No.10 体積の問題
「はーい、皆、勉強進行状況をどうぞー!」
「レーナ、今『鶴亀算』です!」
「キッシュ、『台形の面積』!」
「ナウット、えーと、『四分位範囲』」
...。
......うん、一人やばいのいるね。
でも、皆も良いペース!!レーナちゃんとか『鶴亀算』まで進んだし、一番子供達の中で進みが遅いキッシュ君でさえ、もう『台形の面積』だよ!!
ただ、一人問題なのと言えば...。
「『体積』の原理とは一体何なのだ?」
...ずっと、先程から『体積』の問題で躓いているタルヤである。
というのも、聡美が地面に文字を書いて教える、通称『青空教室』は聡美が個人個人の進み具合をチェックし、オッケー判定が出たら次のレベルに行けるのだが、そうじゃなければやり直さなければいけないシステムなのだ。
そして、いきなり『体積』からやりたい、と言ったタルヤに、問題を準備した聡美であったが...。
無理だよ、いきなり算数をやったこともない人が、『体積』の問題なんて...!
「えっと、タ」
「タルヤ様、この問題はこうやって解くんですよ」
レーナちゃんの気の利くアドバイス、流石ナイス・ファインプレイヤー。
やっぱり、レーナちゃん気が利くね!!良い子だよ!!!!
「...うーん?分からないな...。サトミ、これどうやって...?」
なーんでまた私に振ってくんの!?!?
あと止めてその仔犬フェイス!可愛いじゃん!?可愛いイケメンじゃん!?!?
免疫力低下するじゃん!?
「これはですね...例えばですけど」
そう言って、何か例題になりそうなものを探す。あっ、あれとか良さそうだ。
「此処に、机がありますよね?」
「あ、ああ、広場に集まった時に、お菓子とか置いたりする机だよな」
あっ、そんな用途があるの?
ま、まあそんなことよりも。
「例えば、この机が横...90cmに、縦50cm、厚さが5cmとしましょう、そしたら、この全体の重さは、横x縦x厚さで求められます」
「...何故?」
ぎ、ぎくっ。
わ、分かんないよ、そ、そんなの...。
だって、学校でも習ったことないよ、ただ「これが公式です」って言われて、当たり前のように、何の疑問を持たずに解いただけだもん...。
「えっとですね、これが公式だからです」
「...成程...??」
うーん、伝わってないよね、そりゃあそうだよ。
でも、理由なんて分かんないんだもん...ごめんね、タルヤ。
「で、数を当てはめてみて下さい。そしたら、解けますよ」
真剣な表情で、ガリガリと地面に枝で書き始めるタルヤ。な、なんか面白いんだけど。
大の大人が、子供に混じって、枝で真剣に何かを書いている横顔は、ちょっぴり笑ってしまう。
「...22500?」
「正解です!!!」
ぱぁぁぁっ、と晴れやかになる彼のお顔。天使かな?
枝をぶんぶん振り回すと、「俺にも解けたぞ!」と子供達に言った。子供達が、微笑んだり笑ったりして「良かったねぇ」と叫んでいる。
と、その時にポツリ、と手に雫が一滴。
空を見ると、瞬く間に雲が渦を作って、どす黒い雲が出来た。間から、雨が少しずつ、段々大きく降っていく。
「建物っ、建物の中にー!!...タルヤ?」
あ、あれ?
タルヤ、そこに立って何してるの?
「...俺が解いた、体積の問題が...」
あっ...。
雨でぐしゃぐしゃになっちゃっている。
元々地面に書いたものだから、雨ですぐに消えちゃうんだ...。でも、タルヤ、逃げないと濡れちゃうでしょ。
「タルヤ、また何時か問題は出来るでしょ!」
そう叫んで、めそめそ泣いているタルヤを、引っ張って建物の中へと連れて行った。タルヤときたら、雨にも負けないぐらい涙を流し続けている。
こ、これぞ雨ニモ負ケズ...?
「...サトミ」
あっ、タルヤもしかして怒ってる...?
「このイェゴ村に、勉強をする小屋を建てるぞ!!!」
「...へ?」
タルヤさんは、意外と喜怒哀楽が激しいタイプです。
しかも、それがすぐ顔に出ます。表情に出ます。分かりやすいです。
ちなみに、『勉強する小屋』と言っているのは、タルヤが『学校』と言う単語を知らないからですね。この世界にその言葉があって、幾らタルヤ様さんが優秀でも、やっぱり知らない単語もあるようです。
そろそろ閑話を挟ませたい自分に活を入れて、本編頑張ります。




