第11話
第11話
登録を終えた俺はマーニャさんについて受付があった場所に向かっていた。
俺は顔を天井や床に向けて、唸りながら自分のステータスの高さに考えを巡らしていた。
(まったく、何なんだよあのステータスは。確かに俺ん家のことを考えれば何があっても不思議じゃないが、あれはヤバすぎだ。)
まず、基礎能力が高すぎる。まだレベル1なんだから延びしろがかなり残ってる。このままでは化け物扱いされかねない。それに称号も危険だ。超越者だの剣神だの、果てには???という訳のわからないものまである。下手をすれば変な宗教団体が勧誘に来かねない。
(当分は能力値や称号のことは極秘だな・・・)
「離してください!」
そんなことを考えていると酒場の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
マリーはユウキがマーニャと一緒に登録の間へいった後、することがなく酒場のマスターに軽い飲み物を注文し辺りの様子を見ながら過ごしていた。ギルドに来るのは久しぶりで、騒がしくも活気のある様子を興味深く観察していた。
「お嬢ちゃん、1人か?」
そんな時、不意に声を掛けられた。
「なかなか上玉じゃねえか」
「こんなとこで1人とは可哀想にな」
「俺たちと飲まねえか?」
そう言いながら数人の男が近づいてきた。どうやらパーティーを組んでいるハンターらしくせ全員腕に赤い布を巻き付けていた。
「連れを待っているのでお構い無く」
マリーは一瞬だけ男たちに顔を向け、また元に戻し素っ気なく言った。しかし、それを聞いた男たちはさらに顔をニヤニヤさせながら言い寄ってきた。
「気が強い女は嫌いじゃないぜ。俺たちはレッドオーガっていうCランクのパーティーだ。少しくらい付き合えよ」
パーティーのリーダーらしき男が肩に手をおきながらいやらしい顔をさせて言った。
「わたしに構わないで下さい」
そう言って肩に置いてあった手を振り払った。しかし、男は気分を害したような表情で
「ガタガタうるせえ!テメェは黙って俺たちの相手をしてればいいんだよ!」
男は強引にマリーの手を掴んで自分の方を向かせようとした。
「離してください!」
マリーは抵抗の声を上げ必死に手を振りほどこうとした。その時・・・。
「どうかしたのか?」
マリーは声のした方に顔を向け、ほっと安心したようなため息を着いた。そこには登録を終えて戻ってきたユウキとマーニャがいた。
マリーは男の手を振り払うとユウキの背中に隠れて、絡んできた男たちを、にらんだ。
「おいおい、何急にしゃしゃり出てきてんだ」
「その女は俺たちが先に目を付けたんだよ」
「ガキはとっとと帰ってママのオッパイでもしゃぶってな
などと好き勝手に宣う男たち。そんな男たちを見ながら俺は深いため息を着いた。
「どう見ても嫌がってるだろ。それに彼女は俺の連れだ。手出しはご遠慮願おうか」
微妙にテンプレだと思いつつも、彼女を庇うようにしながら男たちに言い放った。
「ガキが、調子に乗るんじゃねぇよ!」
「俺たちはCランクパーティーのレッドオーガだ。テメェみたいなガキが俺たちに逆らって無事ですむと思ってんのか」
どうやら、ずいぶんと素行の悪い連中のようだ。日常的に問題を起こしているのが目に見えてわかってしまう。周りを見てもあまりいい視線は向けられていない。
「レッドオーガだかなんだから知らないが、周りにも俺たちにも迷惑だ。とっとと失せろ」
「上等だ、ガキが!!」
そう言うと男が1人飛び掛かってきた。
「・・・生き物としての格の違いも判らないとはな。よく生きたこれたな」
俺は小さな声でそう言うと、一瞬で相手との間合いを詰めた。
ウチの家族は基本的に古武術を習う。そのなかでも俺は武神とまで言われた祖父に地獄のような修練をさせられてきた。あのヒトを相手にする組手はもう地獄とか天国とかを通り越して、言葉では言い表せない何かだある。
それに比べればこの連中は俺にとってまさしく"蟻"でしかなかった。
右拳に気を溜め、次に相手に拳を密着させた状態から気を解放した。
《緋爆掌》
「!!?」
受けた男は目を立ち止まって見開いたままピクリとも動かない。
「おい、どうした!」
パーティーの仲間たちが駆け寄って肩に手を置いた瞬間、男の体がゆっくりと前に崩れた。
「テメェ、何しやがった!?」
「何って、気を失ってもらっただけだが?」
「許さねえ!!」
そう怒鳴ると、今度はリーダーの男を先頭に全員が襲い掛かってきた。こいつらはつくづく本能に疎い連中のようだ。今の一撃を見たらだいたいの実力差がわかるもんだが。
《緋爆連掌》
俺は瞬間移動をかくやという動きだ全員の死角を取ると、急所に掌を叩き込んだ。
「「!!?」」
レッドオーガのパーティーメンバーは自分が何をされたのかもわからないまま意識を飛ばされ倒れていった。
「これに懲りたら身の程を弁えるんだな」
俺は手を払いながら下らないものでも見るような目付きで見ながらそう言い放つのだった。