第二話
つたない文ですが読んでくれたらうれしいです。
「おう、亘。帰ろうぜ。」
茶髪頭の佐々木武はそう俺に言った。
佐々木武は俺の友達のうちの一人だ。
彼は俺がオタクであるとは知らない。
もしそうであると言ったら、彼は自分を避けるだろうか。
「いや、今日は図書委員があるから。」
そう俺はもうしわけなさそうに断わった。
図書館に入ると、いつもと同じように眼鏡をかけた女の子は座っていた。
どうやら彼女は上級生らしい。
どかっと椅子に座る。
なんてめんどくさいんだろ。
そう思いながら漫画をカバンから取り出し、読む。
本当に暇だな。
図書委員なんかなるんじゃなかったな。
チラッと横を向くと、眼鏡の上級生は静かに読書をしていた。
よく見ると、その上級生は、なんというか、かなりきれいだった。
眼鏡の奥の目はきれいな二重で、まつげが長い。
肌は驚くほど白く、透明感さえある。
伏し目がちで本を読む姿はかなり色っぽかった。
何の本を読んでいるんだろう。
えーと、なにか英語でかいてある。
いままで聞いたことのない本のタイトルだった。
じっと見ていると、その眼鏡の女の子は俺の視線に気づいたようで、俺は目線をすぐに漫画にあわした。
「終わり」
そう眼鏡の上級生は静かに言った。
「ちょっと待ってください。借りたい本があるんです。」
と俺は言った。
「早くして」
そう図書館の入り口で抑揚のない声でその女の子は言った。
俺はあの、上級生が読んでいた本を探していた。
なにか気になるのだ。
あった。
本棚の上の隅にそのハードカバーの本はあった。
なにかその女の子の恥ずかしい部分を見るようなそんな興奮感と後ろめたさを感じながらその本を手にする。
コンピューターにパチパチと自分が借りる本を入力した。
それをカバンの中に忍ばせる。
「すいません。もういいです。」
そう俺はその上級生の図書館の暗さに溶けていきそうな白い肌をみることなく、図書館を出た。
少し雨が降っている。
やや肌寒い。
図書館の脇にうえられているソテツの木は久しぶりの雨に身を震わせるように、その葉は雨の露をはじく。
傘は持ってきていない。
さてどうやって帰ろう。
そうやってぼうっとしていると、横にあの眼鏡の女の子がいた。
彼女も傘は持ってないみたいだ。
「本好きなんですか?」
唐突に彼女に聞いた。
なんだか話しかけてみたくなったのだ。
少し驚いたような顔をした。
そして少し間を空けて。
「好きよ」
と少し微笑みながら彼女は答えた。
まるで大切な思い出を話すかのようなそんな微笑みだった。
本当に本が好きなんだなと、なぜか思った。
「俺松本って言うんですけど、名前覚えてますか?」
「ええ。亘君でしょ。」
「覚えていてくれたんですね。」
「漫画が好きなのね。」
「ええ。まあ」
そういった会話をした。
なんだかうれしい気持がした。
自分のことをみていてくれたんだ、という思いのせいもあるが、彼女があまりにも可憐に見えたせいもあるだろう。きれいな女性と話すのはうれしい。また彼女は今までに出会ったことのないようなタイプの女性だとも思った。
「私行くから。」
そう彼女は言うと、雨の中に入って行った。
「じゃあね。」
そう俺の方を向いて言うと、雨の中小走りでかけて行った。
名前聞かなかったな。
彼女の口から名前を聞きたい、と思った。
雨の中なぜ彼女は濡れて帰ったんだろう。
なにか用があるのか。
それともただ単に濡れて帰りたかったんだろうか。
俺も濡れて帰りたい気持ちだ。
俺は雨の中へかけ出していた。
読んでくれてありがとうございました。