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2.砂の国 ―3

 澄んだ空気が森を包んでいる。遠くから聞こえる子ども達の声。

 平和とは、こういうものだったか。

 自虐にも近い呟きは、過去に想いを飛ばす己を制する。

 この森にまだ自分が立ち入れる事には少し驚いたが、彼はゆっくりと歩みを進める。


「…だあれ?」


 黒い髪の少年が、振り向く。


「こんにちは。僕の事、覚えてる?」


 人好きのする笑みを、少年はすんなりと受け入れたらしい。躊躇なく近付いて来る。


「お願いがあって来たんだけど。聞いてくれる?」

「なあに?」


 疑いもしない瞳。自分に伸びる手すら避けもしない。


「少し、眠っていて欲しいだけだよ。大丈夫、誰も心配しないようにしてあげるからね」


 ゆらりと揺らいだ空気に、少年と同じ姿が現れる。それは次第に形を定かにし、現実の物となる。


「行くといい。決して彼には会ってはいけないよ」


 踵を返して走り去る少年を見送り、彼は力の抜けた少年の体を抱き上げる。


「…役に立ってもらうよ」

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