王子「王技の四――『婚約破棄』」悪役令嬢「――淑女流奥義、婚約破棄返し」
煌びやかな王宮の大広間。
降り注ぐシャンデリアの光が、磨き抜かれた床に冷たく反射する。
「……終わりだ、リリアーナ。貴様との絆、ここで断たせてもらう」
この国の次期後継者にして魔導の申し子、王子エリックが右手を天に掲げる。
その掌を中心にして、物理的な質量を伴った重力が渦を巻いた。
「王技の四――『婚約破棄』」
放たれた言の葉は、空間を裂く断罪の刃。
婚約者である令嬢リリアーナの喉元を刈り取りに走る。
周囲の貴族たちは、その余波だけで呼吸を忘れ、ただ絶対的な拒絶の力に平伏した。
だがそれでも。
リリアーナは動じない。
彼女は目を伏せたまま。
優雅に扇子を閉じると、その先端を王子へと――突きつけた。
「――拙い……」
「何だと……?」
「『婚約破棄』とは、相手を捨てる技ではございません。己の器の小ささを、世界に露呈する。……ただの、自壊に過ぎませんわ」
リリアーナが一歩、前へ踏み出す。
たった、それだけで。
大広間を満たしていた王子のプレッシャーが、霧散した。
「――淑女流奥義、『婚約破棄返し』」
刹那。
世界のすべてを白に変えるほどの閃光。
二人の間に走った激しい「意志の衝突」が、王宮の色彩を、塗り潰した。
――。
――――。
――――――。
「……ふぅ。……撤収完了したかしら?」
色彩の戻った大広間。
背後で控えていた 演出担当 の侍従たちが素早く去ったのを確認し、リリアーナは軽く吐息をついた。
先ほどまでの刺すような 凍土の如き美女 の空気はどこへやら、その頬は隠しきれない興奮で桃色に染まっている。
「リリアーナ……!!」
王子エリックが、待ちきれないといった様子で駆け寄ってきた。
彼は自慢の長い前髪をくしゃりとかき上げ、今にも踊り出しそうな足取りで彼女の手を取る。
「さっきの……さっきの『拙い』! ゾクッとしたよ! 魂が震えた! 僕の『王技』をあんな風に一蹴するなんて、やっぱり君は最高のパートナーだ!」
「もう、エリック様ったら! あたくしの方こそ、殿下の『王技の四』のセリフとポーズ、あやうく『奥義』を忘れて見惚れるところでしたわ。昨日のリハーサルより三割は重圧が増していましたもの!」
「本当かい!? 嬉しいな、昨晩、鏡の前で三時間『絶望のポーズ』を研究した甲斐があったよ」
二人は熱烈な視線を交わし、大広間の中心で互いの演技を褒め称え合う。
そう、これは断罪の場ではない。
ただの*重度魔導中二病カップルによる、全力公開ごっこ遊び*である。
「でもエリック様、次はもう少しだけ、背景に『黒い霧』を漂わせたいですわ。魔導の申し子にしては、少々輝きが健康的すぎます」
「なるほど、盲点だった。よし、次は『禁忌の五重奏』の練習だね。リリアーナ、君の『反逆のカーテンコール』を僕にぶつけてくれ!」
「喜んで、エリック様。……あたくしたちの愛の深さ、世界に思い知らせてやりましょう!」
二人のオサレな夜は、まだ始まったばかりである。
国王「青いな」
王妃「あらまあ、かわいらしいこと」
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『残酷なアルゴリズム。』
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是非、こちらもよろしくお願いいたします。
※この作品はaiちゃんとの共同作品となります。




