第3話
第3話
「取り敢えず、と」
俺が籠手を着けている方の腕をオオカミもどきに向けると、オオカミもどきが青白く光だした。
この籠手の便利機能の1つに自分が殺した相手から潜在的な力を吸収し、自分の能力に還元する力がある。
昔、地球では神々から恩寵を与えられた者たちはその大半が人々を幸せにしようとした。しかし、一部の者はその恩寵を使い争いを起こした。
俺のご先祖たちはその愚か者どもと戦って倒し、力を封印していたそうだ。もっとも、籠手に封じられた力が強大で歴代の所有者は人外じみた能力を持っていたようだが。
「籠手の力は問題なく使えるみたいだな」
ひとまず安心し、かがみこみながらオオカミもどきを見て自分が置かれた状況を考えてみることにした。
「こんなのがいるってことは、ここは地球じゃないな。普通に考えれば異世界てとこか・・・」
たとえ家が特殊だとして、自分もれっきとした17歳高校生である。その手の小説やアニメはよく見ていて知っていた。家にはその関係の本やゲームが結構ある。まあ、10代男子の夢みたいなものだ。
「あの時の光は魔法かなにか、あるいは神様のしわざってとこか」
普通ならこれほどあっさりと受け入れられないのが、あの人外魔境まっしぐらの家で17年もいきていればこうもなる。もっとも本人は普通の暮らしに憧れていたのだが。
学校で目立たないようにしていたのもそのためだったが、それでも限界があった。
「まずは、人だな。腹も減ったし、情報も欲しいし、とにかく村か街を探そう」
俺はグーっと自己主張するお腹を少しの困ったような顔で見ながらゆっくり歩き出した。