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No.20 子爵

「はいっ、じゃあ皆、紫キャベツの汁出したー!?」

「「「出したーッッ!!」」」


ふう、第1段階は取り敢えず成功。


歳が小さい、まだ6、7歳の子は服を紫色に汚しているけれど、皆上手い具合に汁を取り出している。これなら、アルカリ性と酸性の実験も上手くいきそうだ。


「ナウットぉ、この服、紫色に汚れちゃったよぉ...」

「うんうん、後で残った紫キャベツを千切りして、草木染めしようね。そしたら、綺麗な紫色に染まるから」


あいっかわらずやばい奴いるんだけどね!!!

大体、草木染めとか工程結構難しいのに、するわけぇ!?


ほんと、良い意味で頭おかしいよね、ナウット君。


「はーいっ、じゃあ皆、石鹸水とレモン汁に紫キャベツの汁を入れてみてー!」

「「「はーいッ」」」


入れてみて、かき混ぜる皆。


「「「わぁっ...」」」


色が変わって、石鹸水は青色に、レモン汁は鮮やかな赤色なる。それを見て、皆が頬を緩めて「実験成功だね」と呟いた。


「はい、じゃあ皆、実験結果を書いて...」

「サトミ、タルヤ様とお客様なの!!!」


...はえ?



***



「ようこそいらっしゃいました、アヘル子爵」

「うむ...苦しゅうない」


...あのっ...。


あのっ、あのっ...。


「アヘル子爵、此処におかけ下さい」

「どれも革製ではないが...致し方ない、座ろう」


...誰?


アヘルししゃく?とかいう人に話しかけているタルヤに、無言の視線を送る。誰だよ、こいつ、と。ところが、彼は此方を見てウィンクをすると、またアヘルししゃくと話していた。


...いや、無視しないで!?

私、ウィンク求めていた訳じゃないよ!?


「タルヤ...お前は、私の頼りだのぉ」

「身に余る光栄で御座います」

「ふむ...願いがあって来たのだか、そなた等なら喜んで子爵の願い、受けてくれるだろう...」


えっ、何この世界観。


タルヤ、めちゃくちゃ敬語。それでいて、ししゃく、めちゃくちゃ上から目線。何者?ちょっとイラッとくる話し方してんなぁ。


「あの、説明してもらってもいいですか」


やっと手を挙げてそう聞くと、そこで初めてししゃくはこちらに気付き、「そなた、誰だね」とぽかんとした顔で質問した。口を開く前に、タルヤが「サトミという、村民です」と助け舟を出した。


「あのね、サトミ。此方におかけになるのは、アヘル子爵。訳があって、この村に逃げなきゃいけない状況になったんだ」

「そうじゃ...ああ、思い出すだけで腹立たしい...あの狐男爵め、この俺を陥れておって...!!」


あ、ああ、な、成程?


つまり、このおじさんは誰かに陥れて、加えて今の状況だと危ない状況、なのか。

逃げてくるってことは、暗殺とかが一番理由としては相応しいのだろうか。


「...兎に角、少しの間此処にいるだけで良い。その代わり、俺は子爵なのだから...それ相当の、対応をしてくれ給え」


...はぁ?

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?


此奴、自分の立場分かってないの?

頼む立場なんだよね!?


「取り敢えず...俺は暫し、休もう。後で、デザートでも用意してくれ給え、ご飯は欲しゅうないのでな」


皆が汗水流して作物育てて、皆が頑張って勉強して、そうやって何とか生きているのに、こいつ、休む上にデザートを所望???


なんて野郎なんですかああぁぁぁぁあぁぁっ!?



***



「あの人は、アヘル子爵と言うんだ。オズノワ家9代目当主だよ。特別なお家柄なんだ」

「でもっ...あの言い方、良くないんじゃない!?」

「...ああ、サトミには説明していなかったか。あのな、この世界にはこういうルールがあって...」


そう言って、タルヤが説明してくれたルールは、まさに驚きだった。


この世界では、村民や町民などの所謂一般人、それから爵位を持つ家達、最後に王家で国が編成されていた。


上の位の順から、公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵という名前があるらしい。それぞれの爵位が与えられた家には、その爵位に相応しい権限が与えられる。例えば、減税といった類のものから、特別待遇を受けるというところまで。


只、その爵位を貰うには、先人の家の人達の努力が積み重なっていないと駄目らしく、昔からある良家、所謂すごいお家柄の人達しか持てないらしい。


「ちなみに、サロネのモルダッダ家は、伯爵だな。ハンター家としては、初の爵位だ。非常に稀なケースで、偶に王家や国の発展に尽くした家が貰えるからな」


ま、まじですか...。


でも、なんであんな態度悪い奴に従わなきゃいけないの!?


「それが、アヘル子爵の権限なんだよ。自分より、下の相手には尽くしてもらう、というアヘル家特有の特別待遇だ」


はぁ!?


でも、でもっ...。


「それって、村民とか、私達が困るじゃん!!」

「...仕方ないんだよ、じゃないと死刑だ」


諦めたように、そう笑うタルヤ。


不条理だ、と思った。

でも、どうしても、抗えない壁があるのだと、此処でも痛感させられる。


ぎゅっと己の拳を握ったまま、サトミは其処に立ち竦んだ。

いやぁ、またまた新キャラ登場ですねぇ!

クセ強そうなキャラですねぇ!(そっくりそのまま自分に帰る)


ハイテンションを貫いております、どうも作者です久し振り。


アヘル子爵は、若い頃はイケメンでもててたらしいのですが、振り続けた挙句女性が皆去って行って、今の状態になりました...あら可哀想。


ちなみに、モルダッダ家の権限は、『好きなだけ猛獣狩らせろ』『猛獣を狩る分金銀財宝くれよおっらぁ』です。(こんな口調で言ってはないです、きっと)


サロネちゃんは気付いていないけれど、貴方のお父さん、まぁまぁ良い爵位お持ちですよ。

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