大急ぎで向かった先は徒歩1時間の国立病院。ただの風邪だと言っていた輝夜の元へ俺は血相を書いて会いに行った。そう、輝夜の病状はただの風邪では無かったのだ。

『進行性のガン』つい先日に行った旅行の前から発覚していたらしい。

ベッドに座っている輝夜は一週間前とは一変してやせ細っていた。

「なんで、、、なんで黙ってたんだよ、、、俺は、、、、俺は、、、っ!」

俺が何度問いかけたところで輝夜の様態が良くなることは無い。そんな事は分かっていた、、、。ただ俺に言ってくれなかった事が悔しくて、一刻も早く気づけなかった自分が歯がゆかった。

「ごめんね、、、ごめんね、、、、」

目に涙を浮かべる輝夜の顔を見ていると俺の悲観度は急増する。俺が輝夜を抱きしめ涙を流していると、病室に2人の老夫婦が入室する。輝夜がおばあちゃんと呼んだことから、輝夜の祖父母だという事が理解出来た。俺は一礼した後、向き直った。

「帝君、、、だね。輝夜がいつもお世話になってるよ、、、その、今回はこんな事になったことを黙っていてすまなかった、、、これも君の事を、、、君と輝夜のことを考えての事だと、輝夜自身が決めた事なんだ、、、許してやってはくれないか、、、」

「、、、、」

輝夜の祖父にそう言われるが、俺の思考は既にそこには無かった。高校から大事になった存在が今こうして高台な壁に突き当たっている。『ガン』と言う死率の高い病気と戦っているのだ。

「俺に、、、出来る事は—」

「一緒に居てくれないかな、、、?」

輝夜の祖父に向いていた目線を声がした方へと向けると、寂しげな表情をしている輝夜が俺の方を向いてそう口を開いていた。

「大事な人と、、、私が大好きな人と一緒にいるだけで頑張れるから、、、私ね—」

「もういいんだ、、、」

「えっ?」

俺の一言に輝夜は疑問と共に恐怖のような感情を顔に出した。俺の言い方が悪かった事もあるが挙動不審な今の俺には言葉を探す余地すらない。

目に涙を浮かべる輝夜の元へ再度歩み寄り背中へ腕を回す。俺の胸できょとんとしている輝夜の耳元に顔を近づけ、俺は再度口を開いた。

「俺はずっと傍にいる、、、大丈夫、大丈夫だから、、、一緒に、、、頑張ろう」

気が付けば輝夜の祖父母は病室から姿を消していた。白い病院の小さい個室の中で、俺と輝夜は再度永遠と楽しい時間を約束した。


「かなり前に発見された時には、余命は5ヶ月でした、、、現在3ヶ月が経過しているのですが、あと1ヶ月が限界かと、、、」

「そんなに前から、、、」

「そんな、、、」

輝夜の祖父母と俺は担当の医師に最悪な知らせを聞いていた。輝夜はもって1ヶ月。ガンは5ヶ月前から見つかっていたらしい。という事は旅行の日には既に輝夜の体は(むしば)まれていたという事だ。言葉にできない怒りと悔しさがだんだんとこみ上げてきた。涙を流し祖父にすがる祖母の姿はこの空気を一層深いものにさせる。

「帝君、、、」

「、、、、、はい」

輝夜の祖父母に背を向けたまま応答する俺を気にする様子もなく話を続けた。

「この事を輝夜に言うかどうかは君に任せることにするよ。今の私達は輝夜にとって君の次に大切なんだと実感しているしその事に満足だってしている」

「良いんですか、、、こんな俺に、娘さんの全てを任せても、、、」

決して自分だけでは決められない結末を輝夜の祖父母は俺に任せようとしている。責任を押し付けている訳では無い。それは祖父母から流れる涙が十分な証明になる。俺の問いかけにゆっくりと頷いた事をきっかけに俺は残り少ない二人の時間を有意義に、少しでも長くしようと、欲を言えばガンその物が治ることを人生の運を全て使ってでも叶えたいとそう思った。

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