No.13 猛獣
「サトミ、言われた通り、『ワラビ』と『ゼンマイ』と『タケノコ』採って来たよ!」
レーナちゃん、流石有能っぷりを発揮してるね!!
『タケノコ』は、炊き込みご飯とかで食べるのはどうだろぉ...えへへぇっ...。『ワラビ』はアク抜きをしたら、美味しい味噌汁を作って、それで『ゼンマイ』でお浸しを作ったら、もう山菜料理のフルコースだよぉ...。
「サトミ...顔、崩壊しているぞ」
呆れるタルヤの声。おっと、危ない、美味しい料理を考えると、つい口が緩んじゃった。
うん、レーナちゃんもすごいけど、他の皆も、採集するポイントを掴んで来ているね!
「ナウット、この『ゼンマイ』って採っても良いの?」
「アラン、それは『男ゼンマイ』で、採ったら他のが生えなくなっちゃうから駄目だよ」
...相変わらず、やばい人が一人いますが。
ほんっとうに、ナウット君のあの成長具合はどうなの?おかしくない?何、天才ですか?
「...あのッ、サトミ」
「?何、ルイス君?」
「これ...さ、もしかして、食べれる?」
そう差し出したのは、一房の果実。
紫色の皮に、半分割れた実には、中にぎっしりと白色と黒色の何かが敷き詰められている。これって、もしかして...!
「ルイス君、すごいよ、これ『アケビ』だよ、甘い果実!!」
...あれ、でも、なんでこれ半分割れてんの?
しかも、ルイス君、なんか口周りに、黒い胡麻みたいのが沢山付いているよ。もしかして...。
「ルイス君、これ勝手に食べた?」
ギクッとするルイス君。やっぱり、食べたんだ!?
いや、別に果実を食べる分には良いんだけどね。でも、もしこれが『アケビ』とかじゃなくて、毒を持っている果実だったらどうするの!
「ルイス君、次からはちゃんと言ってから食べてね」
「...ごめんなさい」
「次から気を付ければ良い話よ、大丈夫。さ、山菜採取続けよー!」
「「「おー!」」」
子供達の張り切った大声を聞いて、ほっとする聡美。
...〜♩〜♬!!
「わぁっ!?!?」
低音で、けたたましく鳴る『メイコスリ』の音。これが、示唆するのは...。
「皆、学校内に逃げて!」
...猛獣が現れたという合図である。
***
「全く、学校が設立してから、早5日で猛獣が現れるだなんて!」
「まあ、落ち着けよサトミ、『防衛魔法』もしてあるんだしさ」
ミシッ、ピキッ。
...嫌な音がして、後ろを振り向くと、其処には大きな鬣を揺らした、何故か既視感のある猛獣が、『防衛魔法』で出来た壁に亀裂を入れていた。
ま、待って、『防衛魔法』があるんじゃッ...!?
というか、アイツ前に私を食べかけた猛獣じゃない?
って言うのは良いんだけど!!!どうでも良い話なんだけど!!!ね!!
「...ど、ど、どうしよ」
此処には、小さい子供達も沢山いるのに...。
皆、村の大人達が大切にしている、子供達。
こんな時、私がもっと、強力な『防衛魔法』が使えれば...!
...あれ、でも、猛獣襲ってこない?
それどころか、犬みたいにお行儀良く、座って此方を...伺っている?
もしかして、彼...。
「おい、サトミ!?『防衛魔法』から出ちゃ駄目だ!」
大丈夫、だよ、た、多分。
だって...。
「この子だって、腫れ物扱いされるのは嫌だよね、きっと」
猛獣だというだけで、逃げられたら悲しいよね、きっと。
襲ってこない、ってことは、もしかしたら遊びたいだけなのかもしれないし。
...ちょっと、怖いけど。
「...『アケビ』、いる?」
カタカタと震えながら、『アケビ』を差し出す聡美。
明らかに『防衛魔法』の外に出ている、今の瞬間は猛獣にとって、格好の的である。もし、失敗したら、腕一本を噛み千切られ失う。
それは、ちょっと嫌だ...けど。
「甘くて、美味しいよ」
微笑んでそう言った聡美を、じっと見つめる猛獣。張り詰めた空気が、辺りを循環する。やがて、猛獣は聡美の腕に近づいていった。
(何をしているんだ、サトミ!!)
タルヤの経験上、あれに食われた人は沢山いる。しかも、とても凶暴で、一度噛んだら離さないぐらい顎の強度も強い。あれに、腕を差し出す行為は、『自分を食べてくれ』と言っているような行為である。
口が、どんどん自分の腕に近付いていく。
こ、怖い、か、も。
ドクドク心臓が鳴っている。猛獣を改めて近くで見ると、やっぱりちょっと怖い。
「...」
数秒の沈黙の後、『アケビ』を食べる猛獣。咀嚼音が聞こえた後、その猛獣は雄叫びをあげた。
「...美味しい?」
こくり、と頷く猛獣。此方に来ると、躰や鬣を摺り寄せて、ゴロゴロと甘い声を出す。よ、良かったぁ...。
「タルヤ、大丈夫だよ、この子」
行き場を失った手を伸ばして、無言になっていたタルヤが、「お前ッ、噛み千切られたらどうすんだ!」と叫んだ。
ご、ごめんなさい...。
「でも、この子良い子だし、子供達にも触らせてもいいよね?生態系を教えるのに、良いと思うんだ」
タルヤがしょうがない、と言うふうに頷く。
「じゃあ、君もおいで」
『防衛魔法』の壁を超えて、猛獣を中に引き連れて、微笑みかけると、その猛獣が一瞬、笑いかけたような気がした。
最近1時寝が多いです、どうも作者です。
ルイス君は、キルシュナーさんに惚れている少年で、前にも出て来ていますが、実はさり気なく新しい子供キャラ、『アラン君』を出しています。アラン君は、7歳ぐらいで、面倒見の良いナウット君に懐いている...少年みたいな...。
猛獣って、怖いですよね。自分だったら、腕を差し出すとかどう考えても無理です。小説のキャラにはやらせているのに。聡美が激怒しそうです。
もう少しで、新しいキャラを出したいです。
では、また次の話で。




