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第5話「地下倉庫の隔離」

TIME: 3330:13:00 DQ_FACTOR: INCREASE

TIME: 3330:13:00 PROGRESS: ON_SCHEDULE

TIME: 3330:13:00 ENVIRONMENT_STATUS: FAVORABLE

1.獲物の暴走

ギルベルトは回想する。湖の中に引き摺り込まれたのは、完全に予想外だった。あの冷たい、ねばついた触手の力は想像を絶したが、俺の戦闘経験は、ああいう未知の状況でこそ活きる。

触手に意識を集中させている隙をつき、懐に隠し持っていた炸裂弾を、触手と自分の体の間にねじ込んだ。


ドォン!


水中での爆発は威力が減衰したが、熱と衝撃波で触手が怯んだ一瞬、俺は全身の力で湖底を蹴り、水面に飛び出した。

陸に戻ると、神の子はいなくなっていた。

体には今までにない力が満ちていた。なんだってできそうだった。


ギルベルト:

「神の子!!!!あれは俺のものだ」

俺は叫ぶ。すぐに自分の馬を指笛で呼び寄せ、森の外を目指した。俺には何故かあの女の場所が感じられた。あっちだ。俺は砦に向かって馬を走らせた。


あっという間に砦にたどり着くと、門前でうろつく挑戦者上がりの連中に出会った。


門前の挑戦者:

「なんだギルベルト、お前も手ぶらか。ボロボロじゃねぇか」

ケラケラと笑われ、頭に血が上る。森で味わった屈辱と、神の子を逃した焦りが、俺の理性を焼き切った。ムカつくやつらを剣を頭に叩き込んで叩き切ってやった。枝を払うような軽い手応えに驚いた。

そうしてると、今度はもっとむかつく事務屋が現れた。ケヴィン。あの役人崩れの文官だ。なんでテメェが俺の獲物を連れてるんだ?しかも、あいつの上着を着せて。

規則、罰則!あいつは俺の嫌いなやつをちらつかせた。思考が止まった隙に、事務屋は動きやがった。


ギルベルト:

「貴様ぁあああ!!」

怒りに任せて大剣を振り抜いたが、チビに乗った事務屋に逃げられた。門に剣を挟まれ、門が完全に閉まろうとする。この獲物を逃がしてたまるか。

俺は鍛え抜かれた全身の筋肉で大剣の柄を押し込み、門を引き剥がしにかかった。今までの俺だったらそんな無謀なことはしない。だが、今ならできると確信した。

歪んだ門を押し込んで、できた隙間に俺は飛び込んだ。視界の先には、金色の鎧を着た隊長と、事務屋のケヴィン、そして女がいた。

周辺の右往無象を吹き飛ばして進む。紙のように軽く吹っ飛び、些細な邪魔にもならない。

ケヴィンが隊長に何かを囁き、隊長はすぐに女を地下倉庫へ隠すよう指示した。


ギルベルト:

「逃がすか!」

俺は大地を蹴り、彼らに向かって走り出した。


ギルベルト:

「道を空けろ!死にたくねぇ奴は邪魔するな!」

俺は容赦なく槍を叩き折り、衛兵たちを蹴散らした。しかし、その間にケヴィンと神の子は、隊長の私室がある建物の中に消えてしまった。

俺は最後の衛兵を地面に叩きつけ、血と泥でぐちゃぐちゃになった剣で、隊長に突きつけ、睨む。


ギルベルト:

「隊長。アンタもグルか。神の子は、選ばれた者のものだ。 俺のものなんだ!」

俺の獲物への執着は、もはや理屈や罰則で止められるレベルではなかった。



2.地下の静寂と驚異

ケヴィンは、門前の騒乱を背に、メイの手を引いて中央の建物へと急いだ。ユス団長から預かった鍵で私室の床に隠された重い扉を開け、ケヴィンはメイを先に押し込んだ。

扉を開けるため、閂を力任せに押した瞬間、鉄の金具の鋭い部分で、ケヴィンの左手の甲が深く切れた。


ケヴィン:

「くそっ」

彼は咄嗟に手を引っ込めたが、血がすぐに流れ出し、白いワイシャツの袖口を汚した。文官である彼にとって、流血は慣れない感覚であり、一瞬思考が停止した。

メイは、血の匂いとケヴィンの苦悶の表情を見て、反射的にケヴィンの怪我をした手を掴んだ。


メイ:

「……」

メイは、まるで本能に突き動かされたかのように、その傷口を舌で舐めた。

ケヴィンは驚愕し、反射的に手を引き戻そうとした。


ケヴィン:

(なんだ、こいつは!?犬じゃあるまいし。しかし、その目が…)

メイの瞳には、恐怖でも興奮でもない、純粋な、相手の苦痛を和らげようとするかのような切実な感情が浮かんでいた。

ケヴィンが手を振り払う間もなく、彼は自分の傷口に異変を感じた。熱い。傷口が急速に熱を持ち、激しい痛みが急速に引いていく。彼は驚いて手の甲を見た。

ついさっきまで深く切れていた傷口が、まるで数日間の治癒を経たかのように塞がり、薄いピンク色の新しい皮膚に覆われていた。出血は完全に止まっている。


ケヴィン:

(な…なんだ、これは?治った?一瞬で?彼女が、舐めただけで?)

ケヴィンの冷静な理性が、未だかつてない衝撃によって完全に揺さぶられた。



3.観察者の最初の発見と計算

ケヴィンは動揺を抑えるように頭を振り、深呼吸した。まずは安全を確保するのが先だ。

ランプを灯し、メイを中に入れると、すぐに扉を閉め、閂をかけた。これで、外の騒乱からは完全に隔絶された。古い紙の匂いが漂う中、ジリジリとランプの油の焼ける音が静寂に響く。


ケヴィン:

「これで大丈夫だ。ここは隊長の個人的な倉庫で、扉は砦で一番頑丈だ。誰にも見つからない」

照明がないため、ケヴィンは腰から小さな魔導ランプを取り出し、壁の棚に置いた。ランプのオレンジ色の光が、メイの金色の髪と、怯えた瞳を照らす。

メイは壁際で体育座りになり、ケヴィンの上着に顔を埋めた。


彼女は、ギルベルトに捕らわれた湖畔での強い熱と、自身の制御できない情動の波を、まだ体に感じていた。恐怖と矛盾した身体の反応に、メイは混乱し、無意識に体を丸めていた。

ケヴィンは古い木箱の上に座り、懐から小さなメモ帳とペンを取り出した。この状況下でも、彼の態度は完全に事務的だった。かつて研究者を目指したこともあった彼は、この状況にどこかワクワクしていた。未知の現象に一番に取材しているかもしれないのだ。

ランプの薄暗い光の下、ケヴィンは治ったばかりの左手の甲を何度も見つめた。


ケヴィン:

(これが、ギルベルトが執着した力の正体か?触れることで、生物の治癒を異常な速度で促進させる……あるいは、彼女自身の生命力を与えるのか?)

彼女は、先ほどの治癒行為を、まるで呼吸のように無意識に行ったようだった。本人すら驚いている様子だった。


ケヴィン:

「メイ。まず、君の能力について確認したい。今、私の怪我を治してくれただろう。どうやった?」

メイは首を振った。何も覚えていない、あるいは何も自覚がない。


ケヴィン:

(やはり自覚はない。しかし、彼女の行動は本能的だった。愛憎や恐怖を超えた、根源的な生命維持への欲求に関係しているのかもしれない。)

彼はメモ帳に冷静に書き込んだ。


ケヴィン(メモ):

項目:能力

確認:触媒接触(唾液)による治癒能力(極めて高速)

仮説:本能的な行為であり、治癒の対価、あるいはエネルギー源は不明。

確認:能力の存在をユス団長に証明必須。私の地位は確定。

TIME: 3330:14:30 PLEASURE_CIRCUIT: ESTABLISHMENT_CONFIRMED

TIME: 3330:14:30 HQ_FLUC: LOW

TIME: 3330:14:30 DQ_LEVEL: UNSTABLE_RISING

TIME: 3330:14:30 AUDIT PROCESS: CONTINUING OBSERVATION


執行官:「不発。うまくいかんな」

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