逃げの夜
「兵が来たぞぉぉぉ!!」
その怒声を皮切りに無数の矢が夜闇の空から降ってきた。
ザクッ
「ぐはぁぁ!」
「おい、大丈夫か!くそ、貴様よくも!」
そういって兵士は立ち上がり、剣を片手に前方の敵へと走っていく。その数秒後に彼の悲鳴が聞こえたが、それを無視するように弓をつがえていた兵士は、
「ちっ、敵の数が違いすぎる。奥方!奥方はいませぬか!」
「奥方は今しがた裏門より、抜け出ておられた!御子息も随伴しておられる!」
兵士はその言葉を聞くと裏門へ残りの兵士たちを集め陣形を組んだ。
「お前たち、ここは命に代えても通させぬぞ!あの方が与えてくれた命、今返す時としれい!」
「「「おお・・・!」」」
御科之守は箱馬車に鞭打ち、山中を駆けていた。
「大丈夫かや・・・?」
「心配いりませぬよ、母上。きっと逃げ切れまする。」
そういいながら御科之守は内心焦りを感じていた。
……如何にすべきか。あやつらも屈強ではあるがあの敵の数ではものの数分も持たないであろう。
御科之守はいろいろと思いを巡らせたが、現状を切り抜けるのには走り続けるしかないことを悟ると、黙々と馬を走らせた。




