No.9 帰還
『算数』を子供達に教え始めてから、早4日...。
「サトミ、この丸付けしてよ!」
「俺も、此処終わったから丸付けしてくれ!」
...子供達の成長って、恐ろしい程だよ、本当に。
あれから、子供達に『算数』を教えろとせがまれ、簡単な『筆算』から始まった彼等の『算数』は、いつの間にか『掛け算』『割り算』『面積』等までに発展していた。
これが、異世界の利点ってやつ?凄くない?
いや、でも皆すごく努力しているんだよね...沢山練習問題解いていたし。
異世界の子供達様様である。
そして、様様と言えばもう一つ...。
「おい、『二次関数』だっけ?終わったぞ、次の教えろ」
4日で、小学校一年生レベルから、中学校二、三年生レベルまで駆け上がった、このナウット君である。
お、おかしくない???
私なんて、この『二次関数』とか『因数分解』『展開』を出来るようになるまでに、塾に行ったりとか2時間も問題と相手したりとか、すごく頑張っていたのに、10歳の子供がこんなにサラリ、と解いちゃうの?
良い意味で頭大丈夫なの!?!?
「えっとねぇー、次はじゃあ...この問題解いてみて」
冷や汗をかきながら、次の問題を書いてみる。た、多分5分後位には「終わったから次の教えろ」とか言ってくるんだろう...けど。
「...おい、サトミ」
「へッ?」
野太い声が聞こえ、後ろを振り向くと、其処には怖いお顔をしたタルヤが、仁王立ちで立っていた。
***
「ほんっとうに、ごめんなさい」
眼の前に見えるは茶色、土。安定の茶色である。
それもそのはず、聡美は今渾身の土下座をしているからである。土下座をしているのに、土が見えぬなど、どんな土下座だろうか。生温い土下座か。
「あれ程、出来るだけ静かにしていろ、と言ったのに...!」
「いや本当に、マジでごめんなさい」
でも、不可抗力だよぉ...。
じっとしていろなんて、私の探検心を抑えられないんだもん...。
「ねぇサトミ、次はこれ...あっ」
「「「「「「タルヤ様!?」」」」」」
レーナちゃんの声に、皆の声。
そ、そうだよね、皆其処にいるよね、勉強してたんだもん。
...一つ、問題と言えば。
「サトミ、お前何してんだ?」
子供達に土下座を見られた...ことである。
屈辱とまでは行かなくても、多少のプライドが削られるような何かが、其処にはあった。ああっ、私のプライド...。
「それよりも、これ出来たぞ。次の問題は何だ?」
「...キッシュ、それは一体何だ?」
タルヤが、キッシュ君の持っている枝と、地面に書かれている数字を交互に見て、そう呟く。段々と複雑になってくる彼の顔。
「...おい、事情を説明しろ」
ひっ、ひぇっ......。
ほ、ほんっとうに、ごめんなさいって!!!
***
「...ほう、これ、サトミが全部教えたのか?」
「は、はい、そうです...」
うーん、駄目だったか...。
やっぱり、彼等に関わるな、とかそういうことだろうか。
沈黙の中、タルヤは地面に書かれた文字をじっと見続ける。あの、何か言ってください。気まずいんで。
「...これは、何なんだ?」
そう言って彼が指を指したのは、先程ナウット君に解かせた『二次関数』と『一次関数』の二つが組み合わさった問題である。放物線、別名パラボラと言う、ぐにゃんと曲がった線と、直線がある。
意外と組み合わせ次第によって、難しくなったりもする問題だ。
「あっ、タルヤ様。それは、『二次関数』です」
「『二次関数』?」
ナウット君、ナイス・助け舟!
スポーツで言うところのファインプレーだよ!!!!!!
「サトミ、『二次関数』とは一体何なんだ?」
「えっ、私ですか...?」
また此方に話を戻してきて、気を使ってんのか分かんないけど、話振るの止めよ!?
「えっとですね、『二次関数』というのは、累乗された計算式をグラフで表すものです。『y=ax²』です」
「わい?えっくす?いこーる?どういう意味だね?」
「えっと、分からない数を、yとかxとかで代用して答えるんです。イコールは、まぁ...答えはこうなるよ、みたいな...」
いきなり無言になったタルヤを、見つめるレーナちゃん、ナウット君、キッシュ君、それから他の子供達。ねぇ、お願い誰か反応して!!どうやって話繋げればいいのぉ!?
「...お前、王都に行った訳でもないんだよな?」
「へ?お、おうとォ?無いですけど...」
「...そうか」
な、何でしょうか。
おうとってそもそも何処?欧都?黄桃?...まさか嘔吐?
「その、『二次関数』とか言うやつだが...」
教えちゃ駄目、ってことか!?余計なことはするな、みたいな...。
やっぱり、駄目だったのかぁ...。
「お...俺も、教わることは可能か?」
「はぇ?」
え、お、教わる?タルヤが?何で?
というか、皆に教えてもいいの、私?
「これ、王都の偉い貴族でも教わらないような問題だよ。凄く複雑な問題だ、俺も教わってみたい」
「わ、私、教えても良いんですか?」
「教えるのは嫌か?」
いや、嫌じゃないです!!
って言うか、そんな所で無駄なイケメンフェイス止めて!?眼福至福だけどさ、免疫力が弱くなっちゃうから!
「嫌、じゃないです!精一杯教えます!!」
大きな声で叫ぶと、わぁ、と叫ぶ子供達。嬉しそうに眼を細めていたレーナちゃんは、タルヤの所に寄ると、笑顔でこう言った。
「サトミはスパルタだから、勉強付いて行けれたらいいね!」
タルヤの横顔が、一瞬雷が落ちたように厳しくなった気がした。
レーナちゃんは、コツコツ勉強を熟すタイプです。
夏休みの宿題を、最終日にたまらないように、最初の1、2週間で終わらせるようなタイプ。
予想していた人もいるかもしれないけれど、今回はタルヤの帰還パートです。
タルヤさん、聡美のスパルタ教育に付いていけるのか、ハラハラですね。




