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No.7 リンゴの葛湯

「ねぇねぇ、君、なんて名前なの」

「邪魔だ、去れ」


...行き場のない手...。


「あ?何だよ、手とか差し伸べて。さっさとどっか行け」


...こ、心、折れそう...。


と、なるとでも思ったか!!!

ブラック企業で鍛えた鉄の精神は生半可なものじゃないのだ!ハッハッハッ!!


「じゃあ、これ置いて行くね」


果物屋で買った果実を一つ、置いて『学校』へと向かった。これで、何回目だろう。もう、日課になりつつある。


「...ふん...」


その男の子は、名前も名乗らずに、只此方を見据えて佇んでいた。そして、その間、一回も打ち解けようとした様子は無かった。



***



何で、あの男の子はあんなにも、大人に警戒心を抱いているのだろう。


いや、大人にだけではないのかも知れない。只、打ち解けようとする様子もなく、常に一方手前から見ているような少年だ。


まるで、最初のナウット君みたいな...。


「...お菓子、作ってみようかな」


最初は、村の人達ともそうやって仲良くなった。それに、お菓子を作ったら、日頃いっつもああやって頑張っているあの少年も喜ぶかも知れない。


だって、いつも路上でああやって『ショー』をして...、寒いだろうし、きっと辛いだろう。


寒いんだったら、何か、温まるようなものの方が良いかな...。


「だとしたら、リンゴとか果実を使って...、葛湯でも作ろうかな」


うんうん、きっとそれだったら、彼も温まるだろう。しかも、美味しいし。


さて、早速作りましょう!!


***



「...お兄、ちゃん」

「コヘラ、辛いなら喋らなくても良いんだ。大丈夫、兄ちゃんが必ず病院に連れて行ってやる...!」


「...でも、お兄、ちゃん、お金ない...よ。だから...大丈夫、だから...」

「そんなこと...。俺、兄ちゃん稼ぐよ!お前の為なら、何だってする!!だから、安心してくれ」


お前の、コヘラの為なら、何だって...。


『その出来損ないを連れて、さっさと出てお行き。お前の母親になりたくてあのおじさんと結婚したわけじゃないんだ』


継母の言葉が脳で反芻される。


『...早くどっか行ってよぉ、あたしこの財産頂いたら後は要らないしぃ』


お義姉さんがそう言う言葉が、頭に浮かぶ。


俺は、あの時誓ったんだ。


アイツラに言われて出て行ったんじゃない、俺から出て行ったんだ。そして、俺だけでコヘラを、小さな妹を世話してやるんだ、と。


俺は、あの時思ったんだ。


大人なんか、子供だって、周りの人は信用出来ない、って...。


だから、あの女が話しかけてくるのも、理由があるんだ。優しさなんかじゃない、それにはきっと汚い理由があるんだ。そうだ、きっと俺のことを憐れんでいるんだ。


「...皆、皆、用済みになったら俺のことなんて捨てるんだ...」


乾いた空に、ポツリと呟いた言葉が響いた。



***



「...『ショー』見ていって!」


やばい。今日はまだ、全然稼いでいない。

早く、稼がないと、妹が、コヘラの病院代が...。


「はぁ...はぁ...」


空気が冷たい。寒い。


眼の前を通る、綺麗な毛皮の服を纏った女性と、その横で談笑する男性をじっと見つめる。暖かい服を着込んで、美味しいご飯も食べれて、毎日働かなくても、生きていける生活を手にしている人達を...。


何で、俺は何も手に入らないんだ。


世の中には、義姉さんや継母のような屑だっているのに、何で...。


「...そこの君、ちょっと路地裏に来てくれないかい」


暖かそうな服を着た、帽子のおじさんが声をかけてきた。


「あ゛...」


腕を引かれるがまま、路地裏におじさんと入った。グッ、と手首を掴む。


「何...すんだ」

「...君だって、何をするかぐらい分かるだろ?金はあげよう」


汚ねぇ。汚ねぇ。


心底汚ねぇ。吐き気がする。こんなおじさんに、そんな眼で見られているのだって、吐き気がする。


でも、お金の為なら...。

これで、コヘラを救えるのなら、別に...。


「好きに、しろ...」


俺だって、汚ねぇよ、こんなん。


...俺だって、街の子供みたいに、綺麗な服を着て、毎日楽しく...。


「...楽しく、生きてぇだけ、なのに...」


涙が一筋落ちた、その瞬間。視界が暗くなったと思ったら、「何してるの!!!!」と叫ぶあの女性の怒声が響いた。



***



「...おい、誤解だ、待てッ...」

「何の誤解か知らないけどね...!!!」


こんな、子供の上にまたがっている男性なんて...!


「ろくな野郎じゃないんだよッ!!!!!!」

「ひぃぃぃぃ!!」


ばすんっ、と近くにあった箒で頭を叩くと、男性は下半身丸出しの状態で、表の路地の方へとかけて行った。と思えば、大きな叫び声と「警察ー!」と言う声が聞こえる。


どうやら然るべき罰はこれからたんまり受けることになりそうだ。


「...大丈夫!?」

「うるせぇ...お前なんかに助けられなくても、良かった...」


ぐすぐす、と涙を流して泣きながら、少年はそう言った。


「でもっ...」

「どうせっ...お前だって、俺のこと、憐れんでんだろ...。大人なんか、皆...それで、要らなくなったら、捨てて...」


...。


この少年は、一体、いくらの負担を背負ってきたんだろう。

一体、どれぐらい苦労したのだろう。


辛くっても、大人に頼れなくって。


「...ううん、憐れんではないよ。私は、君のこと、要らなくないよ」


だから...。


「もっと、大人のことも、頼って良いんだよ」


君はきっと、責任を背負いすぎたんだよ。

息抜きだって、必要なのに、気を張りすぎたんだよ。


「でも、俺、お前に沢山悪口言って...」

「えへへ、私は悪口日々言われていたから、君の悪口なんてなんてことないよ」


にっこりと笑うと、彼はぐすぐす、また泣き始めた。

えええっっっっ、ど、どうしよ、何か、彼を安心させる...。


「あっ、そうだ、リンゴの葛湯、いる?作ってきたんだよ」

「...いる」


...あれっ?

あれええええええええええええええ!?


また、泣き始めた!?!?


な、なんで...ま、まさか、不味かった...?


「ごっ、ごめんねっ、不味かったかも...」

「ううん、違う...」


これは嬉し涙だから、と呟く。


「...暖かい」


ふんわりと、リンゴの匂いが漂っていた。

どうもお久しぶりです、作者です。

最近ずっと忙しくって、中々時間が取れませんでした。...自分の作品に対して、瞋恚!!(言ってみたかっただけです)


そう言えば、友達が「お前何なの?少年嗜好なの??」とか言っていたので断言します。


『違います』


それでは、また会いましょう。

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