No.16 迷子
「...」
ぼんやりと映る視界を、徐々に慣らしていくと、聡美は首をゆっくりと横に振り、辺りを見回した。
あ、あれ...?
私、なんでベッドに...?
「...サトミ!?大丈夫か!?」
横で、うつらうつらしていたナウット君が、此方を見て叫ぶ。その後には、キッシュ君にレーナちゃん、それから他の子供達が心配そうに、此方を見つめていた。
「う、うん、大丈夫...。えっと、一体何が...」
「...サロネとかいう奴が、お前のことを突き飛ばしたんだよ。それで...机の角に当たって、血が出た」
「血、血!!!???」
えっ、えっ!?
そ、そんなことが...。
あれ、でも、サロネちゃんは?
「...サロネなら、どっかいったよ。アイツ、責任に耐えきれず、逃げやがった」
「えっ、サロネちゃんが...!?」
「いいから、今は取り敢えず休め」
起きかけた躰を、ナウット君に制され、取り敢えずベッドに戻った。
でも...サロネちゃん、きっと土地勘も無いだろうし...それ以前に、あの森には、まだまだ懐いていない猛獣だって沢山いるのに...!
「無事で、いますように」
「え、なんて?」
「ううん、何でもないよ、キッシュ君」
ぼそりと呟いたその言葉、きっと誰にも聞こえていないはずだ。
なんて思っていると、ナウット君が、頭を撫でる。
「ど、どうしたの?」
「...俺も、そう思っているよ」
ナウット君が、少し微笑んだような気がした。
***
「ライ君...金髪の少女、見つかった?」
夜、ナウット君や他の子供達が寝静まった時間に、ライ君に話しかける。ライ君には、サロネちゃんを見つけるよう言っておいたのだ。
こくり、と頷くライ君。どうやら、見つけたらしい。
「何処に...いたの?」
くるり、と後ろを見て、東の方向に顔を向ける。ってことは、彼女は、今...。
「東の、森にいる?」
震えた声に、また頷くライ君。
嫌な予感が、当たった。
東の森は、まだ懐いていない猛獣が沢山いる場所である。しかも、タルヤが前に、彼処の辺りは一番恐ろしい所だと言っていた。何時、猛獣に喰われるかさえ分からない場所だと。
...助けなきゃ。
でも、タルヤがいないのに、どうやって?
自分は、『魔法』さえ使えない、間抜けで役立たずな異世界転生者なのに?
「...くぅーん」
犬のように鳴く、ライ君。
...そう、だよね。
ちょっと、というか、かなり怖いけれど。
「私とライ君で行けば、あっという間だよね...」
ライ君の背中によじ登ると、ライ君は一声雄叫びを上げて、東の方角へと向かった。
***
「サロネちゃーん...?」
東の森は、イェゴ村がある所と違って、森全体が暗い。それは、雰囲気的にも、位置的にも暗いからである。おまけに、危険な夜行性動物が多い。
早く見つけなければ...私だって、喰われる可能性もある。
「「アオーンっっっっ!!!」」
「!?!?」
狼の...雄叫び!?
しかも、あの独特な声は...!!
「ライ君、あっちの方向に向かって!早く!!」
あの独特な声は、獲物を見つけた時に発せられるものである。
***
「あ、あっ...」
サロネの見つめる先には、涎を垂らした餓狼が6匹。皆、此方を見つめて息を荒くしている。
モルダッダ家は、ハンターを生業として暮らして来た貴族だった。積み上げられた黄金、宝石、その他贅と趣向を凝らした贅沢品の下には、これまで狩ってきた猛獣達や、モンスター達の屍がある。
父は、母は、姉は、兄は、そのことを知っていた。
猛獣達や、モンスター達にだって、家族があって、それぞれの愛が、例え歪であろうとあることを知っていた。
でも、同時に彼等は、冷徹でもあった。
猛獣達や、モンスター達がどうであろうと、彼等には知ったことではない。代々ハンター家として名を連ねる彼等には、そんなこと等どうでも良く、名声や名誉にしか興味が無かった。
『猛獣等にも家族がいるぅ?何言ってんのよ、彼奴等なんていない方がマシよ』
『お前などに分かるわけがない、出来損ないの癖に出しゃばるなよ』
『ハンター家として生まれたのに、『魔法』も受け継がず良くもそんな口が聞けるな』
脳内で反芻される、姉達の声、兄達の声、そして父の声。
やめて、お父様。
私、頑張ったのよ。
『魔法学園』でも、『ハンター体験』でも、強力な『魔法』が使えれるよう、頑張ったの。でも、無理だったのよ。
お願い、私のことを、どうか見捨てないで...。
『...お前など、生まれなければ私は、アンタよりも優秀な子が産めたのに』
お母様の、憎らしそうな声。
あ、は、そ、そうだった...。
私が居なくなった所で、皆、皆...。
困りなんか、しないじゃんか。
「だったら、もう...」
一滴、涙が月に反射して、輝いた。暗い森の中で、此処だけが、月明かりで光っている。
「...喰われても、いっかな」
腕を、狼達に差し出す。
狼達に喰われても、家族に喰われるよりは、マシだよね...。
「サロネちゃん!!!」
...えっ?
今、誰か、私の名前をッ...?
「掴まって、早く!!!」
さっき突き飛ばした女性が、手を差し伸べて此方を見ていた。
作者、痛恨のミスをまたしてしまいました(訳、作者またデータ消しました)
ごめんなさいとしか言いようのないですね...。
え、サボってるから遅くなったんだろ、って?
い、いや、そ、そんなこと、は、あははっ...(汗)(汗)
サロネちゃんの家、モルダッダ家は、代々続く、ハンターの家柄です。めちゃくちゃ強いお家柄です。
何だか、『魔法』について、サロネちゃんが触れていましたが、その説明はまた後程。




