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虹の向こうへ  作者: Rred
9/13

第九話

駅で尚代先輩を待つ。

 自分はけっこうおしゃれな方だと思う。

 尚代先輩にかっこいいと思われるといいな、と思った。

 

 あっ。

 尚代先輩だ。

 

 尚代先輩は黒のジャケットに、赤と黒のチェックのスカート。黒い長いソックスを履いて、靴はブーツをはいていた。

 

 なんというか、かなりオシャレだ。

 


 「待った?」

 

 「いいえ今来たところです。」


 そんな恋人のような会話をした。

 あれ俺と尚代先輩は恋人だよな。


 「電車乗りましょっか?」


 「ええ。」

 

 そう言って俺と尚代先輩は駅の構内に入って行った。


 俺達が電車に乗る駅は学校のすぐ近くの駅だ。

 二人の都合がいいので待ち合わせはその駅になった。


 電車をホームで待つ。

 

 「先輩っておしゃれなんですね。」


 「おしゃれは好きなの。きれいになるって女性にとっては大事なことよ。」

 そう尚代先輩は言った。


 

 電車が来た。


 ひとはあまりいない。

 どうやら座れそうだ。

 

 空いてる席に座る。


 「私、デートってはじめてなの。」

 そう尚代先輩は言った。

 

 「そうなんですか。じゃあ今日は楽しまないといけないですね。」


 そうなのか。

 きっとあまり恋愛はうまくいかなかったのかもしれない。

 俺が初めての恋人なんだな。

 

 いい恋人になれたらいいな。


 そう俺は思った。

 

 いい恋人か。

 俺はあまり器用な方じゃない。

 俺にできることは誠実に、誰よりも優しくすることだ。


 目的の駅に着いた。


 そこは自分たちの街で一番大きな町だった。

 

 まあデートコースとしては無難だろう。


 人が波のように往来する。

  

 尚代先輩の手を握る。


 「どこか行きたいところあります?」


 「亘君にまかすわ。」

  

 そう俺を試すかのようにいった。

 

 女の子はいつだって男を虜にする悪魔のようになれる。


 そんなことを思った。


 だいたい行くところは決めていた。

 

 楽しくてドキドキするところがいい。


 楽しい会話が生まれるような。


 一度も行ったことのない雑貨店に行くことにした。


 そこはいろんなものがあった。

 

 魅惑的な香りがする香水。

 

 値段の高そうなギラギラとしたシルバーのアクセサリー。


 おしゃれなカバン。


 かわいらしいフィギア。


 きれいで鮮やかなイラストがのってある本。


 どこかの国のロックなCD。


 尚代先輩が気になっていたのは、星の形をしたキーホルダーだった。


 じっとみている。


 あまりにもじっと見ていたので、笑ってしまった。

 「それ気に入りましたか?」


 「うん。小さい頃よくキーホルダーをかってもらってたの。鍵なんかもってないのにね。それをランドセルにつけるのがひそかな楽しみだったの。それを思い出しちゃって。」


 そう尚代先輩は言った。


 「同じやつ買いませんか?思い出に。」


 「それってプレゼント?」


 ちょっと笑って尚代先輩は言った。


 「はい。大切にしてくださいね。」


 そう俺は言った。


 雑貨店をでてぶらぶらする。


 「亘君ってやさしいわよね。」


 「そうですかね。」


 「きっと亘君が思っている以上にやさしいと思うわ。」


 「ありがとうございます。」


 そう言って俺は笑った。


 「きっといい漫画かけると思う。」


 そう尚代先輩は言った。


 それから音楽ショップに行って、古着屋をみてまわった。


 尚代先輩が意外にもロックが好きなことに笑ってしまった。


 「心を揺さぶるロックっていいわよね。」


 そんなことを真顔でいう尚代先輩はとてもおかしかった。


 もう夕方だ。

 俺と尚代先輩は小さな公園のベンチに腰かけた。


 「今日は楽しかった。」

 そう尚代先輩は言った。

 

 尚代先輩が俺の肩によりかかる。


 肩を抱き寄せる。


 甘い彼女の体臭がする。


 「愛してる。」


 そう俺は言った。

 

 愛してる。

 その言葉を俺は大切にしている。

 言葉の中でも最も甘く、せつない言葉だからだ。


 「私も好きよ。亘君のこと。」


 彼女もきっとその言葉を大切にしているんだな、と思った。


 彼女の口から愛してると言わせたい。


 尚代先輩の目を見つめる。


 尚代先輩も見つめ返す。


 愛しいその唇。


 俺は尚代先輩とキスをした。


 尚代先輩の柔らかい唇。


 尚代先輩の鼻息がかかる。


 「好きよ」


 そう喘ぐように尚代先輩は言った。


 ゆっくりと舌を入れる。


 ザラザラとした尚代先輩の舌は一つの生き物のように動く。


 唾液の匂いがする。


 俺と尚代先輩は互いに求めあった。


 俺と尚代先輩は男と女になった。


 ゆっくりと俺たちは大人になる。


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