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お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「ヨアキム様、あなたを私のものにしたいの」

「ああ・・わかっている、すでに僕は君のものだよ」

「嘘よ!嘘!あなたは奥様のものじゃない!私のものなんかじゃないわ!」

「そんなことはない!僕の心も体も全て!クリスタ、君のものじゃないか!」


「じゃあ別れてよ!奥様とは冷え切った関係で、話をする事すらないのでしょう!乾いた関係だから、一緒に居るのも苦痛なのでしょう!ねえ!別れて!ねえ!ねえ!」

「ああ、わかったよ。妻とは別れる」


「本当に?」

「ああ、本当さ」

「それじゃあ、私と結婚してくれる?」

「もちろん!」

「ああ!嬉しい!」


 夫のヨアキム・ベックマンは女の形の良い唇を貪るようにして自分の唇を重ね合わせると、黄金の髪をほどき、腰を引き寄せながらベッドへと雪崩れ込んだ。


 そう、私たちがいつも使っているベッドに!

 雪のように白い肌をした蜂蜜色の髪の女は、お互いに服を剥ぎ取るようにして脱ぎながら、歓喜の声をあげている。


「お・・お・・奥様・・・」


 後に立つ執事のベントンが、恐る恐るという感じで声をかけてきました。

 そっと扉を閉めた私は、顔を真っ青にして立ち尽くす執事の方へと振り返ると小声となって尋ねた。


「お相手はホルンルンド商会の御令嬢であるクリスタ様よね?」

「ええ、そうです」


私の口から心臓が飛び出してくるかと思うほど跳ね飛び、冷や汗が流れ、驚きと失望で涙が頬を流れ落ちる。


 ホルンルンドは絹織物を取り扱う、王都でも1・2を争う大商会。

 夫は海外から輸入した新しい素材の織物を仕入れてもらうためにホルンルンド商会との取引を始めていたのですが、商会が軌道に乗れば乗るほど忙しくなり、最近では顔を合わせる事も少ないというのが現状でした。


 一代で隣国ハッランドとの取引をここまで大きなものとした自分の腕に誇りを持っている夫は、ベックマン商会を王都で1番の規模にまで成長させたいと願っています。


 そこで老舗でもあるホルンルンド商会と手を組むというところまでは分かりますが、そのホルンルンド商会の令嬢と結婚の約束をするのは何故なのか?その理由を考えると全身の力が抜けて、目の前が真っ暗になります。


「奥様・・奥様・・」


 倒れそうになった私の腕を支える執事のベントンの顔はすでに土気色で、汗が顔に刻まれた皺の間を流れていきます。


 すでに高齢のベントンですが、私の父の代から仕えてくれる人間です。夫が敵に回ったという事は、この屋敷の中で信用できる人間といえば執事のベントンしか居ない状況と言えるでしょう。


「荷物をまとめて出ていくわ」

「奥様!」


「こんな家には居られないのは貴方にも分かるでしょう?」

「話し合われた方が良いのでは?」

「何を話し合うというの?」


 ベントンは真っ白になった口髭の下にある自分の唇をグッと噛み締めました。


 今日は友人のエディットのところへ遊びに行く予定だったのですが、エディットの息子ロルフが風邪をひいたのか具合が悪いようで、息子同士を遊ばせるのはまた後日にして帰ることにしたのです。


 そうして家に帰ってみれば見たこともない馬車が屋敷の前に停まっていて、夫を探して寝室まで行ってみればこの有り様です。


 最近、執事のベントンが何か言いたげな様子だったのですが、原因はこれでしょう。夫の浮気・・いえ、これはもう浮気じゃなくて、本気になっているのだと思います。


「とにかく家を出る事にするから」

「お嬢様」

「大丈夫よ、しばらく生活するくらいのお金ならあるから」

「お嬢様!」

 ベントンの心配は良く分かる。


 私の両親も大きな商会を持っていたけれど、夫と結婚して一年後に二人とも馬車の事故に遭って亡くなってしまい、私の実家は全て叔父のものとなってしまっている。

 だから私は、ここを出てしまえば帰る家というものがない状態。


「しばらくは子供連れでも安心して泊まれるようなホテルで暮らす事にするわ」


私は心配そうに私を見つめる執事の顔を見上げると、


「私たちの荷物を早急にまとめてくれるかしら?とりあえず最低限のものだけで構わないから」


執事のベントンは小刻みに震えながら辞儀をした。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

今週中に終了します、お付き合い頂ければ幸いです。

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よろしくお願いします。

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