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閑話 キルシュナーさん再び

「俺...レーナのことが、好きなの?」


うん、分かっていた。


キッシュにだって、何時か自分にとって好きな人が現れるということに。それは、別に駄目なことじゃなくて、寧ろ正当な感情だ。


私の方が、感情としては駄目な感情なんだ...。


だから、覚悟もしていたのに。


いざ、頬を真っ赤にしてレーナちゃんのことを考えているキッシュを見ると、何だか苛立ちとか、涙とか、そんなのが一気に込み上げてきて。


私だって、キッシュが好きなのに、兄弟というだけで土俵にさえ立てないの。


何で、何で、本当に好きなのに...。


「...そうよ、キッシュ。だから、沢山大切にしないと、駄目よ」


即席の笑みでそう返した言葉を、キッシュは慎重に見守っていた。笑顔を作りそこねたかもしれない。


キッシュは、可愛い。


其処に、私には何の疑問もない。


例えそれが歪んでいようが、何だろうが私はキッシュのことが好きなのに。


...こんなの、不公平だよ。


生まれによって、最初から、私の方が好きだったのに、彼は私のことなんて選択肢にも入れてないんだよ。


ねぇ、キッシュ。


あのね、もし、私がさ......。


「私が、もし...」


お姉ちゃんじゃなかったら、キッシュはこっちも見てくれたの?

私、キッシュのこと好きだよ、って伝えたら、キッシュはこっちも見てくれたの?


私が、もし...。


「...そうよ、キッシュ。だから、沢山大切にしないと、駄目よ」


震える声でそう言うと、私は洗濯物を集めた。


そう口にすると、自分の気持ちが壊れていくような気持ちもしたが、取り敢えず此処から逃げれるような口実が欲しかった。


彼の洗濯物を見ると、一年前の自分が、下手なりに頑張って施した花の刺繍。キッシュは多分、気付いていないのだろう...この花の刺繍にも、この私の気持ちにも。


一年前の、健気にキッシュを影から支えていた自分が思い出される。


でも、キッシュだって、普通の男の子なのだ。


気を引こうと、キッシュを傷つけたりしてしまった、自分が悪かったのだ。きっと、キッシュは私のことなんてちっとも好いていない。


沢山、キッシュのことを傷つけることしか、気を引く方法が分からなかった自分。


もう、終わりにしよう。


これ以上、キッシュを私の呪縛に捕え続けることは無い。


せめて、最後は、キッシュの姉らしく、彼の幸せを願って、見守ってあげよう...。



「...あれ、なんで、涙なんか...」


涙が頬を伝い、あの日花の刺繍を施した服に、滑り落ちた。


閑話、キルシュナーさんサイドです。

本当は、本編を書こうかな、と思っていたのですが、閑話が溜まっていて消化しきれないので、もう一話だけ連続で閑話投稿しちゃいました。

本編、そろそろ頑張りたいです(でも閑話の方がタイプが進むこの不思議感...)


キルシュナーさん、何だか可哀想に思えてきました...(あんなにショタコンでブラコンでSだったのに)


続く閑話、今度は誰を主人公でいきましょうか?

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