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マッスル君

作者: はるあき

ーー中国

その国の歴史は長く、長く続き、遂に1万年を突破した……


標高7,556m。

中国の大雪山脈の最高峰であるミニヤコンカに一人の男性が住んでいた。


1988年、ミニヤコンカはの海螺溝、九龍県の伍須海、康定県の木格錯と共に「貢嘎山風景名勝区」として中華人民共和国国家重点風景名勝区に認定された[1]。1990年代以降、山麓に位置する海螺溝氷河の周辺は自然保護区に指定され、観光地開発が進められている。(wiki参照)


一人の男性はもっぱら筋トレが大好きで、イタコを生業として暮らしている。

遥か昔は、日本の東北地方の北部で口寄せを行う巫女としてイタコが暮らしていたが、”あの事件”の影響により、イタコはミニヤコンカでしか暮らせなくなってしまったのである。


「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフン!!!!!!フン!」


ミニヤコンカに住むイタコの男性の名は、マッスル君と言った。


「マッスル君〜〜。君の上腕二頭筋を喰いに来たよ〜〜」


寝室の窓を突き破り、突入してきたのはサキュバスだ。


「マッスル?マスマスマッスル?」


マッスル君は言葉が話せなかった。


「何言ってるのか分からないわよん」


サキュバスはお尻を大きく振り、最新のデュアルモニターを破壊した。


「マッスル!?!?」


「何言ってるのか分からないわよん」


サキュバスは襲いかかってくる。

ーー最近ではサキュバスは上腕二頭筋を奪う悪魔として言い伝えられており、このままでは上腕二頭筋が奪われてしまう。


「マッスルスルしかないなァッッ!!!!」


その時、突如外から光が差し込んだ。

サキュバスとマッスル君は二人で外を覗く。

見慣れた豪雪と吹雪の景色では無く、コンクリートに囲まれた何処かの景色に変わっているようだった。

サキュバスが口を開く。


「これは……東京ね」


「マッスル?」


聞いたことがない町の名前だ。


「東京タワーがあるじゃない?後、浅草も。私ちょっとそろそろ行くわ。また、上腕二頭筋を貰いにくるわね〜〜」


「マッスマッスマッスル」


気を落ち着けよう。

あのサキュバスは誰だ。

何を話していたのだろう。

そして、窓からは全く知らない景色が広がっている。


マッスル君は困惑しながらも50kgのダンベルを片手に外へと繰り出した。


「ねえ、そこのお兄さん」


「マッスル?」


声の掛けられた方を見ると、短髪少年が立っていた。

右袖が破けている。


「マッスルって……もしかして、外国人の方?」


「マッッスル」


「ちょっと美味しいビジネスの話があるんだけど、今時間良いかな?」


「マッスルマッスル」


喫茶店でコーヒーを飲みながら話を聞いた。

お金は当然持っていないので、代金は短髪少年持ちだ。

持ち物は50kgのダンベルしか持っていない。


「……ということなんだ。引き受けてくれるかい?」


報酬……いくら……?

マッスル君は筋肉ジェスチャーで報酬がいくらかなのかを尋ねる。

少年は考える素振りを見せる。


「…………」


「…………?ごめん、筋肉ジェスチャーじゃよく分からないな」


「報酬はいくらだ?」


「報酬は、君次第さ」


東京から車で5時間。

未開の地に到達する。

木々は生い茂り、未知の生態系が渦巻く生物学者にとってはもってこいな地だ。


「僕が来れるのはここまでだ。後は頼んだよ。あ、運転手さん、浅草までお願いします」


「マッッッッッッ」


短髪少年を乗せたタクシーは東京へと戻っていった。

ここは、何処だ。

看板を見ても文字が分からない。

短髪少年を信じて、道なき道を進み続けるしかないのだ。

人は皆、道なき道を歩み続ける。

正解など誰が決めるものでも無いのだ。

自身が歩んだ道を振り返り、道となっているものが人生というものなのでは無いだろうか。

ここは何処か分からない。

マッスル君はジャングルのようなジャングルを進み続ける。


「お、待ってたよ。君、マッスル君だろ」


「マッスル?」


ジャングルの奥地に渓谷があった。

渓谷に橋がかかっており、中央に一人の男性がいた。


「短髪少年から聞いてるよ。さあ、頼んだよ」


マッスル君は何をするのかを理解していなかった。

筋肉ジェスチャーで対話を試みる。


「筋肉ジェスチャーか。マッスル君、君になら任せられるかもしれない。この仕事を。何を伝えようとしているのかはよく分からないが、マッスル君の自信はちゃんと伝わったよ」


男性はにっこりと微笑み、胸を叩く。


「さあ、ここから飛べ」


「マッスル!?!?」


「なんだ、聞いてなかったのか?紐無しバンジーだよ」


マッスル君は頭とアキレス腱を抱える。

ーー意味が分からない。

マッスル君の筋肉はそう訴えかけているように見えた。


6時間後……

マッスル君はコンカフェを訪れた。

紐無しバンジーをした後、なんやかんやあって秋葉原を巡っていた。


「お帰りなさいませご主人様〜〜!!」


ここのコンカフェは、メイドカフェをコンセプトとしたコンカフェだった。

コンカフェとしては王道を征くメイドカフェに近しい店舗だ。


「マッスル……マッスルチェキ……」


「ん?マッスル??……ああ!チェキね!!私で良いの!?ありがとう!!」


「マッスル君、ここのコンカフェ初めて来たでしょ!!秋葉原って色々なコンカフェがあると思うけど、何でここのコンカフェを選んでくれたの??」


「チョット……マッチョ……」


マッスル君の地元はミニヤコンカで、他の住民は誰もいなかった為、話慣れてなどいない。


「そんなにテンパらなくても、自分のペースで話してくれればいいからね!!じゃあチェキ撮ろっか!!」


マッスル君とコンカフェ嬢はチェキを撮る。

落書きオプションを付けてもらい、プラス500円を支払った。


「地元の話なら話しやすいよね!私、実は地元が秋田県で……ほら、所々訛ってるでしょ!?マッスル君の地元は何処なの?」


「……ミニヤコンカ」


「ミニヤコンカ……?」


「ミニヤコンカ……中国の大雪山脈の最高峰……」


「中国……あぁ!中国から来てくれたんだね!!わざわざ来てくれてありがとうね!!」


マッスル君はレジを済ませて外に出る。

なんと、ここのコンカフェはぼったくりバー涙目レベルのぼったくりコンカフェだった。

マッスル君は紐無しバンジーバイトで稼いだお金を全て持っていかれてしまい、途方にくれる。


マッスル君の行方は誰も知らない。

マッスル君、ムキムキです

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