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月物語  作者: 石原レノ
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蝶の章~竹取〜

帝の学校では夏休み中の恒例行事『文化祭』が行われる。様々な案の中で選ばれた出店内容が帝と輝夜にどんな影響を与えるものか、、、

「えー文化祭が近くなってきた。てことで!今日のホームルームはクラスでする出店及び役員決めをする!何か案がある人はいるか?」

うちの学校は田舎のため夏休みのような長期休暇中でなきゃ一般の方々や周りの地域の人は来ないので文化祭は夏休みに行うのが習わしである。

「はいはいー!喫茶店なんてどうでしょう!」

「ほぉ、、伊部、珍しくいいこと言うな、、、ところでお前が言う喫茶店というのは具体的にどんなものだ?」

「そりゃあメイ」

「却下」

ちゃんと意見を言われる前に却下を下された有希太はうなだれていた。そんな有希太をクラスメイトは笑いながら見ていた。

「それなら演劇はどうでしょうか?」

すると1人の女子生徒が演劇を提案する。クラス内でざわつきが起きて数秒後、、

「賛成ー!」

「賛成」

「私もー!」

と、次々に賛成意見が飛び交った。担任が場を沈め多数決をとるとなんと有希太以外全員の賛成が取れたため俺のクラスの出店は演劇になった。しかし、あくまで「出店」であるため有希太の意見であるメイド喫茶の喫茶の部分だけを採用し、演劇喫茶店となった。

「それじゃあ演劇の題材は何にする?」

先生の質問にクラス中が沈黙する。

すると輝夜が手を挙げる。クラス中の目線は即座に輝夜へと移り、、、

「かぐや姫なんてどうでしょうか?」

「「「なっ、、、」」」

輝夜の提案でクラスメイト達は目を見開いた。なぜか?

「そ、それだぁぁぁぁぁあ!それな輝夜ちゃんの役にぴったり!」

「それしかない!それしかねぇよ!」

「それだ!もう決定だ!異論はあるか!あるんならぶっ飛ばしてやる!」

「え、ちょっと、、、皆?」

こういう事である。みんなはなっから輝夜を主役にしたかったのだ。


「それでは、役の発表に移るぞ、、、かぐや姫の役は過半数の推薦により竹中。そして御門役が、、、」

この時ほどクラス中の男子が真剣になったことは今まで無いだろう。それもそのはず、何故ならかぐや姫と御門は恋に落ちちゃったりもするのだから。

「御門役は、、、」

「「「っ、、、、、」」」

「伊部」

「え?俺!?」

名前を呼ばれた有希太が大喜びではしゃぎ回る。そんな有希太を俺を覗いた男子生徒達がギっと睨みつけていた。

「よし、じゃあ主役補助を発表するぞー。かぐや姫の補助は北野、御門の補助は大海で決定」

よし、このままだと楽して終われそうだ。そんな思いに浸っている中輝夜はあまり乗り気ではない様子だった。


「今1度、会えないだろうか?私は其方をこれまでに愛しく思っているのに、、、」

「いけません御門様。私は、私は」

「、、、、、」

輝夜の想像を絶する演技力にクラスメイト達は言葉を失っていた。そして有希太も負けずと食らいついてくる。これは上手くいく、、。

誰もがそう確信した。

だがなぜだろう、どこか気持ち悪い感覚に俺は駆られていた。自分でも初めての感覚に疑問ばかりが生じる。

「ーくん?大海君!」

「ん、、、あぁ、、ごめん。ボーッとしてた」

今の俺にはそんなこと気にする余裕はなく、楽だと思っていた仕事も実は結構大変だったと思いながら有希太と同じセリフを覚えていた。

演劇の練習が終わり、クラス中の空気は下校する空気へと変わっていた。

「輝夜ちゃん元気ないみたいだけど大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ。ちょっと疲れただけだから」

そんな輝夜の顔はどこか乗り気ではない顔をしていた。輝夜が大丈夫と言って安心したのか残りの女子生徒は下校を始めた。

「帝ー帰ろーぜ!」

有希太に声をかけられ俺も帰宅をしようとしたが、不意に輝夜と目が合う。

帰って欲しくない、、、そんなことを言われているような気がした。

「、、、、悪い先に行ってくれ、、、後で追いつくから、、、」

「ん?どうかしたのか?、、、まぁ、行くけどよ、、、じゃあね!竹中さん!」

「、、、うん、、、じゃあね」

何も知らない有希太が教室を出ていった事を確認して再度輝夜と目線を合わせる。

「練習はどう?」

「うん、、、なんとか上手くいってる、、大海君の方はどうかな?」

「あぁ、、こっちも順調だよ」

「「、、、、、」」

短い会話を経て沈黙してしまう。いつもはこんなことは起きないのだが、何故だか分からないが言葉が出ない。

「「、、、あのさ!」」

声が重なりより一層気まづくなる空気、、

「あのね、私、頑張るから!一生懸命みんなの為に演劇頑張るから!、、、、だから、、その、、」

「その時は、、、、」

「「また月を見に行こう」」

「、、、、、、、」

何だ、、、そういう事だったんだ、、、なら俺のするべきことは、、、俺の親友の為だ、、、このくらいどうってことないよな、、、


文化祭を前日に控えた今日、クラス内ではリハーサルの準備に取り掛かっていた。出演メンバーは別室でセリフの練習である。

「有希太!そこ違う!もっと感情込めて!輝夜ちゃんも、もっと笑って!」

いつにも増してうちの監督は情が入っていた。まぁ気持ちはわかる。

「大海君!私達も頑張らないと!」

「おう、、、そうだな」

この後みっちり3時間でやっと監督の満足いく演劇の仕上がりとなった。

現在時刻は4時半。まだあと2時間は活動できるため、俺達演劇組は喫茶店の手伝いをする事にした。

「竹中さんと大海君は教室の飾り付けをお願いね。それにあたって追加の分買出しお願い!これ、店までの地図と買って欲しい品物を書いたメモだから!」

「お、おう、、、」

「早く行ってこよーよ!ここからちょっと歩くみたいだし!」

輝夜も疲れているはずなのに一生懸命役に立とうとしている。そんな輝夜を見て何だか俺も元気が出てきたような気がした。

「そうだな、、、」


「かなり買ったな、、、正直疲れた体にこの重さはきつい」

「男の子なんだから頑張ってよ。私も少し持つからさ」

やはりここに来ても田舎だと思うことがある。スーパーを出れば辺り一面畑ばかりなのだ。しかもこの時間は人通りも少なく。畑道を歩いているのは俺と輝夜の2人だけである。

最近なぜだか分からないがたまに気まずい雰囲気が漂うことがある。輝夜も感づいているようで、何か話題はないかと辺りを見渡したりしていた。

「、、、あのさ、大海君、、、」

「ん?どうかしたか?」

「私ね最近おかしいんだ。何だか息苦しいっていうかね。その、、、普段は大丈夫なんだけど、、、」

顔を赤く染めながら俺にそう言ってきた輝夜は何故か俺と目線を合わせようとはしなかった。

「今も息苦しいの?」

「うん、、、何でだろうね。どこか悪いわけでもないし、、、」

「、、、俺には分からないけどさ、、、その苦しさの原因が見つかるといいな」

自分で作る何を言っているのかが分からなかった。ただ言葉が見つからなくて、、、思いつきで言った言葉は彼女に苦笑いを作らせた。

「、、、そうだね」



「、、、、はぁ」

最近何かがおかしい。別段気になることもないはずなのに、不安感が心のうちから消えない今日この頃、、、。

この年になるまで一度も味わったことのなかった感覚は俺を不安にさせる。

気にするしないは関係しないようで、どう足掻いても離れないこの感覚は一体何なのだろうか。俺自身がわからない今どうすればいいのか、、、でも、、、

「もうちょっとなんだよなぁ、、、」

そう確信していた。

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