第8話
第8話
屋敷の中に招かれた後、俺は風呂(自分家の3倍は豪勢な造りのに入れてもらい埃で汚れた体と精神的な疲れを癒した。
「生き返るな~」
そんなことを呟きつつ、俺は風呂から上がり脱衣場に出た。どうやら、着ていた服は洗濯に回されたらしく棚の上には替えの服が置かれていた。
「これって・・・」
素材はシルクに似たもので一流の職人が手掛けたのが一目でわかる超高級物の衣服一式。俺はありがたいと思いつつ、このベルナー商会の力の大きさに改めて驚いていた。
「金があるだけじゃあない、色んな処に太いパイプを持ってないとこの勢力にはならないよな」
俺はそんなことを呟きながら服を着替えると、ちょうどドアがのノックされる音がした。
「あ、どうぞ」
そう言うと、ドアからメイド服姿のちょうど同い年位の少女が礼をして入ってきた。
「失礼いたします。旦那様がよろしければ応接間に来ていただけないかと」
「直ぐ行きます」
そう言うと俺はメイドさんの後に続いて歩き出した。
「ユウキさん、我が家の風呂はいかがでしたかな?」
「いやー、最高でした。まさか木造りの浴槽があるとは思いませんでした」
「ははは、実は昔商談で東にある桜花国に滞在する機会があったもので。滞在中に入った温泉が忘れられずに我が家にも職人を呼んで作ってもらった次第でする。」
さっき入った風呂は日本にあった温泉に類似していた。どうやらこの世界にもそういう文化を持った国があるようだ。
そこに扉の方から、失礼いたします、という声がしてアーノルドさんがカートを引いて入ってきた。
「皆様おくつろぎになられたようで、よろしゅうございました。レンレでございます」
と全員に飲み物を配ってくれた。見てみると、半透明の薄いオレンジ色の液体が入っていた。どうやら紅茶のようだ。
「それでは旦那様、ご帰還が遅れた理由を伺ってもよろしいでしょうか?」
「わかっています。まずは・・・・」
マークさんはこれまでのことをアーノルドさんに話し出した。
「なんと、そのようなことが・・・」
マークさんが話終わるとアーノルドさんは難しい顔をして言った。
「あの時、私は死を覚悟しましたがユウキさんのお掛けで帰ってくることができました。感謝してもしたりないくらいです」
マークさんは俺の方を向いて笑顔でそう言った。するとアーノルドさんも頭を下げ礼を述べた
「私からもお礼申し上げます。ユウキ様のお掛けで私の大切な方々を失わずにすみました」
「あー、頭を挙げてください。大したことはしてませんから
「いえ、ユウキ様がおられなかったらどうなっていたことか。想像するに耐えません」
そう言って頭を下げ続けるアーノルドさんに俺は恐縮してしまってなにも言えなくなった。
すると今まで黙っていたマリーが口開いた。
「お父様、アーノルドさん、そのようにされてはユウキ様が困ってしまいますわよ」
「そうですね。恩人に気を使わせるのは申し訳ない。」
そう言いながらマークさんたちは頭を挙げた。このようなやり取りをしていると、この人たちを助けてよかったと心から思わせられる。異世界で最初にあった人が彼らでよかった。そんなことを思っているとマリーが今後の予定を聞いてきた。
「ユウキ様はこれからどうなさる予定ですか?」
「取り敢えず、ハンター協会に登録しようかなと思っています。それ以外のことはまだ決めてないんですけどね」
「でしたら、リーベにいる間はここにいらしてください。街の案内やお話もたくさんしたいですから。お父様もよろしいでしょう?」
マークさんは笑顔で頷いた。
「それはいいですね。こんなことで恩を返せるとは思いませんが、」こにいる間はゆるりとお過ごしください
そう言われた俺はただただ感謝するばかりであった。