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No.22 薬研

「おっはよう御座いまぁーす!!!」


カンカンカン、とフライパンをおたまで叩いてそう叫ぶ。勿論、アヘル子爵がいる部屋でだ。大きな声で叫び続けていると、やがて彼は怒りながら起きる。


「うっるさい、下賤の者!!タルヤ、助けてくれっ...」

「タルヤは王都に行きましたよ、今日から私が世話を見ます」

「なっ、きっ、貴様がッ...!?」


うふふ、驚いている、驚いている。

まあ、無理もないか。


全然主人を敬わない世話役だなんて、きっと彼からしたら考えられないことだろう。


「さぁっ、農作業しましょうか。丁度刈り入れ時ですよっ」

「だから何というのだ、手伝うものか!そういうのは下賤者の仕事だ!」

「...じゃあ、働かざる者食うべからずということで...」


持って来ていたご飯のお膳を、オーバーオールと共に持って行こうと立ち上がる。アヘル子爵の唇が、苛立ちでわなないた。


「ーーっっ、分かった!農作業する、その代わり早くご飯くれ!」

「はい、了解です。ちゃんと食べて下さいね」


サイドテーブルに置くと、脇目もふらず食べたアヘル子爵は、食べ終わると「眠くなった」とか言ってベッドに篭り始めた。くっ、やっぱり一筋縄ではいかないかっ...!?


でも其処で第二のプラン!!


「子爵、お紅茶好きですよね」

「...何故貴様が知っている」


タルヤから聞きました、えへへ。

ま、まあそこら辺は置いといて。


「村にお紅茶、ないと思っているでしょう?あるんですよねぇ、すっごく美味しい紅茶...」

「なんだと、こんな下賤村にあるわけ...」

「多分、アヘル子爵だって見たことない紅茶ですよ、珍しいんです」


特産品って、人を引きつける何かがあるよね。さあ、どうだ、引っかかるか!?


「...あああっ、分かった、農作業をしよう」


よっしゃあ!!


流石タルヤ、貴族の引っかかるポイント、ちゃんと分かってるぅ!!

やっぱ、紅茶ってすごいよね、こんなにも人を動かすんだし。


「じゃあ、此方のオーバーオールに着替えて下さい。あっ、着替えは出来ますよね?」

「馬鹿にするな、さっさと何処か行ってくれ給え」


グチグチ言いながらも、オーバーオールを着ようとボタンを外すアヘル子爵。うん、一応やる気は出たみたい。良かったぁ。


「着替えましたか?じゃあ、農作業しましょう!!!」



***



「うーん...」


あれ、待って。


もしかして、道具とか持てない?重い??


「子爵、もしかして力弱い...?」

「うるさい、黙れ!これが重すぎるのだ!」


しょうがないなぁ、他に、うーん...。


「あっ、レーナちゃんのを...」



***



「レーナ・ボネットです。よろしくお願いします、えっと、アヘル...さん?」

「...ああ」


レーナちゃん、めちゃくちゃ丁寧。

それでいて、おじさん、『よろしくお願いします』も言わないで、めちゃくちゃ失礼。大人気なーい。


「じゃあ、あの、もう乾燥してある『ウスベニアオイ』を『薬研』で粗めに挽いてもらっても良いですか?あと、『レモンパイ』も一緒に作りましょう」

「...『ウスベニアオイ』?『レモンパイ』?『薬研』とは一体?」

「えっと...」


たじたじなるレーナちゃん。それもそのはず、年上の、いきなり会ったおじさんに質問攻めをされたら堪ったものではない。


「『薬研』はこれです、あと、『ウスベニアオイ』は乾燥した花で...『レモンパイ』はお菓子です」

「お菓子ィ?そんなものがこの愚民村にぃ?」


そう言いつつも、レーナちゃんが持っている『薬研』に釘付けになるアヘル子爵。どうやら、『薬研』は此処にはない物らしい。とは言っても、こんなに不格好な何かを『薬研』と判断するには、些か無理があるのかもしれない。


聡美が、ものをごりごりする際に必要なのはなんだろうと考えた時に思いついたのが、昔の人が薬を作るために使っていた『薬研』だったが、社会の教科書うろ覚えで生きてきた聡美には、記憶の彼方に行ってしまった『薬研』の形を思い出すのは至難の業だった。


「じゃあ、使い方を教えます。まず、これを...」


そう言って、『薬研』を構え、おじさんに教えるレーナちゃん。流石癒し系、教え方が上手なのは言わずもがな、おじさんの空気がちょっと緩んでいる。


「...まず、『薬研』でこの花を挽きましょう。粗めでお願いします」

「ああ...これぐらいか」

「はい、そうです。とっても上手ですね、何か経験したことがあるのですか」


レーナちゃん、しかもおだて上手。


「...これぐらいかな」

「有難うございます。では、次の...」


和やかな時間が流れる。うん、これなら、大丈夫なはずッ...。


「「「レーナぁぁ!」」」


その時、ちっちゃい、まだ7歳程の男の子達が、レーナちゃん目掛けて突進してきた。プレゼントだ、とばかりに、森に咲き誇っている花の花弁を辺りに撒き散らす。


「ハハハッ、レーナ、引っかかったぁ...」


あっ、やばい...。


アヘル子爵が、お怒りだ。

はい、レーナちゃんの本名はレーナ・ボネットでした!!

レーナちゃん、可愛らしい名字をお持ちです(あくまでも個人的見解です)


やっぱり、レーナちゃんは癒し系なんですねぇ...おっさん、メロメロです。


そういえば、友達に「分かんねぇよ説明しろよおっらぁ」と言われたので補足を入れておきます。この世界に、お菓子が無いわけではないのですが、砂糖や甘味は大変貴重なので、此処では貴族(公爵レベル)や王家しか食べれません。


聡美達は、熊の『ベア君』が蜂蜜を取ってきてくれたり、モモンガの『モモちゃん』がサトウキビ等を取ってきてくれるため、甘味に困らないのです。


***


2,000PV突破しました。嬉しさ驚きが紙一重です。

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