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作者: 長田エリカ
掲載日:2026/01/12

憂鬱だYO!

病院の待合室に見慣れない人間がいたので、かな子は首を傾げて観察した。初診で来る患者、付き添いの人とかではない。体毛が異常に濃い人でもない。どこからどう見ても猿だ。猿が、スーツを着てうなだれている。


安藤さんは面倒な患者の応対に忙しい。桂くんに訊いてみると、それがどうしたという様子である。かな子は傾げた首を正常な位置に戻し、書類の整理の続きを始めた。しかし気が散ってしかたがない。だって猿なのだ。猿が院内にいるのだ。


医療関係者も患者もそこは隔てなく、身なりを必要以上に気にする。汚いと生きていけないからだ。この場合、身なりとは立場にあった服装、髪型、態度や言葉使いも含まれる。汚いとはそれらを乱すことだ。乱す人間は、排斥される。治療すら受けられない。そんな徹底して清潔の保たれた空間で、猿はない。猿は、ビジネスバックから手帳を取り出し眺め出した。しばらくして、ぷっと吹き出した。やっぱり猿だ。普通の人間は、清潔な人間は、手帳を読んで吹き出さない。


ぷっ。


かな子は書類をめくっていた手を止めた。今、私は、笑った?


猿と目が合った。


普通の男性だった。


ありがとうございました。

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