閑話 サロネちゃん
「...ルイス、君」
そう呟くと、顔が一気に真っ赤になった。ぼぉぉ、と燃えてるように熱い。
「??」
何なんだろうなぁ、この気持ち...。
今まで、家族が怖いとかいう恐怖や、狩られる猛獣達が可哀想という同情などはあったのだが、こういう気持ちを味わうのは多分、初めてだった。その割、ドキドキした気持ちは他の気持ちにも似ていたりもする。
サロネ・モルダッダ、齢9歳の、初めての恋が幕を開けた。
***
〜♩〜♬
「あっ、お早う、『木もどき』」
そう言って、目覚まし代わりの『メイコスリ』に触れる。『もどき』がどういう意味なのかは分からないけれど、サトミがよくそう呼んでいるんだし、大丈夫かな。
「ぴゃあっ、痛いよぉ、もお」
まあ、呼んだら必ず叩いてくるし、お気に入りな訳ではないらしい。
髪を梳かして、顔を洗って、身支度を整えると、朝のお掃除。まだ皆は農作業をやっていて、学校には来ていないので、さっさと済ませようと箒を片手に部屋を歩く。鼻歌交じりのお掃除は、何気に好きなんだよね。
「ふんふんふ〜ん...」
そう静かに口ずさみながら、今度は窓拭きをしたりとか、机を拭いたりとかする。やらなくてもいいよ、なんてサトミが言っていたけれど、住ませてもらっているのだし、少しはやっぱり手伝ったりしなきゃ、ねぇ。
ど、れ、み、ふぁ、そ。
「...」
眼の前に、箒がある。だ、誰もいないし、ちょっとだけ、良いかな。
「雪の〜中、...ららら〜...」
前に、住んでいた王都の街路で聞いた音楽を思い出して、歌う。そう言えば、彼処で歌っていた女の子、すごく綺麗だったなぁ...あまり、此処らへんでは見ないような、明るい緑色の目をしていて...。
「...サロネ?」
「えっ...ルイス、君!?」
箒を手にして、ポーズを取っていた私は、眼の前にいるルイス君を見て、あ然とする。瞬間、顔が真っ赤になってしまった。
「なっ、何でもないのッ、あ、えっと、ほら、歌じゃなくて、掃除をね!?」
「えっ、歌?」
ああああああああああああああああっっっっっっ。
もしかして、これはサトミが言う『墓穴を掘る』では???
失敗した...。
「...掘った墓穴に埋まりたいよぉ...」
「えっ、何の話」
あ然呆然と立ち竦むルイス君。
そりゃあそうだよね、うん。訳わからないよね、本当にごめん。
「...ははっ、サロネは面白いね」
笑うルイス君。
...何だろう、心臓を鷲掴みにされた、気が...。
「私、もう心臓取られて死ぬかも...」
「えっ?」
だぱぁ、と涙を流してそう呟く私を見て、ルイス君が「もう、泣かないの」と涙を拭った。
...ドキドキ?
そんな思いが、した気が...。
「どんな気持ちなんだろう...」
「何が?」
「...ううん、何でもないよッ」
にっこりと、微笑んだ。
はい、今作者が一番書きたがっている(?)閑話の登場です。
サロネちゃん、乙女なのだけど、まだ恋という言葉を知らないので、気持ち描写は出来ていません。まだまだ未熟者です。まあ、サトミが恋とは何か(哲学かな?)について教えそうですけど。
ちなみに、サロネちゃんは9歳、あとのレーナちゃん、ルイス君、ナウット君、キッシュ君は10歳です。
意外と皆幼いね、でも皆頭は良いです。(というか成長力が)




