No.6 男の子
「...以上で授業は終わりで〜す...。あっ、新しい生徒は居残りでねッ」
可愛い声とは裏腹に、イオタは厳しい眼差しを向けてきた。
対する私、撃沈。
それもそのはずで...。
***
「...じゃ、『魔法基礎学』を始めま〜す」
「「「...」」」
...。
??????????????????
えっ、何、『魔法基礎学』って???????
「...まず、『ルネの福音』から話しましょ〜」
えっ?
ルネ???
何それ?
***
...と、なっていたわけです...。
そして、イオタと一緒に教室に残っている冒頭部分に話は戻る。居残りとか、高校生で一回あったきりなんだけど...。
「...サトミ」は、何を学びに来たの?」
「えっ...だから、先生になる...」
「だから、それはなんで?なぜ、サトミは先生になりたいの?」
...なんで、私が先生になりたい、のか...。
村の子供達に、自分の知識だけじゃなくて、他の知識も教えてあげたい。出来れば、イェゴ村だけじゃなくて、他にも貧困から脱出出来ない子供達を助けたい。
私、は...。
「...子供達を、貧困から救いたいんです」
イオタはそれを聞くと、意外にも眼を見開いて驚いた仕草をした。
「そ...っか」
イオタが、空を見上げてまた視線を戻す。
「サトミは、優しいんですね」
「えっ、なんで...」
「貴方、王都を歩いている途中、路上で芸をしてお金をもらっている人、見ませんでした?」
あっ...。
確かにいた。歌っている人とか、ボールジャグリングをしている人とか、皆芸は様々だったけれど。
「...あれ、全員まだ子供なんですよ」
...。
イオタが言いたいことを、唐突に理解した。
貧困層にいる子供達は、親から出稼ぎに行け、お金を稼げと言われる。勿論、勉強など出来るはずがなく、日々の生活に手一杯だ。そして、その負の連鎖はきっと続いていくのだろう。
「少なくとも、この国には色んな事情を持った、色んな人がいるんです。貧困に喘ぐ人だって、差別に苦しむ人だって」
「...」
「あら、話しすぎました。それでは、また明日」
先程までの、可愛い口調ではなく、どこか冷めた口調でそう彼女は言い切った。
何を思ったのだろうか、表面上の微笑みを向けながら、イオタは去って行った。
***
...貧困に喘ぐ人だって、差別に苦しむ人だって。
イェゴ村以外にも、いる。
「...だったら、助けなきゃ」
きっと、ナウット君だって、レーナちゃんだって、キッシュ君だって、他の子供達だって、そうして欲しい、って願っているはず。
その為に、今私がすべきことは...!
「...ねぇ、そこの君!一緒に、勉強しない?」
路上で『ショー』をしている、一人の男の子にそう声をかける。
名付けて、『当たって砕けろ!玉砕作戦!』である。
「...はぁ?何だよ、『勉強』って。邪魔だから退いてくれ」
男の子は、厳しい一瞥を投げると手を振って『どっか行け』のポーズをとった。石や木の枝など、そこら辺に落ちている物を組み合わせて作った楽器を手に、「さぁーっ、皆見ていって!」と掛け声と共に歌い始める。
「まっ、待って!!」
「あぁん?」
男の子はそう呟いた後、慌てて周りを見渡して、「ちょっと一旦中断するね!」と叫んで路地裏に引っ張った。暗い路地裏の中で、男の子が此方を睨む。
「おい、お前、一体どういうつもりだぁ?邪魔すんな、っつったろ」
「えっと、あの、話があって」
「俺はお前に話なんてねぇよ。さっさと視界から消えろ」
ドォン、と壁を蹴る。
足ドンって、されてみたいなぁ、とかラノベを読みながら思っていたけれど。
こんな時に、されたくはないよ!?!?
「あのッ、勉強をしたら貧困から...」
「知らねぇ、去れ。...お前みたいな奴、俺は大嫌いだ」
そう言って、「次邪魔したらタダじゃおかねぇ」と首を指でなぞって脅してきた。
...。
......。
.........。
............何で私のこと、嫌いなの!?!?
***
「デリカシーがなさすぎた?それとも、別の理由?」
「だっから何でお前は俺に言ってくるんだよ!?」
ジョンさんが呆れたようにそう叫んで、此方を見た。だって、この時間帯に起きてるの、ジョンさんだけなんだもん。って、あれ、デジャヴ??
「お前、そんなに果物食べ過ぎんなよ...」
でも、私が買ってきたんだしいいじゃん、別に。
ガジガジ、と果物を食べてじぃっと見つめる。
「...それで、お前が言ってたことだけど、多分理由分かる」
「えっ、分かった?何で!?」
「...空気読まねぇところとか、デリカシーなさすぎなところとか」
「...」
くっ、空気、読んでないっ?
私...もしかして、『KY』とか呼ばれる人に分類される??
...思い返してみれば、会社の上司には「空気読んでよ、まだ帰っちゃ駄目、ノルマ追加ね」と言われていたし、(でもブラック企業だったしそんなに例にはならないけど)友達には「そんなんだから彼氏出来ないんだよ〜」とぶっちゃけられるし。
その度に、「いやいや、空気は読めないし」とか思っていだけど...。
「...KYすぎる...?」
「はぁ?けーわい?何か知らねぇけどさ、取り敢えず」
「取り敢えず?」
「お前がやりたいこと、やってみたら。あの二日酔い野郎もお前に振り回されながら、何だかんだ楽しそうだったじゃねぇか。やってみろよ、好きなこと」
ジョンさんはそう言うと、「『モンスター討伐』行ってくる」と出て行った。
ふむ、あの容姿でも、どうやら人を慰めるのは一級品らしい。ズズズ、とお茶を啜ってから、考えた。
...私が、やりたいこと...。
「...よしっ」
思いついた。あとは、実行に移すのみ!
ほら、言うじゃない??
「思い立ったが吉日、だよね!」
どうもお久しぶりです、6日ぐらいぶりの作者です。
サトミは一体何を考えたのでしょうかね?
男の子がすっごい邪魔そうにサトミを見ていましたけど、解決出来るのでしょうか。
この話ぐらいまでは、物語の核心の前置き...ぐらいと思ってくれて全然大丈夫です。
そう言えば、作者は今日掃除をしました。
部屋を掃除したはずが、逆に物が紛失したり、ゴッチャゴチャになったりするという大事件が起きました。なぜ、掃除をしたのにこんなにも部屋は汚れるのでしょう。
不思議です。
それでは、また次の話で。




